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世界がコロナ禍に見舞われ人が触れ合う機会が激減し、コロナ2年目となる2021年の婚姻数が51万4,242組となったことが厚生労働省の人口動態統計速報で判明しました。前年比マイナス12.7%と非常に衝撃的だった2020年の婚姻数を更に下回り、2年連続で過去最低を記録しました。
【参照記事】
新型コロナ禍で2020年の婚姻件数は激減 出会いの機会も減り独身者は焦るばかり?
https://blogos.com/article/524948/
一方、私が経営する「よすが結婚相談所」では、コロナ前に多くいた「いい人がいたら結婚したいけど、別に焦ってはいない」という方が減り、逆に「コロナで寂しさを感じることが増えた。早く結婚したい」という方が明らかに増えました。実際に結婚相談所への登録者数も増えており、婚姻数の減少に対して結婚したい気持ちが強い人が増えている印象です。
今後、減少傾向にストップはかかるのでしょうか?考えていきたいと思います。
コロナ禍で結婚相談所の成婚率が4割→7割超に増加
写真AC
まず、私が担当している会員様の事例を紹介します。
辻本さん(仮名 35歳 男性)は飲食店のオーナー経営者で、コロナ禍になってから弊社で婚活を始めました。これまではお店の売上拡大に向けて頑張ってこられましたが、今はお店を営業しようにもできなくなっているそうです。本人いわく「今まで一生懸命働いていた夜の時間がぽっかり空いてしまい寂しい。誰かと暮らしたいと強く思うようになり、活動しようと思った」とのこと。
彼には30代中盤男性にありがちな「俺はまだまだ結婚を焦らなくていい年齢だ」という態度が全く無く、まだ成果には至っていませんが精力的な活動を続けています。辻本さんに限らず、コロナ禍で人との接触が制限される中で「誰かと一緒に暮らしたい」という理由で結婚を希望し私に相談に来られる方はとても増えました。
弊社も加盟している「日本結婚相談所連盟(IBJ)」の公開データによれば、2020、21年と登録会員数は順調に増加しており、結婚相談所を使ってでも結婚したいと考える人の数は増えているといえそうです。
また成婚率(結婚相談所で活動を始めた方のうち、お相手を見つけて結婚した人の割合)についても弊社の場合はコロナ禍になってから大幅に上昇しており、2019年までは大体4割前後で推移していたところ、2020年は88%、2021年は73%を記録しています。
なぜこのような変化が起きたかというと、それはシンプルに出会いの機会が減ったからです。
弊社では活動を経て退会した会員様を下記3つに分類しています。
1. 成婚退会(お見合いでお相手が見つかったため退会)
2. 退会
3. 交際退会(お見合い以外の機会でお相手が見つかったため退会)
2019年までは3に分類される会員様がかなりの割合でいらっしゃったのですが、コロナ禍に見舞われた2020年以降その割合が激減しており、これはまさに「出会いの機会が減った」ことに他ならないと考えています。
そのような状況の中で会員様の気持ちにも大きな変化があったようです。これまで一定割合でいた「普段の生活の中でもそれなりに出会いはあるので、結婚相談所への入会は保険のようなもの」というスタンスで活動する会員様がいなくなり、辻本さんのように「普段の生活で出会いが無いので、真剣度が高い結婚相談所の活動に力を入れる」と、婚活に正面から向き合う方が増えたのです。その傾向は特に30歳前後の方で顕著だと感じます。
コロナが落ち着いた後、婚姻数は増えるのか?
婚活の現場にいるとこのように前向きな声を聞く機会が増えましたが、冒頭でお伝えした通り国内全体での婚姻数は昨年、過去最低を更新しました。大きな要因として新型コロナウイルスの感染拡大は間違いなくあるでしょう。この文章を書いている3月7日現在もオミクロン株の猛威は依然衰えることなく、本日解除されるはずだった東京都のまん延防止等重点措置は、3月21日までの延長となっています。
外出および会食の回数はコロナ前とは比較にならないほど減り、それが男女の出会いの機会減少ひいては婚姻数の減少につながっていることは間違い無いでしょう。
結婚相手との出会いとして大きな割合を占めている職場やサークルなども、前者はテレワーク化、後者は活動そのものの自粛などで出会いの場としての機能は大幅に低下している模様です。特に大学生において出会いの機会となってきた大学サークルについては丸2年のコロナ禍によって、消滅の危機に瀕しているところもあると聞きます。
しかし2020年、21年の婚姻数減少は本当にコロナだけが理由なのでしょうか?
こちらは2012年〜2021年までの婚姻数の推移をまとめたグラフです。
図1. 過去10年の婚姻数の年次推移(厚生労働省 人口動態統計速報より筆者作成)
2019年を除き長期減少トレンドとなっています。(なお2019年だけ突如増加に転じている理由は、令和へ改元するタイミングで入籍するカップルが多かったためです。その証拠に2019年5月(令和になったのは5月1日から)は月次婚姻数が突出して多くなっています) このグラフを眺めていると、2020年や2021年の減少は長期トレンドの延長線上にある気がしてきませんか?そこでもう少し詳しい数字を見ていきます。
年 | 婚姻数 | 対前年減少数 | 対前年比 |
12 | 668,869 | ||
13 | 660,613 | 8,256 | 98.8% |
14 | 643,749 | 16,864 | 97.4% |
15 | 635,156 | 8,593 | 98.7% |
16 | 620,531 | 14,625 | 97.7% |
17 | 606,866 | 13,665 | 97.8% |
18 | 586,481 | 20,385 | 96.6% |
19 | 615,652 | – 29,171 | 105.0% |
20 | 537,583 | 78,069 | 87.3% |
21 | 514,242 | 23,341 | 95.7% |
表1. 2012年〜2021年の婚姻数、対前年減少数、対前年比(厚生労働省 人口動態統計速報より筆者作成)
2012〜18年までの婚姻数は概ね対前年比97〜98%程度で推移していることがお分かりいただけるかと思います。ここからはifの話ですがもし2019年の令和婚による増加が無く、2019年以降も対前年比96%で婚姻数が推移したと仮定すると、2020年は54万0,501組(実際の婚姻数53万7,583組)、2021年は51万8,881組(実際の婚姻数51万4,242組)と、実際の数字にかなり近い値になります。
2018年が対前年比96.6%だったことを考慮すれば、96%という設定はそれなりに現実的な仮定です。
もちろん婚姻数が減っている事実に変わりは無いのですが、そもそも日本全体で婚姻年齢の方の数が減っています。2022年時点で20〜40歳の方々が生まれた1981〜1995年の出生数の前年比は相乗平均98.1%で推移しています。それだけ継続的に出生数が減っていることを鑑みれば、2012〜2018年の婚姻数の対前年比が97〜98%だったのは、むしろその期間の婚姻数は持ち堪えていたという見方すらできるかもしれません。
あくまで私個人の見解ですが、2020〜21年の婚姻数減少は長期トレンドによる既定路線であり、コロナが理由になるものは一部ではないかと考えています。2019年の令和婚による増加が大きかったため、続く2020年の大幅減少がコロナだけのせいに見えてしまったのだと思います。またこれがコロナのせいだけではない長期トレンドである以上、この減少傾向は仮に2022年に世界がコロナから完全復活したとしても、変わらずに続くことになるでしょう。コロナが落ち着いたからといって、コロナ以前の婚姻数に戻ることはありません。