自民県議に共産党激怒「デマだ」 – 鈴木博喜 (「民の声新聞」発行人)

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安倍晋三元首相が福島市に駆け付けた26日夕の街頭演説。自民党の佐藤雅裕県議が「共産党は太陽光も風力も水素も反対しています」と発言。共産党関係者が「全くのデマ発言」と激怒している。共産党は総選挙にあたって公表した「分野別政策」のなかで「地域と住民の力に依拠した再生可能エネルギーの推進」を掲げており、真逆の発言だった。共産党福島県委員会は正式な抗議はせずSNSを使って反論しているが、福島1区は地元メディアの見方が割れるほどの激戦。自民党サイドの焦りが「デマ発言」につながったようだ。

【「太陽光も風力も水素も反対」】

 27日夕方、福島駅東口で行われた安倍晋三元首相を招いての福島1区の街頭演説。露払いとして登壇した佐藤雅裕県議(福島市選対本部長)は、「いま相手は、共産党と手を組んで政権運営をすると言っております」と共産党や野党統一候補を批判した。そして、次の発言が物議を醸している。

 「外交、防衛、経済、安全保障…。そして身近な点では再生可能エネルギー。共産党は太陽光も風力も水素も反対しています。こんな政権に託すわけにはいきません。われわれはしっかりと、この苦しい選挙を皆さまとともに勝ち抜いて、福島の未来を作り上げてまいりたいと思います」

 これに共産党関係者は「全くのデマだ」と激怒した。

 街頭演説を聴いていた自民党支持者は、共産党が再生可能エネルギーの普及に反対しているかのように思うだろう。しかし、同党が総選挙にあたって発表した分野別政策では「気候危機を打開するエネルギー政策へ転換し、地域と住民の力に依拠した再生可能エネルギーの推進を」と掲げている。むしろ逆なのだ。

 今月21日、やはり福島駅東口で街頭演説した共産党の志位和夫委員長は環境問題について「2030年までに石炭火力発電も原子力発電もゼロにする。そしてCO2を最大60%減らす。それを省エネルギーと再生可能エネルギーで大改革で進める」と語っている。

 自民県議の発言を受け、共産党福島県委員会はさっそく新しい画像を作成。ツイッターで「福島市で行われた自民党候補の街頭演説で、応援弁士の自民党県議が『共産党は、太陽光にも風力にも反対している』とデマ発言をしました。日本共産党は、地域が主役の再エネを進め電力の40~50%をまかなうことを提案しています」と発信。反論している。

 今のところ、自民党に対して抗議をするなどの考えはないという。


自民党候補の応援演説で「共産党は太陽光も風力も水素も反対しています」と語った佐藤雅裕県議=福島駅東口

【「巨大開発型」への懸念】

 共産党福島県委員会の町田和史委員長は次のように語る。

 「もちろん、再生可能エネルギーなら何でも良いということではないと思います。再生可能エネルギーは地域の共有財産です。地域住民が参画するやり方が大事だと思います。逆に地域住民に不安を与えるような巨大開発型では本末転倒です。『屋根貸し』など地産地消で、経済的にも地域循環型で地域の利益になる再生可能エネルギーを促進するべきです。それらをいっしょくたにする、粗雑なやり方しかできない政治では、コロナ危機以前の新自由主義から一歩も変わることができないのではないでしょうか」

 例えば、今月4日の福島県議会・企画環境常任委員会。宮本しづえ委員(共産党)は、「県として再エネをどのように推進していくのか」などと質問。9月24日の県議会代表質問でも、相馬市玉野地区の森林で計画されているメガソーラー建設に関して「県はなぜ林地開発を許可したのか」、「7月15日付の許可を取り消すべき」などと質している。

 実は企画環境常任委員会の委員長を務めるのが佐藤県議だが、共産党は再エネ推進に待ったをかけているのではない。環境破壊につながるような再エネに名を借りた大規模開発に疑問を投げかけているのだ。静岡県熱海市で発生した大規模土石流の問題も背景にある。

 相馬市玉野地区のメガソーラー建設計画に関しては、雑誌「財界ふくしま」が10月号で詳報しているように、住民が「相馬市民の会」、「相馬市民有志の会」を結成し、計画の見直しを求めている。佐藤県議は、相馬市民に対しても「再エネに反対している」と言うのだろうか。


福島駅東口で街頭演説した共産党の志位和夫委員長は「2030年までに石炭火力発電も原子力発電もゼロにする。そしてCO2を最大60%減らす。それを省エネルギーと再生可能エネルギーで大改革で進める」と述べた

【「県の総合計画にも反対」】

 実は佐藤県議。福島市内のホテルで行われた個人演説会でも共産党批判を展開している。

 「共産党と組んだ政権…ま、政権を渡すつもりはございませんが、もし共産党が参画するような政治になったらどうなるのか。

そして、この県政においても、いま私たちが2030年の姿を描いた福島県の総合計画。こうしたものに対しても、共産党は議論に加わっていながら最後の最後で反対しました。そういった全てを否定していく。否定するだけ批判するだけの政党がこの県政に国政に影響を及ぼさせるわけにはいきません」

 これに対しても、町田委員長は冷静に反論する。

 「立憲民主党や社民党のみなさんとはこの間、信頼関係を築いてきました。今日も立憲の県連幹事長さんと打ち合わせをしてきたところです。それぞれの党の成り立ちや候補者の背景には多様性があり、その違いを尊重しあって『共通政策』という一致点の実現を目的に力を合わせています」

 「県の総合計画については、議論に参加したのに反対というのは当然あり得ることではないでしょうか。国会でもそうですが、運営など含めて議論の条件があれば少しでも良いものにするために議論を尽くす。その上で一致しないことには反対します。当然のことだと思います」

 激戦の福島1区。自民党の亀岡よしたみ候補は4年前の前回総選挙で金子恵美候補に1万3000票余りの差をつけられ落選。比例復活した苦い経験がある。今回も同じ候補の一騎打ち。今回こそは自公候補vs野党統一候補の構図に小選挙区で勝利したいと考えているだけに、何としても共産党票を切り崩したい思惑が自民党サイドにはある。

 今回の発言は、それだけ自民党が追い詰められていることの現れとも言えるのかもしれない。

(了)

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