「SJ(サラ・ジェシカ・パーカー)は一着の服に合う靴を8足も試着する」:『セックス・アンド・ザ・シティ新章』シーズン2の衣装デザイナーが語る

DIGIDAY

「セックス・アンド・ザ・シティ(Sex and the City)」25周年を記念して、ニューヨークで4日間にわたってオリジナルの衣装やセットのレプリカを展示するポップアップが開催されたのに続き、同番組のスピンオフである『And Just Like That…/セックス・アンド・ザ・シティ新章(And Just Like That…)』がシーズン2として帰ってきた。

6月22日のプレミアを前に、この番組の衣装デザイナーであるモリー・ロジャース氏とダニー・サンティアゴ氏のふたりに、8時間かかるフィッティングやサラ・ジェシカ・パーカー氏の膨大なキャリー・ブラッドショーのアーカイブ、そしてAIスタイリングの未来になどについて話を聞いた。

ーーポップアップのためにアーカイブを再訪するのはどんな感じだった?

ロジャース氏:「幸運なことに、通称『ロジャー』と呼ばれているベルトを手にすることができるショーがあった。俳優のひとりに会うのを楽しみにしているのと同じくらい、多くの人がそのベルトを実際に見るのを楽しみにしている。みんな(ファッションを)とても身近に感じていて、心から大切に思っているし、そこには本物のつながりがある。(キャリー・ブラッドショーが)どこで何を着ていたかをみんなが知っていて、人々の人生におけるまさにひとつの記念碑となっている」。

(サラ・ジェシカ・パーカー氏のアーカイブは)本当にすばらしい。箱を開けると、キャリーが『(ジミー)チュウ(Jimmy Choo)をなくした』スタテン島のあの靴がある。その靴を買ったときに自分がどこにいたかを思い出すから、とても感慨深い。キャリーの最初の高価なドレスは800ドル(約11万円)だった。(オリジナル・シリーズの衣装デザイナーだった)パット(フィールド氏)と私は『ヒイイ!』ってなったのを覚えている」。

ーーどういう仕組みになっているのか? サラ・ジェシカ・パーカー氏は購入されたものを保管してアーカイブしているのか?

ロジャース氏:「購入したものなら彼女が保管し、借りたものならもちろん返却する。シャネル(Chanel)が『ああ、そのベルトは彼女にどうぞ』と言うこともよくあった。だが、大きなアイテムはローンだ」。

ーー(このシリーズの衣装を幅広く記録したインスタグラムアカウントの)@everyoutfitonsatcのようなソーシャルメディアアカウントの出現についてどう思うか?

ロジャース氏:「意地悪なものでない限り、どれもおもしろいと思っている。みんなが楽しんでいる限り、この番組をこうして俯瞰して眺めることができるものが存在するのはすばらしい。この(@everyoutfitonsatcを運営している)ギャルたちは、ダニーと私が話したパネルを主催してくれた。そういうのはとても楽しいし、私自身は(このシリーズを初めて観たときの体験をインスタグラムで記録している)ブラッドショー・ボーイズ(The Bradshaw Boys)をフォローしている」。

サンティアゴ氏:「登場人物だけでなく、ファッションに対してもこれほど多くの人にとってたくさんの思い入れがあるというのが驚きだ。この番組ではファッションがひとつのキャラクターなので、人々は新シーズンの新しい服装に投資しているし、シーンに登場する非常に多くの昔の衣装をまざまざと思い出すことができる。クローゼットの中に何かを置いたり、キャリーにまた例のベルトを着けさせたり、バゲットを持たせたりして、時々(過去を参照した)ちょっとしたイースターエッグを隠しておくのも楽しい。それがまさにファンをわくわくさせている」。

ーー25年の間に多くの変化があった。もし『SATC』が始まった頃にソーシャルメディアが流行っていたら、登場人物たちは服装のインスピレーションを得るためにソーシャルメディアを参照しただろうか? また現在、登場人物をスタイリングする際に、ソーシャルメディアを考慮に入れているか?

サンティアゴ氏:「その点についてはあまり考えてないかもしれない。でも、それが現代社会だ。我々はデバイスを通して生きている。インスタグラムやTikTokのおかげで、すべての人が同時に、瞬時にすべてを目にする。(SATCの)ガールズは現代の女性なので、やはりこれらのものを使うだろうね。誰もがソーシャルメディアの影響を受けている。インスタグラムがすごいのは、いままで聞いたこともなかったものを見つけられることで、SATCの登場人物も同じようにするだろうと思っている。世界の反対側にいる新しいデザイナーを発見するのはすばらしいことだし、テクノロジーのおかげで、人に連絡したり、物をリクエストしたり、誰かとつながることが容易になった。そういう意味で、我々の番組にとって非常に役に立っている」。

ロジャース氏:「ライターとしてのキャリーは、私と同じように、AIについて、そして人生のあらゆる部分にAIがどのように関与するかについて、かなり興味を持つだろうと思う。行き先を教えたらAIが服を選んでくれるようになるのだろうか? AIはシーズン3の衣装をデザインするだろうか? 何が起こるかわからない。想像すらできない!」。

ーー2021年のシーズン1から登場人物のスタイルはどのように変化したか?

