影響力のある インフルエンサー のパフォーマンス分析とトップトレンド【Glossy Instagram ブランドガイド】

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目次

01 イントロダクション

ホットな話題やニッチな戦術まで、インフルエンサーマーケティングは現代のブランド戦略には欠かせないものとなっている。急成長するインフルエンサーエコノミーだが、あまりに急速に大きく発展しすぎたとも言える。消費者のフィードを密かに賑わせている投稿群に透明性を与えるべく、2019年11月、米国連邦取引委員会(FTC)は、インフルエンサーマーケティングとパートナーシップを管理する法的ガイドラインを掲載したオンラインパンフレットをリリースした。FTCのオンラインパンフレットが公表された2019年以降、インフルエンサーマーケティングの支出額は、2019年の24億2000万ドル(約3000億2500万円)から2021年には36億9000万ドル(約4575億円)へと増加しており、わずか2年で52%増となっている。今日のインフルエンサーマーケティングは、スタンダードなれっきとしたビジネスへと飛躍を遂げている。

インフルエンサーマーケティングが次第に当然のものとなっていくにつれ、ブランドは派手で華やかなイメージに惑わされず、ターゲットオーディエンスに適したパートナーシップを慎重に選択する必要が出てきた。この課題にうまく対処するための第一歩として、米Glossyでは業界を影響を与えるであろうファッションおよびビューティインフルエンサーのリストを作成した。その影響力をよりわかりやすく紹介するために、GlossyではInstagramでのインフルエンサーのパフォーマンスを評価している。それはTikTokのように動画コンテンツのみを表示するような他のプラットフォームとは対照的に、Instagramがより発展したプラットフォームであり、成熟したブランドとのパートナーシップを有し、動画と静止画の両方のコンテンツが存在するためだ。この点において、GlossyのInstagram指標は、それぞれのインフルエンサーのブランドパートナーとしての長所と活動の中心を測定することを目的としている。以下にその方法を紹介する。

02 メソドロジー

GlossyInstagram指標は、40人のインフルエンサーのリストとそのInstagramの肩書きからデータを収集し、一連の重要なディメンション(項目)の採点を行って指標となる合計平均スコアを算出している。各インフルエンサーには、平均以上あるいは平均以下のパフォーマンスを示すための指標の平均から導き出した偏差値が与えられる。当然ながらこれらの結果はインフルエンサーのリストとデータ収集期間に依存するものであり、ある特定の時点でのインフルエンサー分野における評価を生成している。

Glossy初の指標は、2021年のInstagramデータを元に、2022年2月に作成された。インフルエンサーは、ファッション、ビューティ、そしてGlossy 50のリストの中でもとくにこの分野に劇的な変化をもたらしているZ世代インフルエンサーのリストに基づいて選ばれた。

この指標では、インフルエンサーのパフォーマンスを測定するために、4つの主要なディメンションを用いた。以下、今回のセレクションにあたりあまり影響を与えない項目から、もっとも影響度の高い項目へと順番に紹介する。

・オーディエンスリーチ:インフルエンサーのオーディエンスの規模と平均エンゲージメントを示す指標。オーディエンスリーチは、インフルエンサーのベースとなるオーディエンスの規模だけでなく、投稿活動全体にも注目する。

・非スポンサードエンゲージメント比率:スポンサーのないコンテンツのフォローサイズと比較したインフルエンサーのエンゲージメントを示す指標。このディメンションでは、インフルエンサーの非スポンサードコンテンツの影響を測定し、フォロワーの質を示す。高いエンゲージメント率は、インタラクティブなフォロワーおよびフォロワーと共鳴するインフルエンサーを示している。

・ブランドプロミネンス:ブランドコンテンツのプレゼンス、種類、インフルエンサーがよいコラボレーションパートナーになるかどうかを評価するためのパートナーブランドとの相乗効果を査定する。パートナーシップを結ぶにあたってどのくらい多くの、どういったブランドがそのインフルエンサーにリーチしているかを追跡し、インフルエンサーの最終的なカテゴリーの評価にも用いられるディメンションである。

