ビューティブランドの NFT を一般消費者が簡単に購入できる方法

DIGIDAY

大手美容ブランドがNFTをローンチするなかで、口紅を注文するくらい簡単にデジタルアート作品を購入できる身近なeコマースプラットフォームが次々と出現している。

4月5日、NFTを暗号通貨ではなく通常の通貨で注文できる、一般大衆向けの最新NFTプラットフォームとして、Shopifyに対応したWeb3のeコマースプラットフォーム、ノヴェル(Novel)がローンチした。コーディングの知識を不要にしたこのプラットフォームは、ボビイブラウン(Bobbi Brown)のジョーンズロードビューティ(Jones Road Beauty)やエバーレーン(Everlane)といったブランドパートナーを招き入れている。

「一般的に、アメリカ人の2%以下がNFTを所有していると言われている。現時点ではこの分野全体はメインストリームからは程遠い」と語るのは、ノヴェルの共同創業者でCROのアナ・マージ氏だ。彼女は以前、決済プラットフォームのアルゴペイ(AlgoPay)を共同創業している。マージ氏は、共同創業者およびCEOとしてロジャー・ビーマン氏とチームを組んだ。ビーマン氏は、ブランドがShopifyでサブスクリプションプログラムを設定するのを支援するプラットフォーム、スマーター(Smartrr)をかつて創業した人物だ。

暗号通貨ではなくてもNFTを購入できる

美容ブランドは、一般ユーザーが暗号通貨ではなくクレジットカードでNFTを購入できるようにするさまざまなプラットフォームを活用しており、そのプロセスをわかりやすく説明している。NFTは暗号通貨界隈からの投資志向のコレクターたちから熱い注目を集めているが、ブランド側は、NFTの所有による独占的な側面やコミュニティの創出を試みると同時に、不換紙幣で簡単にNFTを購入できるようにしようとしている。たとえば、ナーズ(Nars)は昨年のNFTキャンペーンでトゥルーシー(Truesy)というプラットフォームを利用し、ジバンシイビューティ(Givenchy Beauty)はヴィヴィ(VeVe)というプラットフォームを活用している。一方、E.l.f.コスメティックス(E.l.f. Cosmetics)は、NFTにビツキ(Bitski)を利用した。

3月29日、MACコスメティックス(MAC Cosmetics)はブランドのeコマースサイトで、キース・ヘリング氏のNFTのオンライン販売を開始した。サイトではクレジットカードのみを受け付け、暗号通貨は受け付けなかった。

「デジタルファーストのブランドとして、消費者がオンラインで集まる場所で、消費者とよりよい出会いができるように、私たちは常に進化し続けている。将来的に消費者とMACとの関わり方を変化させるべく、NFTの可能性とメタバースを視野に入れている」と、MACコスメティックスのチーフグローバルマーケティングオフィサーであるエイダ・ムーダシュル=ルボワ氏は述べている。

消費者向けNFTプラットフォームの大きなメリットのひとつは、余分な手数料が不要になることだとマージ氏は言う。「あるブロックチェーン」では、NFTを購入するための追加手数料が「かなり高額になることがあり、トークンそのものより高い場合もある」と彼女は指摘した。「私たちは消費者のためにそれをカバーしているので、どの時点であっても消費者は自分のトークンにアクセスするのに暗号通貨を必要としない」。

NFTの所有を中心としたコミュニティを構築

インフルエンサーやセレブリティによるプロモーションも手伝って、NFTと暗号通貨の世界にはNFTを所有している人々の密接なコミュニティがある。コレクターはディセントラランド(Decentraland)やDiscordなどのオンラインプラットフォームはもちろん、カンファレンスや(時には豪華な)パーティなど、現実の世界でも集まって友好関係を築いている。4月初めにマイアミで開催された大規模なビットコイン(Bitcoin)2022カンファレンスでは、あるメンバーが暗号通貨の世界を最近では「カルト」だとみずから呼んでいた。

