私たちは「出獄」できるだろうか

アゴラ 言論プラットフォーム

海外の反体制派中国メディア「大紀元」からニュースレターが届いた。そこに興味深い「見出し」を見つけた。「地球は監獄」というタイトルがついた未解決ミステリーだ。当方は残念ながらその記事を読むことはできないが、そのタイトルに新鮮な驚きを受けた。

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地球(NASAの公式サイトから)

地球といえば、「地球は青かった」というユーリイ・ガガーリン旧ソ連宇宙飛行士の言葉に代表されるように、太陽系の惑星地球は美しいというイメージがある。その一方、宇宙物理学者が「(人間が住める惑星は)われわれにとって結局、地球しかないのかもしれない」と呟いたことを思い出す。天体には無数の惑星、星座が観測できるが、「人類が居住できる場所はひょっとしたらこの地球しかないのではないか」といった砂漠での孤独な叫びのように響いた。

当方は「地球は監獄」というタイトルから聖書の「失楽園」の物語を想起した。人類の始祖は神の戒めを破ったために、「エデンの園」から追放されたという話だ。罪人となった人類が追放された場所が「地球」とすれば、美しい地球は「罪人が住む監獄」となったわけだ。イギリス人の指導者は昔、政治犯を含む悪人を植民地のオーストラリアに送り収容した。神は自身の戒めを守らなかった人類を「エデンの園」から追放し、流刑地の地球に住まわせたことになる。

その監獄で過去、紛争、対立、戦争が絶えなかったのはある意味で驚くことではないかもしれない。人類の出自が犯罪人となれば、その犯罪人が住む地球で戦いが起きるのはある意味で当然だからだ。「囚人の証明」だ。

重要な点は、如何なる重犯罪者であったとしても刑期が満了すれば、出獄の時を迎える。もちろん、それまで監獄で自身の罪を悔い改め、改心しなければならない。再犯する恐れがないと監獄の管理人に判断された囚人だけが刑期を終えれば、そこから出ていけるのだ。

神は囚人を見捨てることはせず、セカンド・チャンスを与える。そして囚人が本心に目覚めるように様々な宗教をつくり、囚人の再教育に乗り出す。旧約聖書の「モーセの十戒」もその一つだろう。モーセだけではなく、仏教や儒教など高等宗教といわれる宗教の指導者は必ず戒めを語る。その内容は驚くほど酷似している。人を殺すなかれ、姦淫するな、盗むなかれ、等々だ。

囚人は出獄できる日を夢見、罪から解放してくれる人物が降臨することを願う。イエス・キリストや釈迦などは囚人の再教育を担当した指導者たちだった。それらの教えを学びながら、囚人は、昔より今日、今日より明日、必ず良くなることを願いながら生きてきた。

そして囚人たちの間で「出獄の日」を迎えるために囚人の衣食住をオーガナイズする指導的な人間が出てくる。彼らは監獄では政治家と呼ばれる集団だ。政治家は囚人たちの願いを受けながら、それらを効率的に運営するための政治システムを考えていく。ただ、政治家の中には自身の利益を最優先する囚人が出てくる。そのため、小競り合い、紛争、時には武器をもって戦いが始まる。神はその度に「悔い改めよ」という叫びを宗教を担当する囚人たちを通じて告示してきた。

囚人の中には、より良いコミュニティを求めて様々な場所に移住する者も出てくる。ただ、移住は出獄ではなく、より良い監獄への移動を意味するだけだから、移住は繰り返される。20世紀以降、地球上では移住の世紀を迎えた。

移住は「出獄準備」の仮想的な行動だ。地球という監獄に住む囚人たちの中に「われわれはここから出ていかなければならない」といった集合的無意識に駆りたてられ、地球上で彷徨う。また、宇宙に新しい希望があると考え宇宙へエクソダスを願う人間も出てくる。「移住」も「出地球エクソダス」も基本的にはこの「出獄」を願う集合的無意識の覚醒がもたらした現象といえる。

いずれにしても、「出獄」の日が近づいてきたことは間違いない。宗教的な囚人はそれを「終末」と呼び、14万4000人の選ばれた囚人だけが「出獄」できると主張する囚人グループも出てくる。自分が他より早く出ていきたいといって「出獄」を待つ列で争いが生じる。

もちろん、「地球という監獄から出ていきたくない」と考える囚人の群れも現れてきた。彼らは神の戒めなど不必要と豪語し、監獄に自分たちの世界を作り、そこに君臨しようとする。

21世紀も既に23年目を迎えた。「出獄を目指す群れ」と「監獄の主人に君臨することで満足する群れ」とに分かれきた。羊とヤギを分けるように、「地球の監獄」では囚人の間で最後の振るい分けが進められてきているのだ。

世界の指導者たちは悔い改める年となるだろうか 各首脳SNS・各政党HPより(編集部)


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年1月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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