・スポンサードエンゲージメント比率:スポンサードコンテンツのフォローサイズと比較したインフルエンサーのエンゲージメントを測る基準。非スポンサードエンゲージメントと同様に、スポンサードエンゲージメントは、ブランドとインフルエンサーのスポンサードコンテンツがインフルエンサーのフォロワーに共鳴しているかどうか、またどの程度共鳴しているかを示している。

インフルエンサーは、パートナーブランドの主な製品カテゴリーと、スポンサードコンテンツ内に存在するブランドスポンサーの数に基づいて、ビューティ、ファッション、その他の3つのカテゴリーに分類された。例えば、5つのスポンサード投稿のあるインフルエンサーの場合、そのうち3つが美容ブランドであれば、ビューティインフルエンサーに分類される。分類の際に同数のカテゴリーがあった場合は、非スポンサードコンテンツと、Glossyのリストに登場するより優勢なカテゴリーに基づいて手動で分類した。「その他」に分類されるインフルエンサーには、ゲーム、テックハードウェア、食品、アルコールブランドなどともっとも多くコラボレーションしているインフルエンサーが含まれる。

インフルエンサーのほかにInstagramの投稿自体も、静止画投稿と動画投稿の大きくふたつに分類された。静止画投稿は、静止写真や、単一あるいは複数の画像によるカルーセル投稿などの画像で構成されたものを指す。動画投稿は、リール、Instagramビデオ、ブーメラン、GIFなど、動く画像を基にした投稿から成るものを示す。この指標では、複数画像のカルーセル投稿は一連のシリーズの最初の画像の投稿の種類に基づいて分類している。また40人のインフルエンサーを対象に、合計5374件のユニーク投稿、4034件の静止画および複数画像のカルーセル投稿、1340件の動画投稿を評価した。インフルエンサーの分類は、ビューティが18名、ファッションが15名、その他が7名となっている。

03 リサーチ概要:やること、やってはいけないこと

大方の予想通り、平均値以上のパフォーマンスを示したインフルエンサーは、幅広いオーディエンスにリーチするとともに、非スポンサードとスポンサードの両方のコンテンツで強いエンゲージメントを叩き出していた。また、上位に位置するインフルエンサーは、フォロワー数が10万人台のインフルエンサーから4700万人以上のメガインフルエンサーまで、オーディエンスの規模は幅広かった。インフルエンサーとの提携を検討しているブランドにとって、オーディエンスの規模はもはや施策成功においてマストで必要なものではない。

特定のカテゴリーのインフルエンサーにとってもっとも理想的なのはどのタイプのコンテンツなのかを判断するという意味では、Instagramの投稿はより複雑になってきている。Glossyの調査では、ブランドとインフルエンサーのカテゴリーが、エンゲージメントを最適化するコンテンツの種類を決定することがわかった。たとえばファッションブランドとファッションインフルエンサーの場合は、強いエンゲージメントを生む可能性が高いのは静止画投稿であった一方で、ビューティインフルエンサーと美容ブランドは、動画投稿から強いエンゲージメントを得ていた。興味深いことに「その他」のインフルエンサーは、動画投稿ではファッションインフルエンサーよりもパフォーマンスが優れている。

インフルエンサーやブランドのカテゴリーに依存しないコンテンツでは、Instagramが動画コンテンツを推しているため、静止画投稿よりも動画のほうがエンゲージメント率が高い。動画中心のTikTokに対抗するため、Instagramはリールや動画コンテンツを優先しており、動画にフォーカスした「発見ページ」の追加提供によって動画コンテンツが表面に出やすくなっている。また有料プロモーションもスポンサード投稿のパフォーマンスに大きく関わっており、動画のビュー数をさらに押し上げている。

注目すべきは、非スポンサードとスポンサードを投稿別に分けた際、このふたつのカテゴリーにはより好ましいコンテンツのタイプがあったことだ。非スポンサードは、静止画投稿でよりよいパフォーマンスを示し、スポンサードの動画は、非スポンサードよりもパフォーマンスが優れていた。