NFTプラットフォームの創業者によると、ブランドはこの考え方を活用して、NFTを中心にブランドに忠実なフォロワーを構築することが可能だという。ノヴェルでは、製品のドロップへの独占アクセスをNFTオーナーに与える「トークンゲーテッドストアフロント」、専用メーリングリスト、コラボランド(Collab.Land)というツールを通じて入ることができる「鍵付きの」Discordコミュニティへのアクセスなど、ブランドはいくつかの方法でNFTの所有を中心としたコミュニティを築くことができる。

「ブランドがコミュニティとともにインスタグラムでやろうとしていることを想像してみてほしい。でもそれよりももっと親密な設定だ。顧客はコミュニティの一員になりたいと思っているため、より関与しやすい」とマージ氏は述べた。

いまだに投資志向の強いコレクターが利用するNFTのプラットフォームを選ぶブランドもある。ゲラン(Guerlain)は4月11日に暗号通貨を使って運営されるNFTプラットフォームのオープンシー(OpenSea)でのNFTコレクションのローンチを発表した。クレジットカードのプラットフォームを立ち上げるのではなく、ゲランは自社サイトで暗号ウォレットの設定方法をステップ・バイ・ステップで説明している。

また多くのブランドがNFTのローンチにチャリティーの要素を取り入れている。ゲランのドロップの収益はすべて、フランスのミリエール渓谷の環境プロジェクトに寄付される。同ブランドは「もっともサステナブルでエネルギー効率の高いブロックチェーンのひとつ」といわれるテゾス(Tezos)のブロックチェーンを使用することで、サステナビリティの懸念に対処している。

一般の人にも使いやすい暗号ウォレットのプラットフォームを

ノヴェルでは、以前はトーラス(Torus)と呼ばれていたWeb3Authというプラットフォームを使って、ユーザーが暗号ウォレットを設定できるようにしている。暗号ウォレットは「Googleを使ったシングルサインインなので、暗号ウォレットであるにも関わらず、通常のウェブアカウントを設定しているような感覚になる」とマージ氏は説明した。これは、NFTや暗号通貨により経験豊富な人々のあいだでは一般的な、メタマスク(Metamask)の代替となるものだ。

「メタマスクは一般的に使いにくい。通常のプラットフォームへのサインオンとはまったく異なってみえるサインオンが必要なため、Web2ユーザーは恐れをなすようなシステムだ」とマージ氏は暗号ウォレットのプラットフォームについて述べている。

ノヴェルは、ブランドがShopifyを通じて、JPEG、SVG、GIF、または動画のNFTを物理的な商品と一緒に販売できるようにしており、暗号通貨やオープンシーなどのブロックチェーンプラットフォームの経験がない顧客でも利用できるようになっている。ブランドはアートワークのインポート、ロイヤリティやレアリティのパーセンテージの設定、画像「レイヤー」のインポート、ボアード・エイプ(Bored Ape)やワールド・オブ・ウィメン(World of Women)のラインに伴うジェネレーティブなコレクションの自動作成に利用することができる。

「ノヴェルのおかげで、Web3への進出は簡単でシームレスだ。顧客と完全に新しい方法でつながる準備をしているなかで、ノヴェルのプラットフォームでは、ともすればブランドと顧客の両方にとって障害となる複雑な技術的実装について懸念することもなく、(顧客との)関係性を強化する創造的な方法を見つけることに集中できる」と話したのは、ジョーンズロードビューティでeコマースディレクターを務めるコディ・プロフカー氏だ。同ブランドは、独自のNFT戦略を開発中であり、詳細は後日明らかにされる予定である。

ノヴェルは、ベンチャーキャピタルのレアラーヒップー(Lerer Hippeau)が主導し、D2Cシューズブランドのロージーズ(Rothy’s)共同創業者のロス・マーティン氏やヴェイナーファン(VaynerFun)などが追加投資したシード投資ラウンドで、600万ドル(約7億5900万円)を調達した。この資金調達ラウンドには、既存の投資家であるシュガーキャピタル(Sugar Capital)とコスタノアベンチャーズ(Costanoa Ventures)も参加している。

[原文:How beauty brands are making their NFTs accessible to the general public]

LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

Source

タイトルとURLをコピーしました