独立系エージェンシーのノウン(Known)はありふれたエージェンシーではない。キャンペーンを通じてクリエイティブな期待を上回る手段として、データサイエンスを主軸としたサービスを提供している。
元メディアコングロマリット幹部のカーン・シレソン氏とロス・マーティン氏が(ブラッド・ロス氏、マーク・フェルドスタイン氏とともに)2年前に立ち上げたノウンは2021年、従業員を増強し、グラブハブ(Grubhub)、ビューティーカウンター(Beautycounter)、トークスペース(Talkspace)、ダッパー・ラボ(Dapper Labs)、インビテーション・ホームズ(Invitation Homes)など、多くのクライアントを獲得した。次の一手は、Web3.0関連のクライアントを獲得することだ。
しかし、ノウンはデータサイエンスのスキルを磨くと同時に、(特にD2C分野の)クライアントとそのCFOがブランド広告の価値を理解する手助けを行っている。そうした取り組みについて、エグゼクティブバイスプレジデント兼最高技術責任者のネイサン・ヒューゲンバーガー氏が米DIGIDAYに語ってくれた。
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なお、読みやすさを考慮し、以下のインタビューには編集を加えている。
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クリーンルームは基本的に、クライアントがプランニングやバイイングのターゲットを絞る必要がある時、ファーストパーティデータを活用できるようにしてくれる。また、素晴らしいデータセットがある時、パフォーマンスを引き出すことが可能になったのは間違いない。
クライアントのパフォーマンスを高める方法を考える際に、私たちが検討するツールのひとつだ。たとえば、彼らのデータセットの上に何かを構築することは可能か、あるいは、クライアントが比較的新しいブランドで、ファーストパーティデータに増加の余地がある場合、実験やテレメトリの改善を通じて、データを増やし、追加していくには、どのように設計すればよいかといったことを考える時に活用する。
−−スケプティック(Skeptic:クライアントのキャンペーンの評価、最適化を目的としたノウン独自のテスト、学習ソフトウェア)という秘密兵器はどのように機能するのか?
私たちはキャンペーンのコンセプトと最初のクリエイティブを開発するプロセスに、クライアントのファーストパーティデータや調査結果をすべて取り入れている。しかし、私たちは基本的に、キャンペーンを学習キャンペーンにしたいと思っている。時間をかけて学習、最適化、改善していくためのキャンペーンだ。その過程で、私たちは文字通り、マーケティングキャンペーンであると同時に、どのようなクリエイティブがうまく機能するかを確かめるための調査キャンペーンになるよう設計することができる。さらにそれを使って、文字通り「こうすればうまくいく。ああすればうまくいかない」と伝えることができる。
データやインサイトの活用はブリーフまでというのは、とても古くさい考え方だ。もっともわからないのは、キャンペーンを立ち上げたその日に何が起きるかだ。その日が来るまでわからないことがある。
私たちがデータサイエンスやテクノロジーへの投資をこのように考えている理由はそれだけではない。クリエイティブチームが私たちのデータサイエンティストに、「どのクリエイティブがうまくいった? どれが勝った?」と聞くことも重要だ。システムをゲーム化し、クライアントのKPIをスコアボードにすることで、すべてがうまく機能するようになる。
−−スケプティックは、どのようにしてクライアントのパフォーマンス広告とブランド広告の改善を支援しているのか?
現在のマーケターや広告主はデジタルファースト、ソーシャルファーストが身に付いており、彼らの組織、役員、リーダーもそうしたシステムから得られる指標によく慣れている。しかし、ある程度の規模に達すると、ブランドへの投資を開始し、認知度を高める必要がある。
毎日8つのダイヤルとスピードメーターを見るのが当たり前になっているような組織に、どうすればブランド広告に何百万ドルも費やし、心から満足する方法を教えられるのだろうか? もしすぐに結果が出なければ、「なぜこれほどの金額を使っているのか?」となるはずだ。
このような局面は、クライアントとその組織を長期的な投資へと向かわせるには、どのような助言を行うべきか。あるいは科学とデータを使ってある種の実験を行い、ブランドの活動をより測定可能なものへと変化させ、その結果、必要な予算について役員会でうまく説明する方法を考えているかにかかわらず、常に起こり得る。
−−つまり、CMOがCFOの言葉を話す助けにもなるということか?
今はCMOがCFOと緊密に連携することが極めて重要だ。私たちは実際、予算やKPIにかかわる組織の力学をどうすれば理解できるかを考えるのに多くの時間を費やした。そのなかには、ちょっとした経営コンサルティングに行き着いたものもある。
エージェンシーが企業のパートナーとして最高の仕事をするには、CFOが何を望んでいるかを本当の意味で理解する必要がある。キャンペーンに関与する人々の助けになるアプローチとはどのようなものか? 役員にとって重要な質問に答えるテストを実行できるか? そうした情報があれば、彼らは正しい道を歩み、重要な意思決定を下すことができるかもしれないのだ。
Michael Bürgi(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:猿渡さとみ)