04 ブランドスポンサーシップは、特定のフォーマットタイプに貢献する

インフルエンサーの指標では、ビューティコラボレーションがもっとも一般的であり、ファッションコラボレーションが僅差でそれに続く。前述したように、「その他」タイプのコラボレーションには、ゲーム、テックハードウェア、食品、アルコールブランドなどが含まれている。ブランドコラボレーションでは、インフルエンサーは必ずしもひとつのカテゴリーに限定しているわけではなかった。多くのインフルエンサーはほかのカテゴリーも試しているが、通常はひとつの特定の分野に注力していた。

動画フォーマットは美容ブランドのスポンサーシップでもっとも効果的

スポンサードの動画コンテンツでは、ほとんどのコラボレーションで平均エンゲージメント率(フォロワー数に対するビュー数)が全体的に高いという結果が得られた。美容ブランドのスポンサーシップは、動画がもっともよい結果を出していた。ファッションとビューティのインフルエンサーがそれぞれ投稿した場合に高いエンゲージメント率を示し、特にファッションインフルエンサーによる投稿の平均値がわずかに高くなっている。美容ブランドとファッションインフルエンサーとの相乗効果は、カラーコスメティック製品での「ルックを完成させる」という考え方や、美容ブランドの名称にファッションブランドに由来するブランド名が含まれていることによるものかもしれない。インフルエンサーのエヴェレット・ウィリアムズ氏(@everettwilliams)は、ミュグレー(Mugler)やカルバン・クライン(Calvin Klein)などのフレグランスのパートナーシップにおいて、ファッションブランドとしてのブランドネームと美容ブランドとしてのブランドネームの両方を記載するというアイデアを披露している。どちらのファッションブランドも他社に名前をライセンスしているため、美容カテゴリでありながらも、ファッションのオーディエンスにも美容製品の認知度がある。一方で美容のスポンサード動画は、「その他」のタイプのインフルエンサーが投稿した場合はパフォーマンスが低く、美容コンテンツと美容に関する必要な専門知識のないインフルエンサーとの間には相乗効果がない可能性を示している。

ファッションブランドのスポンサード動画では、ファッションインフルエンサーとビューティインフルエンサーのいずれかが投稿した場合でも、ブランドは同様のパフォーマンスを得られるが、「その他」タイプのインフルエンサーは美容よりもファッションブランドとのコラボレーションではるかによい成果を出していた。おそらくこれは美容のほうが信頼性のハードルが高いことを示している。注目すべきは、ファッションとビューティのインフルエンサーから強いパフォーマンスを得た美容ブランドとは異なり、ファッションブランドはインフルエンサーのタイプに関係なく、動画コンテンツでは比較的同様のエンゲージメントが得られている点だ。

「その他」タイプのブランドによるスポンサード動画は、ビューティインフルエンサーとの組み合わせがもっとも成功している。興味深いことに、「その他」タイプのインフルエンサーは、「その他」タイプのブランデッド動画のエンゲージメントがもっとも低い。これは「その他」タイプのブランドのデータに、ドージャ・キャット氏とペプシ(Pepsi)、ブレットマン・ロック氏とシムピープル(The Sims)など、メガインフルエンサーと組んだ大手ブランドが含まれていたことが要因かもしれない。このような大手ブランドとインフルエンサーが組んだ動画コンテンツはより商業的な印象を与えるため、これらの動画に関与したり、視聴を継続したりするのを視聴者がためらう可能性がある。

静止画フォーマットは、ファッションブランドとインフルエンサーの相乗効果を強調する

スポンサードの静止画コンテンツでは、一変して美容ブランドは「その他」タイプのインフルエンサーからもっとも高いエンゲージメント率を得ている。ビューティおよび「その他」のインフルエンサーは、それぞれのカテゴリー外ではわずかにエンゲージメント率が向上しているが、全体的には、美容ブランドはインフルエンサーのタイプによらず比較的同じエンゲージメントを維持している。

