これは、各選挙区の実情に通じている人にしか出来ない荒業で、あちらこちらから不満の声が上がることを承知で打ち出した覚悟の一手だろう。
岸田さんに火の粉が及ぶような難しいことを自分の一身で引き受けたような感じがあり、甘利さんが修羅場に強い強者だということを身をもって示したようなものだ。
岸田さんは、岸田派の会長代行の林芳正氏が山口3区の公認候補者という身分を獲得するために、これまですべてのことを譲ってきたのかしら、と思わせるような山口3区支部長選任決定である。
林芳正氏が山口3区の公認候補者に選ばれるのであれば、さすがの二階派重鎮の河村建夫氏も政界引退を表明せざるを得ない。
次の衆議院議長の声が高かった河村建夫氏としては苦渋の決断だったるが、自民党分裂選挙を回避するためには、ご自分から身を退くしか道はなかったはずである。
温和な岸田さんには難しい仕事だったが、幹事長の甘利さんがその難しい仕事を引き受けたのだろう。
勿論、甘利さんのことだから、それなりの措置を講じてはいる。
河村氏の息子さんを比例区の公認候補にするのだから、河村さんも二階派の方々も鉾を収まざるを得なくなったはずである。
群馬一区の候補者を二階派の中曽根康隆氏に選任したのもその一環かも知れないが、これはこれで自民党内に色々波紋を及ぼしそうな重要な一手である。
安倍さんが予てから確約・公言していたことを根底からひっくり返すようなものだから、神経の細い人にはなかなか出来ないような難しい決断だったはずだ。
甘利さんは、今回の公認候補者決定についての不平不満はすべて自分が引き受けるつもりに違いない。
ヒールになることを厭わない男、くらいのことは言ってもいいようだ。
甘利さんに傷がないわけではないが、今回の公認候補者決定は見事だった。
ここまで来ると、一種の芸術品である。
比例区の年齢制限なども、党内であれこれ言われないようなタイミングで、あっという間に突き破ってしまった。