指名検索数 約2倍増を達成した、バイトルの動画広告戦略:成功の鍵はブランド認知からベネフィット訴求への転換

DIGIDAY

インターネット上における指名検索のボリュームは、ブランド認知度やサービスのパフォーマンスを測る指標のひとつといえるだろう。

指名検索を増やすための施策はさまざまだが、ユーザーベネフィットを強く訴求した動画広告で急激にその数を増やしたのが、ディップ株式会社の運営する求人情報サービス「バイトル」だ。

ディップ株式会社のマーケティング統括部で統括部長を務める堀一臣氏は、「動画コンテンツによるユーザーベネフィット訴求が、ターゲットである求職者層にうまく届いた」としつつ、「TVCMとSNSの使い分けが功を奏した」とも語る。事実、動画の配信が開始された2023年1月から指名検索数は従来の2.2倍に増加。それにより、2月の売上は18%増(前年比)、応募集客数は22%増(前年比)を記録したという。

広告では伝えづらいようにも思える「サービスのベネフィット」を、バイトルはどのように届けたのか。そのコミュニケーション設計のあり方を堀氏に聞いた。

認知の先にある価値を伝える

全国求人情報協会が2023年1月25日に発表した「求人情報提供サービス市場規模調査結果」によると、2022年の求人広告数はコロナ禍での低迷から回復を見せ、対前年比39.1%の増加を見せている。求人情報提供サービスを手掛ける各社にとっても、成長と回復の波に乗るタイミングであり、プロモーションやコミュニケーション施策が活発になっている。

そうしたなか、「ブランド名のみをアピールするような、認知をとるためだけのプロモーションでは効率が悪い」と、堀氏は指摘する。「認知や純粋想起も大事だが、その先にある価値を伝えることが最も重要だ。単純に『バイトするならバイトル』と訴求していた時期と比べて、現在は『なぜバイトするならバイトルがよいのか?』というポイントに重きを置いている」。

認知の先にある価値、つまりバイトルが求職者に提供するベネフィットが、取り扱う求人情報の時給の高さだ。ディップ株式会社は2021年より「ディップ・インセンティブ・プロジェクト」を開始し、取り扱う求人の時給・待遇向上に取り組んできた。「第3者機関によって他社媒体よりも高時給帯の求人が増加していることを裏付けるデータも得ており、バイトルとしての強力なベネフィットとして伝えていこうと考えた」と堀氏も胸を張る。

TVCMは認知の拡大、SNSは共感と信頼の獲得

そのために活用したのが動画広告だ。イメージキャラクターの乃木坂46のメンバーが、メロディに合わせて「時給を上げるならバイトル」と歌って踊るもので、バイトルには高時給のバイトや、直近1年のあいだに賃金アップした求人が多いということをストレートにアピールした。2022年12月末より配信された広告は、はないちもんめのメロディに合わせて、同様のベネフィットを伝えたもので、TVCMとSNSの2本柱で展開。この、TVCMとSNSの組み合わせこそが、指名検索を急激に増やした今回のキャンペーンの成功ポイントだという。

まず、TVCMは認知の拡大を主目的としている。バイトルのターゲット層は有期雇用者全般と広いため、TVCMを使ったブロードリーチが効果的だ。また、ユーザーである有機雇用者だけではなく、掲載企業へのアピールも兼ねており、「バイトルに出すと応募が集まりそうだ」と思ってもらうことも重要だという。

一方でSNSでは、主に若年層に向けてYouTubeとTikTokを活用し、共感や信頼の獲得を図っている。TVCMの15秒だけでは高時給の求人情報があることは伝えられるものの、裏付けとなるデータなどは提示できない。CMを目にしたとしても「本当に時給が上がるのか?」と思われる可能性もある。

そこで、SNSに投下する一部の動画は、「時給アップ求人が20万件以上ある」ということを動画中央にはっきりと提示。また、販売業や物流業、製造業などの職種のコスチュームを乃木坂46のメンバーが着て、「この職種でも時給が上がった求人がある」と共感を呼ぶような動画も制作した。

またメディアごとの特性も考慮し、YouTubeは動画視聴直後の検索を促すことも目的に設定。検索ボリュームの多い「短期バイト」や「在宅勤務」などのワードを折り込みながら制作した。一方でTikTokは、CM素材である横向きの動画をそのまま使うのではなく、CM撮影時に縦型動画も一緒に撮影し、TikTokを見るうえで最適な動画の型に当てはめている。

関心の高いワードや、掲載している職種そのものについて触れることで、「バイトルの求人を選べば、時給を上げられるというベネフィットの自分ごと化をめざした」と堀氏は語る。

多様なタッチポイントでブランドロイヤルティを高める

さらに、ユーザーとのエンゲージメントを高める施策として「バイトル学園祭」というオフライン・オンラインのハイブリッド型イベントでも開催している。「オフラインのコンテンツは熱量が高く、とても拡散しやすい。質の高いオフラインコンテンツの感想は常に熱量を帯びている」と堀氏はイベントの価値を評価する。「オフラインのコンテンツを、デジタル活用によってレバレッジをかけ、リーチ獲得へとつなげる。リアルとデジタルの相乗効果が期待できる施策には今後も積極的に取り組みたい」。

TVCM、SNS、イベントなど、多様な取り組みをおこなうバイトル。今春からはTwitterを活用した新たな施策を始動している。初めてバイトをする人たちの不安を解消し、安心してバイトを始められるようにするための施策だといい、具体的には、Twitter上で「新生活でやりたいこと」を募集し、その声を元にボカロプロデューサーが曲を作成するというものだ。未完成なところからユーザーを巻き込むことがポイントとしており、作成したコンテンツは各SNSで展開し、「歌ってみた」や「踊ってみた」などのコンテンツも配信する予定だという。

ベネフィット訴求を中心に、多様なタッチポイントを活用して認知拡大を図りつつ、共感や信頼を集めることでブランドロイヤルティを高めているバイトル。堀氏は、「ユーザーファーストという当社のフィロソフィーを、マーケティングにも乗せている」とし、こう続ける。「課題を解決できるような価値を提示して、はじめて人の気持ちや行動を変えられる。これからも価値を伝えるコミュニケーションに取り組んでいきたい」。

Written by 島田涼平

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