美容ブランドが動画フォーマットで高いエンゲージメントを獲得していたのに対して、ファッションブランドはファッションインフルエンサーとの連携による静止画のスポンサードコンテンツで強い相乗効果が見られた。つまり、ファッションブランドとファッションインフルエンサーが組んだ場合、静止画コンテンツの平均エンゲージメント率は圧倒的に高くなる。ファッションブランドは、マーケティング活動および予算において、ますます動画を優先するようになっているかもしれないが、静止画コンテンツが好まれているという傾向はファッションブランドに再考すべき点を示唆している。また、スポンサード動画コンテンツとは異なり、「その他」タイプのインフルエンサーは、ファッションのスポンサード静止画投稿に関しては、パフォーマンスが低くなっている。

05 Instagramはカスタマージャーニーをスタートさせる

ブランドのマーケティングスペースとしてのInstagramは、インフルエンサーの投稿のキャプションに強く表れている。「ad」「link」「code」といった単語がもっとも頻繁に使われるトップ10のリストに入っており、もっとも多い単語の組み合わせは「link bio」だった。これらの言葉は、スポンサード投稿かインフルエンサーによる何らかのプロモーションを示しており、「ad」という言葉はほとんどの場合、スポンサード投稿を示している。

「link」、「code」、「link bio」は、必ずしもスポンサーシップを意味するものではないが、インフルエンサーがフォロワーに対して、プラットフォーム外で何かしらのアクションを起こすよう促していることを示している。ブランド自身がこの言葉を使う、あるいは要求する場合は、視聴者を主要なコマースのタッチポイントへと誘導することが目的である。Instagramが認知施策を超えたマーケティングプラットフォームとして成長する一方で、ブランドとインフルエンサーは、オンプラットフォームでのコマースの選択肢が増えているにも関わらず、Instagramをカスタマージャーニーの終点ではなく出発点として使用していることを強調している。

投稿には「new」「collection」といったそのほかの言葉や、「skin」「makeup」「hair」といった製品に関する用語も頻繁に登場する。「new」を上位の製品用語と組み合わせてGoogleの検索ボリュームを査定すると、年末に向けて関心が高まっており、「new skin」「new hair」もその年の前半に急上昇している。

これらふたつのデータポイントを合わせると、Instagramがインフルエンサーとのコラボレーションによる新製品の紹介の場であることがわかる。ホリデーシーズンに急上昇がみられることから、その活発な購買時期にインフルエンサーのコラボレーションを新しいホリデー商品に注力することで、広告の新しさにギフトを贈ることを想起させることができる。

06 Instagramは動画を優先する

ブランドとインフルエンサーは、好きな時に好きなようにただ投稿しているのではない。どちらのグループもコンテンツカレンダーを持ち、投稿内容や頻度も計画的に意図している。興味深いことに、投稿の頻度はエンゲージメントには強い影響を与えないようで、静止画の投稿数と動画の投稿数ではどちらもエンゲージメントの比率に対する明らかな相関関係はみられなかった。しかし間違いなく重要なのは投稿の種類だ。動画コンテンツのエンゲージメント率は、静止画投稿を明確に上回っており、下の図表では動画コンテンツが平均20%、静止画コンテンツが平均7%となっている。

一般的に、Instagramは2020年以降、進化するソーシャルメディア空間での競争力を維持するために、動画コンテンツ、特にリールをプッシュしている。2020年7月31日に米国政府がTikTokを禁止する恐れがあるとされた直後の2020年8月5日、Instagramはリール機能のリリースを発表した。TikTokと同様に、Instagramのリールは短かい動画コンテンツを特徴としており、オリジナルのインスタグラムビデオとの違いは、よりカジュアルな視聴者を取り込むために動画の長さをさらに短く限定していることだ。このふたつの動画の種類をさらに区別するため、Instagramはユーザープロフィールに、リールのみ、またはInstagramビデオのみを表示するふたつのアイコンを追加している。

リールのリリース以降、ショッピング機能の追加や、ブランド向けに目を引くオファーとしてビジネスページで目立つ位置に配置するなど、Instagramはこの機能を改善し続けている。ビジネス製品としてのリールのインテグレーションにより、ブランドやインフルエンサーは、エンゲージメントをさらに高めるために広告費を追加で投入することもできる。

