こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
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ヒムズ&ハーズ(Hims & Hers)は実店舗での販売に賭けている。
同社は2017年に、D2Cのテレヘルス企業として設立され、肌、毛髪、メンタルヘルスなどの処方箋不要のOTC(over-the-counter:店頭)医薬品を販売してきた。しかし、2021年前半に特別買収目的会社(SPAC)との取引により株式を公開してからは、ウォルグリーン(Walgreens)や、アーバンアウトフィッターズ(Urban Outfitters)、ビタミンショップ(Vitamin Shoppe)など実店舗を持つ小売業者との提携を増やしている。
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それでも依然として、ヒムズ&ハーズの販売のほとんどはD2Cビジネスによるものだ。最新の決算報告において同社の卸売による収益は210万ドル(約2億4200万円)で、これは同社の総売上のわずか3%にすぎない。これに対してオンラインでの売上は7200万ドル(約82億8000万円)に達している。しかし、同社が提携を進める小売店との提携の数を考えれば、この状況はまもなく変化するかもしれない。
同社は1月20日、さらに別の小売業者とのパートナーシップを結んだ。今回の相手は小売業界の巨大企業ウォルマート(Walmart)だ。このパートナーシップにより、ヒムズ&ハーズのヘアケア商品は、ウォルマートの1400を超える店舗と、Walmart.comで販売されるようになる。
ヒムズ&ハーズは「既存のパートナーとの関係における成長、つまり、ターゲット(Target)やウォルグリーン、ウォルマートの各社と、当社のポートフォリオ全体にわたって関係を深めていく」と、同社の最高運営責任者を務めるメリッサ・ベアード氏は、米モダンリテールとのインタビューで述べた。「当社は依然として、ほかの小売業者にも展開していく野望を持っている。このため私は、この成長を継続し、人々がどこでも我々の商品を見つけられるようになることをめざしていく」。
米モダンリテールは、同社が実店舗でのプレゼンスを拡大していく計画と、同社が小売のパートナーシップに何を求めているかについて、ベアード氏を取材。以下の内容は簡素さと明瞭さを考慮し、編集を加えたものである。
◆ ◆ ◆
――ヒムズ&ハーズが実店舗展開するようになったきっかけは何か?
我々は創業以来ずっと、入手しやすく、どこにでもあり、便利な存在として、真に高品質なソリューションを提供することを試みてきた。したがって、実店舗の拡大はD2Cビジネスの延長線上にある。
我々がD2Cビジネスをはじめたのは、D2Cビジネスから学べることがたくさんあり、我々が顧客とする人々の共感を呼ぶのはどのようなものかをテストして見つけ出すことができるからだ。そして、実店舗で販売するようになれば、その人たちの目に触れるようにすることで飛躍的に拡大することができる。
――小売パートナーに何を求めているか?
我々は、パートナーの顧客層に注目している。また、革新的でパーソナライズされたヘルスケアを提供することに対する、熱意も注視している。
そして、リーチにも注目している。たとえばターゲットのリーチはウォルマートとは大きく異なる。これは、両社のビジネスにおける地理的な戦略が異なっているためだ。これらの要素を総合的に判断し、そのうえで、次に選ぶ企業を決めている。
――御社が最近パートナーシップを結んだ相手のひとつはウォルマートだ。同社との提携を望んだ理由は?
ウォルマートには、地理的な展開について非常に興味深い戦略がある。
同社はまず郊外の地域からスタートし、規模が拡大するにつれてより都市部に移行する傾向がある。これに対して、ほかの小売業者の多くはまったく逆の方向性で展開を行う。ウォルマートは、アクセスがやや困難な郊外地域にリーチを広げることができると考えているのだ。
小売業者によって売れる商品が異なるので、その点にも興味を抱いている。当社は、時間をかけてウォルマートの商品ポートフォリオを拡大し、パートナーシップを深めていくなかで、当社がこの分野にどこまで浸透できるのか、注目している。
健康・ウェルネス分野については、小売の薬局には闇の部分が多くあり、当社はそのような部分を活気づけ、汚名を返上し、人々にとって多少なりとも興味深いものにできると考えている。
――多くのブランドが、自社の実店舗よりもD2Cビジネスを強化してきた。ヒムズ&ハーズはなぜ逆の方向性を選んだのか?
もうひとつのチャンスだと捉えている。我々はD2Cビジネスを得意としているし、パンデミックの最中に小売戦略を多少変更したが、実店舗での小売がなくなるわけではないと考えているからだ。
食料品や日用品などを買いながら、何かをカートに放り込める便利さを望んでいる消費者もいると思う。それが、我々のビジネスにとって、実店舗が非常に価値のある要素であると感じている理由だ。
Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Hims & Hers