メディアマス が破産保護申請。波紋が広がる米デジタルメディア業界

DIGIDAY

メディアマス(MediaMath)が、ここ数週間進めていた売却先候補との条件交渉に失敗し、破産保護申請という緊急手続きに踏み切った。これは、デジタルメディア業界全体に深刻な波紋を広げるだろう。何百人もの失業者を生み、セル […]

メディアマス(MediaMath)が、ここ数週間進めていた売却先候補との条件交渉に失敗し、破産保護申請という緊急手続きに踏み切った。これは、デジタルメディア業界全体に深刻な波紋を広げるだろう。何百人もの失業者を生み、セルサイドのアドテク企業(そのほとんどはパブリッシャーだが)数十社が数千万ドル(数十億円)規模の負債の損失をかぶることになる。

6月第4週後半、メディアマスの資金支援者が売却先候補との取引合意に至らなかったとの話を伝え聞くと、サプライサイドのプラットフォームの幹部たちは情報集めに奔走した。

メディアマス社員(情報筋によると約300人)には6月30日、今後の手続きを進めるために最小限の要員を残して近々事業を廃止することが伝えられたと、アドエクスチェンジャー(AdExchanger)では報じている。

買収提案額は資金調達額の10分の1

売却交渉について直接知っているという情報筋によると、メディアマスの最近の交渉は投資銀行フーリハン・ローキー(Houlihan Lokey)の仲介で5月中旬に本格化していた。メディアマス買収で強く名前が挙がっていたなかには、同じDSPのビアント(Viant)や、メディアアンドゲームスインベスト(Media and Games Invest、MGI)傘下の総合アドテク企業であるバーブグループ(Verve Group)がある。

この経緯に詳しい情報筋によると、メディアマスの代理人が同社の買収に関心を持っている可能性のある相手先に接触して始まった「即売プロセス」を受けて、交渉が行われていたそうだ。

買収提案額は約6000万ドル(約84億円)と見られている。2007年の設立以降にメディアマスが調達した約6億ドル(約840億円)に比べるとごくわずかな額だ。だが取引は実現せず、破産管財人が派遣され、会社の最終的な命運は現在不透明なままだ。

創業者退陣後の破産

メディアマスはアドテク業界ではもっとも歴史のある老舗のうちに入るが、情報筋によると近年では財政が複雑化し、創業者で最初のCEOであったジョー・ザワツキー氏は2022年はじめに退陣している。

米DIGIDAYでは最初、メディアマスが売却先探しにセンタービューパートナーズ(Centerview Partners)を指名したことを2020年6月に報じた。米DIGIDAYが2021年に見た同社の売り口上によると、2020年の同社プラットフォームの売上は総額約5億9100万ドル(約828億円)で、うち70%は米国から、60%は直接ブランドからのものだ。

2023年3月のインサイダー(Insider)の記事によると、ザワツキー氏が去ったあと、プライベートエクイティ投資会社のサーチライトキャピタル(Searchlight Capital)による資本再構成で同社がメディアマスの株式の過半数を取得し、共同創業者や初期従業員・投資家のほとんどの株式が吸い上げられたという。

今回の破産申請は、今年アドテク界で注目を集めた2例目となる。2月にはビッグ・ビレッジ(Big Village)とEMXデジタル(EMX Digital)のチャプターイレブン(米連邦破産法11条)申請があった。長年の業界ウォッチャーのあいだでは、メディアマスの悲運を2019年に破産したサイズミック(Sizmek)と比較する動きが出てくる可能性も高いだろう。

[原文:MediaMath seeks bankruptcy protection

Ronan Shields(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)


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