リールの導入から3カ月後の2020年11月、Instagramはトップページにリール専用の探索タブを設けることを発表した。リールや動画コンテンツがより一般的になったことで、このプラットフォームはいまでは動画メディアを優先するようになり、前述したように動画の高いエンゲージメント率の重要な要因となっている。

06 動画フォーマットは優れているが、静止画にも役割がある

Instagramは動画形式を好む一方で、特定の状況や文脈では静止画の投稿のほうがメリットがある場合もある。非スポンサードコンテンツとスポンサードコンテンツを比較すると、エンゲージメントの違いが際立っている。

非スポンサードの動画コンテンツでは、スポンサードの動画よりもフォロワー数に対するビュー数の比率が驚くほど低かった。しかし、データをフォロワー数に対する「いいね」の比率に再構成すると、非スポンサード動画のほうがよいパフォーマンスを示している。これは、広告費や信頼性といったさまざまな要因に起因している。スポンサードコンテンツは、投稿の背後に多くの広告費がかかっているため、投稿の可視性をより高めることができる。ビュー数はエンゲージメントの受動的な形態であり、「いいね」はユーザーがダブルタップするか「いいね」ボタンをクリックする必要がある能動的な形態であるため、データにはインタラクションの種類の差が現れている。大規模インフルエンサーが商業的で本物らしくない動画コンテンツを制作するために大手ブランドとコラボすると先に述べたように、視聴者はスポンサード動画コンテンツ全般を本物らしくない、商業的なものとして見ている可能性がある。このふたつの要因によって、スポンサード動画コンテンツは、より多くの費用をかけ、より多くのビュー数を獲得しているものの、視聴者に「いいね」ボタンをクリックさせるために必要とされる、非スポンサード動画にあるような本物らしさには欠けている。

非スポンサードとスポンサードの静止画コンテンツを比べると、静止画は動画とは逆の結果となり、スポンサードのイテレーションよりも非スポンサードのほうがよいパフォーマンスを示した。注目すべきは、動画よりも静止画のほうが投稿のキャプションが目立つように表示され、ユーザーがスポンサーシップを示すテキストをはっきり見ることができるのに対し、動画の投稿ではキャプションテキストがカットされているか、クリックしてキャプションの全文を表示させなくてはならない点だ。こうした静止画のスポンサード投稿でスポンサーの署名が前面に出ることは、視聴者に不快感や不誠実な印象を与え、結果として静止画の非スポンサード投稿にくらべてエンゲージメントが低くなる。

コンテンツのフォーマットをインフルエンサーのカテゴリー別にさらに分類すると、より明確な違いが明らかになる。スポンサードと非スポンサードの静止画では、ファッションインフルエンサーのエンゲージメントが高く、次いで「その他」のインフルエンサー、ビューティインフルエンサーは最下位だった。これはファッションコンテンツが、雑誌やエディトリアルという静止画の長い伝統にのっとっているものであることからも、理にかなっている。スポンサードと非スポンサード動画のフォーマットでは、ビューティインフルエンサーが1位で、オーディエンスからのエンゲージメントも高く、2位がファッションインフルエンサー、3位が「その他」のインフルエンサーとなっている。

静止画フォーマットでは最下位だったビューティが、動画フォーマットでは明らかに勝者に転じたのは、いくつかの要因によるものと思われる。特にメイクアップは、専門性や権威が必要とされており、美容製品の使用方法を動画で実演して紹介することで、美容の世界におけるスキルや積極的な親しみやすさ、詳しい知識を示すことができる。この指標では、トップランクのインフルエンサーであるアビー・ロバーツ氏(@abbyroberts)が、アイライナーのチュートリアルなど、数多くのビューティチュートリアル動画を持っていることがその傾向を表している。このトレンドは、YouTubeの(デジタルという意味での)長い歴史と、ハウツー動画に焦点を当てたメイクアップインフルエンサーの大規模なプールに大きく依存している。

