「人波はさらに人波を呼ぶ」:D2CブランドがワシントンD.C.のジョージタウン地域にこぞって出店する理由

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実店舗小売への足掛かりを得ようとしている多くのD2Cブランドにとって、ワシントンD.C.のジョージタウン地区は最高の不動産だ。

この歴史ある地区は最初、タバコの港町として生まれたが、現在ではもっともトレンディなeコマースブランドのいくつかの拠点となっている。D2Cショールームのショーフィールズ(Showfields)は10年間契約を締結し、12月9日にワシントンD.C.初の店舗をジョージタウンにグランドオープンした。これは、美容品ブランドのグロシエ(Glossier)やカシミヤアパレル企業のナーダム(Naadam)など、ほかのデジタルネイティブのブランドが今年続々と店舗を開設したのに続くものだ。ブランドにとって、ジョージタウンに店舗を持つことの魅力のひとつは、この地区が現地の人々と観光客の両方を引き寄せられることだ。

オンライン発ブランドがこぞって出店

2つの大学に挟まれ、ポトマック川沿いに位置するこの地区は、昨年は1200万人が訪問した。この地区の人気とテナントの混在は、ワシントンD.C.、メリーランド、バージニアの市場に参入を希望する多くのオンラインブランドを引き寄せてきた。ジョージタウンビジネス改善地区(Georgetown Business Improvement District、BID)は、今年この地域に多くのオンラインブランドが店舗を開設しており、今後数カ月以内にはさらに多くの店舗が開設される予定だと語っている。

ジョージタウンBIDの経済開発ディレクターを務めるフェイス・ブロデリック氏は次のように述べている。「数多くのオーディエンスに名前を知られることを強く望んでいるブランドは、ジョージタウンに目を付ける。この地区は非常に多くの観光客が訪れるからだ。この地区ではここ5年間で、典型的な実店舗の小売業者から、オンライン発ブランドによる店舗へと、大規模な移行が見られている」。

アパレル、食品、飲料など、この地区には今年、約30の新しい店舗が今年開設されたと、ブロデリック氏は述べる。D2Cブランドで、エクスプレス(Express)の保有するファッションブランドのアップウエスト(Upwest)、マットレスブランドのアボカドグリーン(Avocado Green)、衣類ブランドのエバーレーン(Everlane)など、数多くのブランドがこの2年間でジョージタウンに店舗を開設した。この地区では、賃貸契約を結んでいない空室が約30カ所まで減っており、そのほとんどがより大きな面積を持つ店舗だという。

人波はさらに人波を呼ぶ

眼鏡ブランドのワービーパーカー(Warby Parker)や宝石類ブランドのブリリアントアース(Brilliant Earth)は、それぞれ約7年および5年にわたってジョージタウンに店舗を構えてきた。しかし、これらの店舗が参入する前は、フォーエバー21(Forever21)、DSW、アルドシューズ(Aldo Shoes)など、従来型のモールを拠点とするブランドが地区を独占していたと、同氏は語る。しかし、これらの従来型ブランドの多くはパンデミックのときに閉店してしまったという。

デジタルネイティブなブランドが急速に参入し、このようなブランドのあとを埋めた。たとえば、ショーフィールズの新しい店舗は、ビジネススーツメーカーのブルックスブラザーズ(Brooks Brothers)が2020年に閉店した跡地に設立された。ドーンプライスベビー(Dawn Price Baby)の店舗があった場所は現在、アップウエストのジョージタウン店だ。

D2Cブランドは、同業のオンラインブランドと同じ地区の周囲に店舗を開設する傾向がある。NYソーホー(Soho)も、D2Cブランドに人気のあるスポットで、靴ブランドのオールバーズ(Allbirds)やアクティブウェアブランドのブオリ(Vuori)などがこの地区に存在する。オースティンのサウスコングレスアベニューやナッシュビルのトゥエルブサウス(12 South)も、D2Cブランドが店舗を開設しようと注目を強めている場所だ。

ジョージタウンの商業施設のいくつかを保有する商用不動産デベロッパーのイーストバンク(EastBanc)でプリンシパルを務めるフィリップ・ラニアー氏は次のように述べている。「いつでも、人波はさらに人波を呼ぶ。このためブランドは、自分たちが理解できるような共同テナントを好むことが多い」。

同じ顧客層をターゲットに

こうしたD2Cブランドは、同じ層の買い物客をターゲットにする傾向があるブランドもあると、ラニアー氏は述べる。ジョージタウンが、大学の近くにあるという立地から、若い顧客層が確立されていることもある。ブランドは歴史的に、フィフスアベニューやソーホーのような大都市圏に押し寄せてきた。しかし現在では、多くのブランドが富裕層区域や新興都市を求めるブランドも同様に増えている。

この地区におけるテナントとアクティビティの混在も、訪問客の滞在時間を長くしている。パンデミック前のジョージタウンの訪問者は、平均で1時間半以上もこの地域に滞在する傾向があった。現在では、日中のラッシュと夕方のラッシュの両方が見られると、ジョージタウンBIDのブロデリック氏は述べている。

グロシエがジョージタウンの訪問者に門戸を開いたとき、同ブランドを訪れる人々がブロックに列をなしたと、同社のグローバルマーケティング担当シニアバイスプレジデントを務めるクレオ・マック氏はメールで語っている。

同氏は次のように述べている。「この地区、特にMストリートは、何十年にもわたって小売業者のハブとして地元の人々、大学生、専門職の若者、そして全世界からの観光客を楽しませてきた。ジョージタウンに店舗を開設するのは、二度と同じ日がないという点で、そして、我々の店舗のドアをくぐる非常に多種多様な人々のすべてがグロシエへの熱意と関心を共有しているという点でも、ほかの小売店舗とそれほど変わるものではない」。

街としての魅力

さらに、ジョージタウンには地区のトラフィックを増やすために役立つアクティビティやイベントもある。運河を舟で巡るツアーもあり、昨年はフレンチマーケット(French Market)やジョージタウングロー(Georgetown GLOW)など5つの大きなイベントを開催した。これらのイベントにより「すべての人々の収益を数%増やすことができる」と、ブロデリック氏は語る。

ジョージタウンBIDによれば、この地区には旅行かばんブランドのアウェイトラベル(Away Travel)も近日中に店舗を開設する予定だ。

ブロデリック氏は次のように述べている。「ジョージタウンは名前が認知されている。ジョージタウンは全国的に見ても、ブランドが市場に参入するのに、依然として非常に重要な名前だと、私は考えている」。

[原文:‘A crowd draws a crowd’: Why DTC brands are seeking a spot in D.C.’s Georgetown neighborhood]

MARIA MONTEROS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Sam Kittner / Georgetown BID

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