<人口減少の農村を捨てる自民党>
自民党政権の牙城は相変わらず地方の農村である。我々が2009年に民主党で政権をとってそれが少々崩れつつあるが、農村を多く抱える都道府県では強い。
特に西日本では自民党議員が跋扈している。とはいっても全国的に見ると安倍政権からあるいはその前の小泉政権から、その農民・農村を基盤にした自民党という形が崩れつつある。人口の多い都市部に媚びて、人口減少の続く農村を捨てる(あるいはないがしろにする)姿勢を打ち出し始めている。
構造改革路線ないし規制改革路線であり、更に安倍政権になって農政を軽視しだしたことが目につくようになった。
<大臣人事に現れた農政軽視>
人気取りのために小泉進次郎が農林部会長、農政には全く無縁の当選3回の元経産官僚の齋藤健が農林水産大臣に就任している。かつての自民党では素人の大臣は一人もいなかった。
それでもまだ安倍元首相は、「はっと驚くような美しい田園風景を守る」とかいう美辞麗句を多用して、農民・農村を重視している振りだけはしていた。
<農民出身なのに農業・農村に冷たかった菅前首相>
ところがそれを引き継いだ菅政権はそういった発言すら一切なかった。
菅首相は秋田の農家の生まれだと美談風に貧農の生まれで高校卒業後東京に飛び出し、苦学生として法政大学を出た、と電通あたりの広告調に宣伝された。ところが、実際はイチゴ栽培の大農家の息子だったという。農業が嫌で農村を飛び出しただけあって、所信表明演説でも、農政では農産物輸出について触れただけである。
また農林水産大臣人事に農業軽視の極めつきの事例が現れている。野上浩太郎農林水産大臣は、農林水産委員会など一度も所属したことはないばかりか、富山県出身の参議院議員であるにもかかわらず、農林部会すらほとんど出席したことがなかったという。
菅前首相は7年半以上官房長官をやり、次々に変わる官房副長官の中で人柄がよく使いやすかったのだろう、菅政権誕生とともに農林水産大臣に就任した。
厚生労働大臣で2度目の大臣となったプロの田村憲久や、厚生労働族の後藤茂之が就任するのと比べると、農政軽視が目立つ。
<麻生副総裁のトンデモ発言>
そこに降って湧いたのが麻生副総裁のとんでもない発言がある。
10月25日、応援で訪れた小樽市で「北海道の米が美味くなったのは、農家のおかげですか。農協のおかげですか。違います、温度が上がったからです。」と言ってのけている。
「かつて言われた不味い米の代表の言葉、”厄介道米”と言われていた、それが今や”おぼろづき”や”こちぴかり”で輸出している」と適当なことを言っている。
多分北海道に行く前ににわかレクチャーを受けたのだろう。普通失言というのは自分の専門の分野で、ついつい行き過ぎた発言になるものだが、全く素人のくせに農家、農協、研究者等関係者の努力を踏みにじる大失言をしている。
<クラーク博士の等の稲作否定に対してもひるまず米作りを始める>
北海道の米作りは大変な苦労の連続であった。何よりも北海道開拓の当初は開拓使顧問団のケプロン、札幌農学校長のクラーク博士、アンチセルの3人がこぞって「北海道は米には向いてない」と断じていた。それにもかかわらずやはり農民は米を作りたいという執着心を捨てずに頑張っていたのである。
篤農家の中山久蔵が「赤毛」という品種で苦労して米作りを始めている。それから幾多の農家、研究者等が努力を続けてきたのである。稲作が始まった地、北広島市は、1873年を記念の年として中山久蔵の米作りの歴史をわかりやすいビデオに製作している。
今、なんでもアメリカの制度に迎合して派遣法を全産業に適用したり、大店法を廃止してスーパーマーケットをどこにでも造れるようにしたりと、やれとも言われないことまでアメリカに倣っているのに比べると、見事というほかない。