また、美容カテゴリーのなかでも、スキンケアは動画に頼ることが多い。成分が複雑でデリケートな性質なので、他の製品カテゴリーよりも学習曲線が高くなっている。それらの製品は効能や使い方のコツといった、皮膚科医の説明に似た解説が必要な場合が多く、通常は多くの免責事項が添付されている。静止画のキャプションのスペースが限られているため、動画によって製品説明や使用方法を紹介するチュートリアルは、製品カテゴリーをより効果的に強調することができる。

ファッションインフルエンサーも動画コンテンツに強いエンゲージメントを示したが、ビューティインフルエンサーと比較するとパフォーマンスは低い。「その他」タイプのインフルエンサーは、動画コンテンツのパフォーマンスが特に低くなっている。これはすでに述べたように、大手ブランドがメガインフルエンサーと協働してより商業的な印象を与えるという傾向が一因となっている。だがこのカテゴリーはトピックが多様であり、視聴としてカウントするには3秒間視聴者の注意を維持する必要があるため、ここでの動画の結果はさまざまである。

通常「その他」のインフルエンサーは、複数のカテゴリーにまたがる投稿をフィーチャーしている。特に、ローレン・グレイ氏(@loren)とキャスリーン・ベルステン氏(@loserfruit)というふたりのインフルエンサーが、このクロスカテゴリーというテーマの方向性を表している。

ローレン・グレイ氏は、主にファッションとビューティに注力した静止画を投稿しているが、たまに彼女の音楽キャリアに焦点を当てた、ミュージックビデオのクリップやサウンドバイトを使った動画も投稿している。彼女の動画は、彼女自身がメインとしているファッションとビューティという全体的なカテゴリーとは異なるため、エンゲージメントが低くなっている可能性がある。キャスリーン・ベルステン氏も同様に、ゲーム、フィットネス、ファッション、ビューティなど、複数の異なるカテゴリーに関する投稿を行っている。トピックが多岐に渡るため、フォロワーはより自分が求めているカテゴリーを探すべく、そのインフルエンサーに期待するカテゴリーではない動画は3秒経つ前にスキップしてしまうかもしれない。「その他」のタイプのインフルエンサーやクロスカテゴリーのインフルエンサーと仕事をするブランドにとって、フォロワーの規模が大きくても、この点が引き続き課題となりそうだ。

07 インスタグラムのコメントのエンゲージメントが会話をシフトする

インスタグラム自体がビュー数と「いいね!」を主要な指標として押し上げるにつれて、ブランドはフォロワー数をインフルエンサーのリーチとインパクトを示す主要なKPI(重要業績評価指標)として用いることのさらに先へと進んでいる。ビュー数や「いいね!」ではなく、コメントをエンゲージメントの指標に活用してさらに焦点を絞れば異なる傾向が現れる。特に静止画は動画よりもコメントのエンゲージメントが高い。その理由の一部は、インスタグラムが動画から動画へとユーザーを移動させるため、立ち止まってコメントするのが困難だからだ。オリジナルのビュー数と「いいね!」を通してみれば、動画はよりエンゲージメント率が高い。

インフルエンサーのタイプでは、ファッションインフルエンサーのコメント率がもっとも高く、次いでビューティ、最後が「その他」となっている。

インフルエンサーのカテゴリーとコンテンツの種類を含めてさらに細かく分類すると、コンテンツの種類に関わらず、ファッションインフルエンサーのフォロワーに対するコメント率がもっとも高く、一方でビューティインフルエンサーは、ビュー数を主なKPIとした場合に動画のエンゲージメントがより強くなっている。しかし、エンゲージメント指標をコメントに置き換えると、ビューティカテゴリーでも静止画が有利となる。前述の通り、美容に関する動画の投稿は、動画を視聴するという受動的なエンゲージメントにつながる情報や専門知識を提供し、静止画の投稿は、コメントするという能動的なエンゲージメントにより適した空間となっている。

