新幹線はどの席に座るのがベストなのか? 窓側、通路側、最前列、最後部……人によって好みは様々だろうが、これは先日、家族で最後部座席に座った時の話である。2歳の子供を抱いていた私(あひるねこ)は、そこで非常に気まずい思いをすることになってしまった。
きっかけは、新幹線の乗車マナーにおいてたびたび話題になるベビーカーだ。「なら自分には関係ないや」と思う人もいるかもしれないが、そんなことはない。新幹線を利用するすべての乗客が当事者になり得る話なので、ぜひご一読いただきたい。
・新幹線にて
本題に入る前に、まずはその時の状況を読者の皆さんと共有する必要があるだろう。なのでこれから、私の周囲で起きた出来事を時系列順につらつらと書き連ねていく。自分もその場にいるような気分で読み進めていただければと思う。
・登場人物その1
私と妻、そして現在2歳のあひるねこジュニアが座ったのは、車両最後部の3列シート窓側とその隣の席である(指定席)。窓側に妻、中央に私が座り、通路側は空いている状態だ。ジュニアは私の膝の上に載せていた。
・登場人物その2
出発から何駅目かで、3~4歳の女の子を連れた女性が車内へ。女の子を抱っこしたまま、もう片方の手でベビーカーを持っていた。駅に停車した際、窓から見えたその女性に対して妻が「一人だと大変だろうね」と同情していたためよく覚えてる。
車内に入ってきた女性は、持っていたベビーカーを車両最後部のスペース、つまり私たちが座っている3列シートと壁の間の隙間に置いた。位置的には誰も座っていない通路側席のちょうど真後ろだ。ベビーカーを置くと、女性はそこから2~3列前の2列シートへ。
その後、ジュニアが私に抱っこされたまま眠ってくれたので、リクライニングを倒して私も一緒に寝てしまった。一番後ろの席だと、気兼ねなくリクライニングできるのでいい。
・登場人物その3
それから何分ほど眠っていただろうか。ふと人の気配を感じて目が覚めた。新幹線はどこかの駅に停車しており、無人だった通路側の席にはいつの間にか40代くらいの大柄な男性が座っている。私はまだうとうとしながら、ジュニアの足が男性に当たらないよう自分の体の方に寄せた。
そのまましばらくボーっとしていたのだが、駅を出発して間もなく、隣の男性に “ある異変” が。席を倒そうとするも、何かに阻まれてまったくリクライニングできないのだ。「え?」みたいな感じで後ろを振り返る男性。原因は……そう、あのベビーカーである。
先ほどの女性が最後部スペースに置いたベビーカーの影響で、結果的に男性は限りなく直角に近い状態のシートに座ることを余儀なくされてしまった。何食わぬ顔でスマホをいじっているが、その心中は決して穏やかではないだろう。もしかしたらTwitter上でブチギレているかもしれない……。
さて、前置きが長くなったが、ここからが本題である。隣の男性に同情すると同時に、私は自分が置かれたとんでもない状況に気付いてしまったのだ。あれ? ちょっと待て。めちゃめちゃ他人事みたいに見てたけど、普通に考えたらこれ……
絶対ウチのベビーカーやん……!
・いきなり大ピンチ
繰り返すが、このベビーカーは前方に座っている女性のものであり、我が家のものではない。が、一連の流れをまったく知らない男性はどう思うだろうか? 幼児を抱っこした私と、その斜め後ろに置かれたベビーカー……。誰がどう見てもベビーカーを置いたのは私である。
しかも間が悪いことに、私も妻もほぼフルでリクライニングしてるからね。フル、フルときて、一人だけ直角だからね。俺らとんだ極悪ファミリーやないか。
男性からしたら、ベビーカーを置くのはいいけど、だったら自分たちの後ろに置けよと。なんでお前らだけフルでくつろいでんだよという話だろう。
あまりの気まずさに、そのまま寝たふりを続ける私。危なく男性に「これ、ウチのじゃないですよ」と耳打ちしかけたぞ。寝る前に缶ビールを飲んだせいか、途中で猛烈にトイレに行きたくなったのだが、ここで「サーセン」と男性にどいてもらう勇気は私にはなかった。耐えろ、耐えるのだ我が膀胱よ……!
その後、結局どうなったかというと、まず女性がベビーカーを持って先に降りたことで私の心配は解決。そしてその次の駅で男性が降りたことで、私の膀胱も九死に一生を得たのだった。やれやれ、これにて一件落着だ。いやぁ、今年イチの気まずさだったなぁ。
・どこに置くべき?
ただ、念のため書いておくと、今回の件は別に女性が悪いというワケではない。JR東日本の旅行予約サイト「びゅうトラベル」には新幹線におけるベビーカーの置き場所について、以下のように記されている。
「新幹線の場合、ベビーカー専用の置き場所は基本的に設けられていません。そのため、ベビーカーの赤ちゃんと新幹線に乗る際は、可能なら赤ちゃんを膝の上に載せ、畳んだベビーカーを車両最後部座席や最前部座席付近のスペースに置くようアナウンスされています」
つまり女性がベビーカーを後ろのスペースに置いたのは、JRの指示通りなのでまったく問題なし。むしろ最後部に座る人は、こういった事情によってリクライニングできない場合があるということを了承した上で席を予約する必要があるだろう。
かく言う私もあまり意識したことがなかったので、これを機に覚えておきたいと思う。
今回はタイミングの悪さがまるで『ぷよぷよ』の鬼連鎖の如く重なったことで、シャレにならないくらい気まずい思いをしてしまった私だが、おかげで乗客として大事な気付きを得られた。
もちろん中には「高い金を払ってリクライニングもできないなんて」と憤る人もいるかもしれないが、せめて新幹線に乗る時くらいは思いやりの心を忘れずいたいものである。