「 クリエイター との接点は、まだそれほどでもない 」:エンスージアスト・ゲーミングのスコッティ・タイドウェル氏

DIGIDAY

1月26日、カナダの有力eスポーツ企業エンスージアスト・ゲーミング(Enthusiast Gaming)がタレント部門SVPにスコッティ・タイドウェル氏を迎えたと発表した。タイドウェル氏は人気エナジードリンク企業Gフュエル(G FUEL)の元チーフコミュニティオフィサーであり、実に10年以上、eゲーミングブランド勢によるエンゲージメントを創出してきた実績を持つ。

タイドウェル氏がGフュエルに入社したのは、2018年12月。以来、氏の在職期間中にGフュエルは、ピューディパイことフェリックス・シェルベリ氏やニックマークスことニコラス・コルケフ氏といったコミュニティを牽引する人物らとの衆目を集めるパートナーシップを通じ、ゲーミング業界で知らぬ者はいない存在にまで成長を遂げた。同社はさらに、業界の才能を積極的に雇用し、彼らに自社コンテンツおよびソーシャルメディアの運営を一任する姿勢を打ち出すことでも、コミュニティとの絆を強化した(筆者もそのひとりで、2019年から2020年にかけて、フリーランスとしてGフュエルに記事を寄せた)。

Gフュエルブランドを冠するコンテンツへのエンゲージメント数は、eスポーツとゲーミングのコンサルティング会社であり、データプラットフォームでもあるジーアイキュー(GEEIQ)によれば、この半年間だけで計1200万回を越えている(タイドウェル氏はその成功をチームの努力の賜物と謙遜する)。米DIGIDAYはこのたびタイドウェル氏に取材し、エンスージアスト・ゲーミングブランドに注目を集めるために、そのスキルと経験をどう活かそうと考えているのか、話をうかがった。

なお、読みやすさを考慮し、発言には多少編集を加えてある。

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――Gフュエルのチーフコミュニティオフィサーとして担っていた責任とは?

私のフォーカス(主眼)は常に、Gフュエルで一緒に仕事をする、すべての素晴らしいコンテンツクリエイターだった――いかにしたら、より強固な、より緊密なコミュニティを築けるのか? ただの仕事上の関係で終わらせないようにするには、どうしたらいいのか? 多くの場合、製品ブランドに、あるいはインフルエンサーマーケティング/コミュニティビルディングプログラムに取り組んでいると、彼らとの関係はあくまで仕事上のそれでしかないように思えてくるものだが、私は極力そうならないように尽力した。一緒に仕事をするクリエイターたちとの(私個人との、個人のソーシャルアカウントとの繋がりも含めて)深い繋がりを求めた。つまり、「拝啓コンテンツクリエイター様、このプロモーションに手をお貸しいただけませんか?」といった、表面的なやり取りだけで終わらせないようにしたんだ。

クリエイターそれぞれの個性を知り、どうしたら彼らを支援できるのか、それを理解するまでには、かなりの時間と努力を要した。もちろん、いわゆるブランドディールはしたい。けれど、ただの仕事相手としてではなく、個々のクリエイターに心から賛同する者として信用してもらうには、どうしたらいいのか? それこそが10年以上にわたり、私が手がけたすべてのインフルエンサープログラムやコミュニティプログラムを含め、この業界で実現しようと努めてきたことだ[Gフュエル以前、タイドウェル氏はコントローラーメーカーのスカフ・ゲーミング(Scuf Gaming)のグローバルeスポーツ/ソーシャルメディア部門ディレクターだった]。

――Gフュエルが自身のパートナーおよび彼らのコミュニティによる深いエンゲージメントを創出できた理由は?