このパフォーマンスの変化は、インフルエンサーのオーディエンスにどのようなエンゲージメントを求めるかによって、ブランドやその目標にとって重要になってくる。ビュー数と「いいね!」はブランドアウェアネス戦略に向いているが、コメントはブランドのフィードバックや顧客満足度、コミュニティという感覚を示すものに有利である。ビュー数と「いいね!」がインフルエンサーのリーチを強調するなら、コメントはそのインフルエンサーのつながる能力を強調している。コメントは、製品レビューと同様に、その投稿や投稿したインフルエンサーに関する貴重な情報やフィードバックを提供し、多くの場合、より高いレベルのパラソーシャルな愛着を示すことができる。

スポンサード投稿のコンテンツへと変換した場合、コメントは同様にブランドに対して同じ類のフィードバックを提供することができる。

08 結論:トップトレンド

インフルエンサーマーケティングの支出は、2023年には46億2000万ドル(約5725億6200万円)に増加すると推定されており、4年間で約200%増加している——2019年の支出は24億2000万ドル(約3000億円)だった。この分野は減速する兆しがなく、Instagramが強力なマーケティングチャネルとして確立したことで、ブランドがその熱心なオーディエンスにリーチするにはソーシャルメディアを全体的なマーケティング戦略に統合しなくてはならない。Instagramからより多くのビジネス製品や新たなインフルエンサーが登場するなかで、GlossyInstagram指標は、ブランドにとって重要なトレンドと最適な実践を提示している。

ブランドスポンサーシップは特定のフォーマットタイプに貢献する

・美容ブランドのスポンサーシップは動画フォーマットにメリットがあり、ファッションおよびビューティインフルエンサーとコラボレーションを行った場合に視聴エンゲージメント率が高くなった。

・静止画のスポンサードコンテンツでは、ファッションブランドがこのフォーマットでもっともメリットがあり、同じカテゴリーのファッションインフルエンサーと組むことでもっとも強い相乗効果がみられた。

Instagramはカスタマージャーニーをスタートさせる

・プラットフォーム上での商取引の選択肢が増えているにも関わらず、ブランドとインフルエンサーは、カスタマージャーニーの終点ではなく、出発点としてInstagramを活用することを重視している。

・Instagramはインフルエンサーとのコラボレーションを通じて新製品を紹介する場であり、特にギフトシーズンに合わせて新しいものを宣伝している。

Instagramは動画を優先する

・動画コンテンツはフォロワー数に対して平均20%の視聴エンゲージメント率、静止画コンテンツはフォロワー数に対して平均7%の「いいね!」のエンゲージメント率である。

・Instagramは2020年以降、動画コンテンツ、特にリールを大きくプッシュしている。それによって、現在Instagramは動画フォーマットのコンテンツをかなり優遇して表示しており、それが動画のエンゲージメント率が高くなる重要な要因となっている。

動画フォーマットは優れているが、静止画にも役割がある

・非スポンサードに関しては、意外にも動画コンテンツはスポンサードの動画コンテンツよりもエンゲージメントが低くなった。

・反対に静止画コンテンツは、スポンサードコンテンツよりも、非スポンサードのほうがよいパフォーマンスを示している。

・静止画コンテンツでは、ファッションインフルエンサーのエンゲージメントが高く、次いで「その他」のインフルエンサー、そして最後がビューティインフルエンサーだった。

・動画フォーマットでは、ビューティインフルエンサーが1位となり、オーディエンスからのエンゲージメントが高く、ファッションが2位、その他が最下位となった。

Instagramのコメントのエンゲージメントが会話をシフトする

・ファッションインフルエンサーは、静止画と動画の両方のコンテンツでフォロワーに対するコメントの比率がもっとも高く、一方でビューティインフルエンサーは、ビュー数を主なKPIとした場合、動画のエンゲージメントがより強くなっている。

・ビューティインフルエンサーは、エンゲージメント指標をコメントに切り替えた場合、現在は動画コンテンツよりも静止画でよいパフォーマンスを示している。

・ビュー数と「いいね!」はインフルエンサーのリーチを強調し、コメントはインフルエンサーのコネクト能力を強調している。

[原文:Glossy Influencer Index: A brand guide to the Instagram influencers worth partnering with]

LI LU(翻訳:Maya Kishida 編集:猿渡さとみ)

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