サンティアゴ氏:「ストーリーは大きく変わった。(シーズン1では)葬儀を扱い、キャリーはその件を自分の人生で消化して本を執筆し、乗り越えていった。いま、彼女はそこから少し抜け出している。彼女はデートに前向きで、もう少し外に出ている。その影響が彼女の服装にも現れていると思う。セカンドシーズンのストーリーは、多くの意味でオリジナルシリーズにかなり近い感じがする。ガールズがよりアクティブになっている。そのおかげで衣装でいろんなことができたり、衣装でもっと遊べたりする場が増えた。多くの色を取り入れているし、多くのパターンをミックスしている。また、今回は春夏秋冬のすべてのシーズンを扱っている。昨シーズンは今シーズンとくらべると、冬と秋があまりなかった。おかげで今回はレイヤーやテクスチャー、パターンの組み合わせといった、たくさんのことを行っている」。

ーーフィッティングに8時間以上かかることも多いという話を読んだが、なぜそんなに時間がかかるのか?

サンティアゴ氏:「いろいろなアイテムを組み合わせたり、フィッティングを行ったりする際は、多くの場合、ふたつのエピソードを同時進行している。そのふたつのエピソードのなかには、8着から12着の衣装が含まれることもある。そのために必要な持ち込む衣装の量を考えると、30着ほどになる。それを8時間にわけると、本当に全然時間が足りない! 我々は時間をかけたいし、あらゆるものを見たいと思っている。サラ・ジェシカはすべてのラックに目を通し、何でも試着するし、こちらも実験をしている。新しいものを取り入れたいし、いろいろなもので遊びたい。いったん全部がそろったら、ようやく100本のベルトの中から1本のベルトを選び、50点のハンドバッグの中からひとつのハンドバッグを選ぶことができる。これが一連の流れで、あっという間に時間が過ぎる」。

ロジャース氏:「あの部屋は竜巻に襲われたような感じ。SJ(サラ・ジェシカ)は一着の服に合う靴を8足も試着する。一足ずつ持っていったりしないし、元の場所にも戻さない。いくつかのバッグの選択肢を見つけるために走り出す。アクション満載で、まるでスピードスタイリングみたい。クリスティンはふらっとやってきて、ぶらぶらするのが好き。一日中いることもある。彼女は急かされたくないと思っている。また何かをピンで留めるのにも、かなり多くの時間がかかる。胴の短い人に対応するときには、忍耐強くなければならない。SJがあるドレスを非常に気に入って、そのサイズが12号だったら、それを2号か4号に直す。それにもかなり時間がかかる。仕立て屋さんを急かすつもりはないんだけど!」。

ーーシーズン2でいちばん見てもらいたい特定のアイテムやルックは?

サンティアゴ氏:「撮影方法が大好きなアイテムがいくつかある。(リサ・トッド・ウェクスリー役の)メットガラ(Met Gala)用のすばらしいドレスがとても気に入っている。あの美しいロングトレーンのドレスを街中で目にするのはとても楽しかった。彼女は羽のついた大きなヘッドピースを着けて通りを横切る。(クリス・ジャクソン氏演じるウェクスリーの夫が)腕にドレスの裾をまとめて、彼女が通りを横切るたびにいちいち広げなくてはならなかったので、毎回5人がかりでドレスを広げてスカートのしわを伸ばした。あれは美しい瞬間だった。モリーと私が昨年の夏、ヴァレンティノ(Valentino)のクチュールショーで見たドレスだった。メットのシーンがあると知ったとき、我々は『リサ・トッド・ウェクスリーに着てもらうのにぴったりだ』と思った」。

ロジャース氏:「(HBOの)舞台裏ドキュメンタリーで私たちがケンカした要因になった帽子をキャリーがかぶっているシーンが楽しみ。ファンはきっとクスクス笑っちゃうと思う。シーズン1ではかぶっていなかったので、ファンは笑ってクールだと思ってくれるはず。今回はリベンジシーンとして、キャリーがそれを身につける」。

[原文:‘And Just Like That’ costume designers on Season 2’s fashion]

SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

Source

タイトルとURLをコピーしました