カンヌライオンズは広告のすべてを祝福するフェスティバルだが、近年はメディアエージェンシーの世界が、より中心的な位置を占めている。PHDのグローバルCEOを務めるフィリッパ・ブラウン氏は、ただクライアントにサービスを提供し、クライアントのビジネスを理解するのではなく、ブランドとの対話を重視してきたという。
2019年以来初めて対面開催された今年のカンヌライオンズ。6月20日からの1週間は、疲労と活力が同居する日々になった。カンヌライオンズは広告のすべてを祝福するフェスティバルだが、近年はメディアエージェンシーの世界が、より中心的な位置を占めている。
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数年で変わりつつあるブランドと代理店の関係
15年前、オムニコム(Omnicom)の一員になったベテランで、現在はPHDのグローバルCEOを務めるフィリッパ・ブラウン氏は、「ただクライアントにサービスを提供し、クライアントのビジネスを理解するのではなく、彼らの変革の旅をどのように支援できるかについて、より多くのことを話し、行動している。そして、それこそが、数年前から言語の変遷を実感している部分だ」と話す。
ブラウン氏はクライアントからの要件変更に言及し、その話し合いを行う際は、率直かつ正直であることが必要だと述べた。「私たちには公正な報酬が必要だ(中略)現在、ますます多くのクライアントが、私たちに多くを要求していること、私たちは慈善事業ではないことに気付き始めている。私たちは従業員に公正な報酬を支払う必要がある。そして、クライアントたちが株主に利益をもたらさなければならないように、私たちも株主に利益をもたらさなければならない」
ブラウン氏はフロリアン・アダムスキー氏という新しい上司に適応しなければならなかった。アダムスキー氏は1年足らず前、ダリル・シム氏からオムニコム・メディア・グループ(Omnicom Media Group)のグローバルCEOを引き継いだ。社内で「フロー(Flo)」と呼ばれているアダムスキー氏は「細部にこだわり(中略)本気で仕事に取り組む幹部だ。私はこのような上司が好きだ」とブラウン氏は語る。「彼は驚くほど未来志向で、これも本当に重要なことだ。そして、私たちが前進するため、とても明確なビジョンを示してくれる」。
代理店はブランドを見失ってはならない
デジタル業界はパフォーマンスマーケティングを重視しており、多くの技術革新によって容易に実現されているが、ブランドの重要性を見過ごすと、危険な道を歩むことになりかねないとブラウン氏は話す。
「注意しなければならないのは、パフォーマンスマーケティングにあまりに傾倒し、ブランドとその強みを忘れてしまうことだ」とブラウン氏はいう。「そして、それがカンヌで見られることを私は期待している。ブランドはどこにも行っていない。ブランドには今も素晴らしいアイデアが必要で、消費者の想像力をかき立て、心に入り込む必要がある。私たちはここ数年、ファネル下部のパフォーマンスをあまりに追求し、ブランドを忘れてしまったのではないかと心配になることがある」。
カンヌに来ることの意味
ブラウン氏がカンヌライオンズでもっとも得たかったものは何だだったのだろうか? それは、再び人々と直接つながることだ。「私にとって一番大切なのは人に会うことだ」とブラウン氏は話す。
「パンデミック中に仕事が始まったため、画面上でしか見たことがないクライアントも参加を予定している(中略)そのため、私にとっては、それが最も楽しみなことのひとつだ」。
Michael Bürgi(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:猿渡さとみ)
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