ずいぶん前の話になるが、ホームセンターのチラシで「インターネット」という名前のママチャリが売られているのを見たことがある。
確かに当時はインターネットが注目されてきた頃。ただ、それをママチャリの名前につけるのはどうなのか。
よくよく調べてみると、かなり自由な感じでつけられているママチャリのネーミング。今でもどこかの街で、インターネットという自転車は走っているのだろうか。
デザインや性能は置いておいて、とにかく名前だけに注目してみました。
※2006年6月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
やる気があるのかないのかわかりにくい自転車たち
何物にもとらわれることのない感じで付けられがちなママチャリの名前。みなさんはご自身がお乗りの自転車の名前をちゃんと把握しているだろうか。
そんなことは気にしないで買うことも多いと思う。実は私もそうで、ある日乗っていて気がついた。
信号待ちか何かの時になんとなく見ていて、初めて知った自分の自転車の名前。「S-CAPE」とちょっとスペルをいじって書いてあるが、エスケープということなのだと思う。
辞書で調べてみたところ、出てきた訳語は「逃げる・脱出する」。かなりネガティブ。
もっといろいろな自転車を調べてみようと思った矢先、デイリーポータルZでもおなじみの宮城さんの自転車を見せていただく機会があった。
あの黒くてしょっぱいつぶつぶ、チョウザメの卵のキャビアなのだろうか。高級食材であるキャビアに憧れるのはいいが、それを自転車に名づけてしまうのはどうだろう。
少々調べてみたところ、チョウザメの卵であるキャビアは別のスペルなので、これはあのキャビアではないかもしれない。ただ「CABIA」のつづりを持つ単語があるわけでもないらしく、謎は深まる。
キャビアを思うあまり、スペルの正確さが二の次になってしまった可能性もある。謎が謎を呼ぶキャビア。
カテゴリ1:親しみやすい系
ほかにもいろいろ調べてみたママチャリたち。やはり日常の足となる道具とあってか、親しみやすいネーミングが目についた。
このカテゴリの自転車たちの親しみやすさはいいのだが、言ってることにあたりさわりがないのはインパクトに欠ける。写真につけるコメントもだんだん適当になってきている。
注目していただきたいのは「ナイス」の自転車。よく見ると、小さい英字で「GO OUTSIDE ENJOY LIFE」と書いてある。
ライフをエンジョイせよと命じる自転車。言ってることに異論はないが、ママチャリにそんなことを言われるとどうも釈然としない気がする。
カテゴリ2:英文で説明つき
上でも書いたが、メインとなる自転車の名前の他に、小さい字で英文が添えてあるタイプの自転車もいくつか見られた。
英語っぽく書いてあってタケトンボであるところもトラップだが、小さく書いてある英文が気になる。文をネットの翻訳サービスに入力して、日本語化してみる。
I’ll sticky about my favorite things. Individuality is my assertion. |
機械的な訳ということもあるのだろうが、ずい分気難しい感じの自転車になってしまった。そしてタケトンボとは全く関係がないように聞こえる。
「マイルド」というネーミングは親しみやすい系にも属するものだろうか。こちらもこちょこちょと小さい字が書いてあるので訳してみる。
Happiness must be your side, if you have something special in mind. あなたが心において特別のものを持っていれば、 幸福はあなたの側であるに違いありません。 |
う、うん、そうだよね。いいこと言ってるよね、自転車なのに。
幸福論まで展開しはじめた自転車。しっかり読んでいる人はほとんどいないであろう部分にこんなことが書かれていた。
カテゴライズはもうやめだ
せっかくここまでカテゴライズしてきたのでこの調子で書こうと思ったのだが、取材してきた写真を見ていたらあきらめの気持ちが湧いてきた。
種類別にするには自由すぎるのだ。
ビジンとかファットキャットとか、もうそれは自転車のことじゃないよ。
ファットキャットに至っては、訳してしまうと「でぶ猫」。オーナーはそうとわかって乗っているのだろうか。でぶ猫という自転車に乗っている自覚はあるのだろうか。
こちらのふたつは時流を意識したものと言えるだろうか。「X-FILE」、ずいぶん前にそういう海外ドラマが流行った覚えがある。ただ、自転車との接点は見出せない。
右の方は「ドットコム」。もうどうでもいいから、なんか流行ってる感じの言葉をつけとけ、みたいな感じなのだろうか。
時流を取り入れたと言うより、感じられるのはやけくそ感。一周した感じのかっこよさがそこにはある。
こちらに書いてあるのは「YES WE CAN」。言葉の響きも小気味よく、意味的にも前向き。それはまあいいだろう。
わからないのは、なんでそれをママチャリに書くのか、ということなのだ。そんな前向きなことを言われても、ママチャリに書いてあるからなのか、素直に受け入れられないよ。
ここまでやってきた自転車の名前調べだが、調べたところで謎は深まる。そういうこともあるんだと思う。
名もなき自転車に乗りたい
結局、その自由さに翻弄されっぱなしだった自転車の名前調べ。そう名づけられた意図が非常に読み取りづらい。
家電製品や自動車のネーミングには、その商品なりの意図が感じられるものがほとんどだろう。ただ、そのルールはママチャリ界には通用しないようだ。
上の写真は取材中に見つけた自転車のカゴ。カゴのくせにと言ってはなんだが、「ベストセレクション」とあるのは、ずいぶん大きく出てると思う。