Gフュエルのインフルエンサープログラムはおそらく、ゲーミング業界で屈指の規模を誇る――パートナーの圧倒的な数を見れば、断然と言っていいだろう。Gフュエルの製品に関する投稿を毎日上げているクリエイターもいれば、あえて直接は触れず、日々の暮らしや活動の中にさりげなく取り入れるクリエイターもいる。Gフュエルは消費財メーカーであり、つまりはライフスタイルブランドだ。毎日目が覚めて、まずコーヒーを飲む人もいれば、エナジードリンクを、あるいはG FUELを手に取る人もいる。何と言っても、適切な人材を見つけるのが第一であり、もっとも重要だと私は考えている。その製品/サービスを心から楽しめないクリエイターと仕事をしたいとは、絶対に思わない。

それと、私はクリエイターにこうも言っていた、「Gフュエルには50ものフレーバーがある、だから10やそこらは最悪だと言ってもらっても構わない」と。実際、私もよくお気に入りのフレーバーを訊かれるが、そのたびにレモネード味だと明言している。パイナップル味はどうかと訊かれたら、大嫌いだときっぱり答えることにしている。それこそが、クリエイターと仕事をする際に私が基本としている姿勢だ。つまり、まずは彼らの好きなものと嫌いなものを理解しよう、という考え方だよ。

――エンスージアスト・ゲーミングはさまざまに事業展開しているが、Gフュエルのようなライフスタイルブランドではない。インフルエンサーがエンスージアスト・ゲーミングブランドを個々のアイデンティティのなかに有機的に取り込むために、どのように手を貸していく?

エンスージアスト・ゲーミングについて私が何よりもワクワクしていることのひとつは、この会社がどれほど大きいのか、そして私たちがどんなことに関わっているのか、ゲーム界の大半の人はさほど理解していない、という事実だ。Gフュエルには業界最大のクリエイタープログラムがある。一方、エンスージアスト・ゲーミングはどうだ? クリエイターとの接点は、まだそれほどでもない。我々には子会社ルミナスティ・ゲーミング(Luminosity Gaming)があり、彼らは素晴らしい仕事をしているし、コンテンツクリエイターもいれば、さまざまなeスポーツフランチャイズも持っている。さらに、エンスージアスト・ゲーミングが所有するマルチチャネルネットワークも使える。

だからこそ、私の手元にはいま、自分の自由にできることが、さまざまなクリエイターと仕事をする機会が山ほどある、という気がしてならない。アディクティング・ゲームズ(Addicting Games)を最近買収したことにも、ワクワクせずにはいられない。たとえば、最近ツイッチ(Twitch)でモバイルゲーム「リトルビッグスネーク(Little Big Snake)」をストリーミングしていたクリエイターたちの存在もそうだ――あれもアディクティング・ゲームズの製品だ。ワンハンドレッドシーヴス(100 Thieves)がペリフェラル(周辺機器)メーカーのハイグラウンド(Higround)を買収した際、彼らがしたことは、我々のゲームのひとつ、「タイプレーサー(TypeRacer)」の利用だった――彼らはアディクティング・ゲームズとキーボード上で競っていたわけだ。それら諸々を考えるだけで、私の胸は大いに高鳴る。というのもこれは、ルミナスティ・ゲーミングの才能やエンスージアスト・ゲーミングの才能にとっての機会というだけじゃない、私が企業の枠を越え、ありとあらゆる類の才能と仕事をできる機会でもあるからだ。つまり、エンスージアスト・ゲーミングにはそれくらいできることが大いにある、ということだ。

――エンスージアスト・ゲーミングにはジャーナリスティックな側面もあります。アップカマー(Upcomer)かジ・エスケーピスト(The Escapist)と仕事をするつもりは?

はっきり言って、私はジャーナリストとしてはかなり出来が悪いし、だからそういうブランドと個人的に何かをするとは思えない。ただ、彼らが書いてみたいと、取材したいと、その類のことをしたいと思うコンテンツがあるなら、それに精通した才能にアクセスさせる手伝いはできるし、出版全般に関して手を貸すこともできる。要望があれば、手助けはできるかもしれない。

[原文:‘Nobody has more touch points for creators’: A Q&A with Scotty Tidwell, Enthusiast Gaming’s new svp of talent

ALEXANDER LEE(翻訳:SI Japan、編集:猿渡さとみ)

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