気が滅入った2021年の悪くない点 – 宇佐美典也

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元経産省官僚の宇佐美典也さんに「私が○○を××な理由」を、参考になる書籍を紹介しながら綴ってもらう連載。第22回のテーマは、コロナ禍の影響が続く2021年の振り返り。フラストレーションの高まることが多かった一方で、「悪くない」と思える面もあったと宇佐美さんは指摘します。

私が2021年は割と良い1年だったと思う理由

AP

年の瀬ということで、区切りとして1年を振り返ろうと思う。

こういうとき記憶だけに頼ると限界があるので、元ネタというものがどうしても欲しくなる。そんなわけで、最近やや不評も耳にする「ユーキャン 新語・流行語大賞」の元ネタ書に当たる「現代用語の基礎知識2022」などを眺めながら、1年を振り返り始めた。この本は主にリベラル界隈の世相の認識というものがわかり、個別用語のまとめ記事も(妙に批判めいていてねちっこいものの)レベルは高く、便利でおすすめである。

眺めていると
・DHC吉田嘉明会長の「日本の中枢を担っている人たちの大半が今やコリアン系で占められている」、
・菅義偉首相(当時)のニコニコ生放送での「こんにちは。ガースーです」、
・平井卓也デジタル担当大臣の「象徴的に干すところを作らないと、なめられちゃうからね」、
・安倍晋三元首相の「反日的な人が五輪に反対している」、
・メンタリストDaiGoさんの「生活保護の人が生きていても、僕は別に得しないけど、猫が生きてれば僕は得なんで」、
・森喜朗オリンピック委員会会長(当時)の「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」
・河村たかし名古屋市長の「メダルかじり」
・小泉進次郎環境大臣(当時)の「おぼろげながら46%」
など数々の炎上発言が思い出されて、大変興味深い。

コロナ禍のフラストレーションと40代で迎えた曲がり角

写真AC

こうして今年の話題を振り返ると、私自身が1年間続けてきた記事を見直すことでも十分な総括ができそうなことに気づく。連載というのは何かと便利である。

ということでこの1年の間に自分が書いてきたテーマと取り上げた本を振り返る。ラインナップは以下の通りだった。

1月、SDGsという言葉が化石燃料を利用する産業に対してレッテルばりの印象操作のように使われだしたのが気にくわなくなり、
SDGs 〜「お笑い芸人と学ぶ13歳からのSDGs」(たかまつなな著)

2月、withコロナ下の飲食店の経営の厳しさを目のあたりにして考えこみ、
withコロナでの飲食店経営 〜「全店舗閉店して会社を清算することにしました」(福井寿和著)

3月前半、ひろゆきさんのツイートをきっかけに古文・漢文を題材に学問と実用性の関係について考察し、
古文漢文は必修に必要か? 〜「世界史を変えた数学」(ロバート・スネデン著)

3月後半、同性婚や夫婦別姓の議論が盛り上がっているのでこれを機に日本の戸籍制度の歴史を調べ、
戸籍制度と同性婚、夫婦別姓 〜「日本の家族と戸籍」(下夷美幸著)

4月前半、菅政権のビジョンと説明の不在という観点から政権運営に対する批判めいた本を出し(学術会議問題なんてのもありましたね)、
菅政権の政治手法 〜「菅政権 東大話法とやってる感政治」(拙著)

4月後半、二階幹事長と公明党の時宜を得ないGoTo政策推進に不満を垂れ、
コロナ対策のあり方 〜「公明党 その真価を問う」(山口那津男、佐藤優著)

5月前半、オリンピック前に緊急事態宣言を解除して感染が再拡大する事態にイラつき、
オリンピックと緊急事態宣言 〜「新型コロナから見えた日本の弱点」(村中璃子著)

5月後半、DHCの吉田会長の在日コリアンに対する差別発言に老害を感じ、
DHC吉田会長の差別発言 〜「在日異人伝」(高月靖著)

6月前半、ポストアベノミクスの経済財政政策のあり方のヒントを過去に求め、
日本の財政再建 〜「ルワンダ中央銀行総裁日記」(服部正也著)

6月後半、小泉進次郎環境相の無責任かつ到底実現不可能な温室効果ガスの46%削減目標設定に激怒し、
温室効果ガス46%減目標 〜「エネルギー・シフト」(橘川武郎著)

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