コーヒーが2型糖尿病を予防するメカニズムが大規模な研究で判明

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2型糖尿病が発生する原因とコーヒーの効果に着目した新しい研究により、コーヒーが2型糖尿病のリスクを低減させるプロセスが判明しました。

C-reactive protein partially mediates the inverse association between coffee consumption and risk of type 2 diabetes: The UK Biobank and the Rotterdam study cohorts – Clinical Nutrition
https://doi.org/10.1016/j.clnu.2023.02.024


Perk Up Your Health: Uncovering Coffee’s Role in Reducing Type 2 Diabetes Risk
https://scitechdaily.com/perk-up-your-health-uncovering-coffees-role-in-reducing-type-2-diabetes-risk/


Coffee Consumption Reduces Risk of Type 2 Diabetes, New Study Suggests | Sci.News
https://www.sci.news/medicine/coffee-consumption-type-2-diabetes-risk-11774.html


How coffee helps lower type 2 diabetes risk: New clues on mechanism
https://www.medicalnewstoday.com/articles/new-research-reveals-a-potential-mechanism-for-how-coffee-may-reduce-the-risk-of-type-2-diabetes

これまでの研究により、コーヒーが2型糖尿病の予防に役立つことが示されていますが、そのメカニズムについてはよく分かっていません。そこで、オランダ・エラスムス医療センターの研究員であるCarolina Ochoa-Rosales氏らの研究チームは、コーヒーと2型糖尿病のリスク減少とのつながりに焦点を当てた研究を行いました。

研究対象となるデータは、イギリスの「UKバイオバンク」とオランダの「ロッテルダム研究」という2つの大規模研究から収集されました。「UKバイオバンク」には2006年4月~2010年12月にかけて調査に参加したイギリス人50万2536人のデータが収録されており、このうち2型糖尿病の診断情報といったデータがそろっているものを抽出したところ、14万5368人分の記録が得られました。また、ロッテルダム研究は1990年から記事作成時点でも継続されている研究で、今回の分析には合計1万4929人の参加者のうち7111人分のデータが使用されました。


研究チームが合計15万人を超える大規模なデータセットを用いて、コーヒーの消費量と糖尿病の診断情報の関係を分析した結果、コーヒーの消費量が1日1杯増えることで2型糖尿病のリスクが4~6%低下することが確かめられました。調査の参加者のコーヒー消費量は1日0~6杯とバラつきがありましたが、それまで飲んでいた量にかかわらずコーヒー1杯を追加すると有益な効果が得られるとのこと。

コーヒーの飲み方は「デカフェ(カフェインレス)コーヒー」「インスタントコーヒー」「コーヒー豆をひいて飲む方法(フィルターでのドリップとエスプレッソ)」の3種類に分類されましたが、その中では「豆をひいて飲む方法」が最も効果が強く表れました。また、タバコをやめたか吸ったことがない人も、コーヒーの有益な効果を受けやすかったという結果が出ました。

ただし、あまり飲み過ぎるとカフェインを過剰摂取してしまうおそれもあることから、研究者らは成人の1日のカフェイン摂取量は400mgまで、コーヒーにすると3~5杯が目安だとしています。また、妊娠中または授乳中の女性は、カフェイン摂取量を半分の200mgに抑える必要があるとされています。


この研究でOchoa-Rosales氏らが特に注目したのは、「炎症性バイオマーカー」です。人がケガをしたり、感染症にかかったりするとそれに対する防御反応として「急性炎症」が起きますが、肥満などによっても低レベルの炎症が体内で発生し続ける「慢性炎症」が引き起こされます。この慢性的な炎症が2型糖尿病の直接の原因となる内臓の機能不全やインスリン抵抗性を招くことから、研究者の間では「2型糖尿病は慢性的な炎症の疾患である」という見方がなされるようになりました。

研究チームによると、コーヒーを飲むと体内のC反応性タンパク質レプチンなどの「炎症性バイオマーカー」のレベルが低下していたとのこと。その一方で、「抗炎症性バイオマーカー」であるアディポネクチンインターロイキン13は増加していました。このことから、コーヒーを飲むと2型糖尿病のリスクが低下するのは、コーヒーが慢性的な炎症を抑制し、これが2型糖尿病を予防しているからではないかと、研究チームは考えています。

論文の共著者であるエラスムス医療センターのTrudy Voortman氏は「これまでの研究で、コーヒーの摂取量が多いほど2型糖尿病の発症リスクが低いという結果が得られていますが、その根本的なメカニズムは不明なままでした。それが、今回の研究によりコーヒーが体内の炎症バイオマーカーのレベルに影響することが示されました。2型糖尿病は炎症性疾患としての側面を持つことが分かっており、これがメカニズムの1つになっている可能性があります。またこれらの知見は、炎症に関連した他の慢性疾患に対するコーヒーの効果についての今後の研究の助けにもなるでしょう」と話しました。

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