気候変動による絶滅の危機…。
昨年、南極の氷が例年より早く倒壊し、「壊滅的な繁殖の失敗」によって数千羽のペンギンの雛が死んでしまったようです。
先日「Communications Earth & Environment」誌に掲載された英国南極地域観測所の研究チームによる論文によると、2022年に南極の5つのコウテイペンギンのコロニーのうち、4つのコロニーの雛が死亡した可能性が非常に高いことが明らかになりました。
海氷がなくなると雛は生きられない
この研究では、5つのコロニーに生息する630から3,000を超えるペンギンのつがいを観察。
2018年から2022年にかけて、衛星画像を使ってコロニーのペンギンの数を数えました。画像から、ペンギンの雛の防水の羽毛が育つ前に、ベリングスハウゼン海の中央部と東部で海氷の著しい減少が起こっていることが確認されました。
研究によれば、コウテイペンギンは繁殖と換羽のために、安定した「陸地と定着氷」を必要としています。コウテイペンギンは3月下旬から4月上旬にかけて好みの繁殖場所を見つけ、5月から6月にかけて産卵します。
そしてその2カ月後に孵化し、雛として成長し、そして12月から1月にかけて巣立ってきます。しかし、例年より早く海氷が崩壊してしまうと、幼い雛は不安定な環境で生きていくのが困難になります。
衛星画像によれば、あるコロニーでは11月下旬から12月上旬にかけて海氷が著しく減少していました。また、他のいくつかのコロニーでも12月初旬までに海氷がほとんどなくなってしまい、大人のペンギンたちもその地域から移動せざるを得ない状態になっていました。
コウテイペンギンの雛は、まだフワフワもこもこの毛が生えていてすごく可愛らしい一方、冷たい水には適しません。
このフワフワの羽毛は水浸しになり、防水の羽毛が育つ年齢になるまで、安定した地面がなければ雛は生きていくことが困難になります。雛は冷たい海水の中で溺れるか、水から上がって地面に出られたとしても凍死してしまいます。
温暖化が進むとコウテイペンギンは準絶滅
コウテイペンギンのコロニーを脅威に晒した海氷の減少が起こったのは、2022年だけではありませんでした。
2016年以降、研究チームは40年以上にわたる衛星写真記録の中で、海氷面積が最も少なかった4年間を記録しています。特に2021年から2022年にかけてと、2022年から2023年にかけてのシーズンは、海氷面積が記録上最も少なかったようです。
研究論文では「海氷の減少予測からコウテイペンギンの個体数推移を予測した結果、地球温暖化が継続すると、今世紀末までにコロニーの90%以上が準絶滅に追い込まれるという暗い展望を描かれた」とのこと。
もちろん米国当局も無策でいるわけではなく、2022年10月、アメリカ魚類野生生物局は絶滅危惧種法に基づき、コウテイペンギンの連邦保護を認めています。
NASAによれば、海氷が2014年に記録的な高さを記録して以来、減少傾向にあります。海氷が喪われることは、他の南極の生物種や地球に非常に甚大な被害をもたらします。
南極の氷は太陽光を地球から反射し、地球の気温を調整するのに役立っているからです。
研究チームのフレットウェル氏はThe Guardian紙に対して、
南極の環境を救い絶滅の危険性が高い動物たちを守るためは、まだ時間はあります。
我々の行動と化石燃料の利用量を変えることでしか、このコウテイペンギンや他の多くの種のために、軌道を逆転させることはできません。
と語っています。