巨大テック企業GoogleはOOHおよびソーシャル広告で自社ブラウザChromeを販促し、人気急騰中のモータースポーツ、F1のファン層へのリーチを狙っている。
10月21日、テキサス州オースティンで開催されたF1アメリカグランプリ中、同社は空港および同地でのコンサート諸会場に広告を掲げるとともに、サーキットに観客を連れて行く送迎シャトルバスにもラッピング広告を行なった。さらに、Google Chromeのブランドを前面に押し出したデジタル広告をソーシャルメディアに打ち、オンサイトアクティベーションも実施した。
「F1ファンとの間に親和性を築いていきたい」
「弊社のブランドとF1ファンとの間に親和性を築いていきたい」と、Googleのプラットフォームおよびエコシステムマーケティング部門グローバルVP、エイドリアン・ロフトン氏は話す。「オースティンGPでは、Chromeの速度と性能を明示する魅力的な体験を介して、オンサイトおよびオンライン双方のF1ファンと繋がり、彼らのブランド認知を促すことで、同ブラウザの利用およびブランド愛の増進を図った」。
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今回のキャンペーンにGoogleが割いた額については、ロフトン氏が具体的な数字を明かさなかったため、定かでない。マーケティング/コンサルティング企業、カンター(Kantar)のデータによれば、同社は2022年度これまでに2億400万ドル(約286億円)をやや上回る額を広告に投じている。ロフトン氏いわく、OOHとデジタル広告にかける割合は半々だという。
オンサイトでは、集まったファンに向けて、マクラーレン(McLaren)およびChrome関連のトリビアクイズをデジタルクリエイターでポッドキャストホストのジェシカ・スメタナ氏に出題させ、正解の景品として限定品およびギフトバッグを用意した。
さらに、F1ドライバーのランド・ノリス氏が登録済みの支払情報を使い、ほんの数秒という、F1のピットイン時間に匹敵する速さで購入を完了してみせるという、Chromeが謳うスピードの実演も行なった。ノリス氏はGoogle ChromeのTwitter、YouTube、インスタグラムそれぞれのアカウントにおける計3つの短尺ソーシャル広告にも登場している。
米国で人気が高まるF1
「世界屈指の観客/視聴者数を誇る、そして最もハイテクなスポーツとこうした関係性を構築することで、誰もが気軽にアクセスできる、いわばみんなのブランドであるGoogleに、普段のそれとは一風異なる顔を見せる、効果的なスポットライトを当てられる。彼ら巨大テック企業がこぞって、来たるWeb 3革新時代、我こそは信用に足るハードウェア生産者であり、業界の牽引者なのだと、必死にアピールしようとしているいま、これは非常に有効だ」と、ブランドエージェンシー、ジェネラル・アイデア・エージェンシー(General Idea Agency)のCEO/創業者イアン・シャツバーグ氏は評する。
F1は近年、特に米国の若年視聴者の間で人気を高めている。同国のF1平均視聴者数は、2018年の50万人から、2022年は150万人近くに急増した。さらに、2021年の同じくテキサスで開かれたアメリカGPは、F1史上最大の観客を集めた。
「F1人気が米国で高まっている現状況におけるマクラーレンF1チームとの提携は、機を見るに敏と言える行動だ。これによりGoogleは、巨大なオーディエンスにリーチできると同時に、実験的およびデジタルマーケティングのトレンドセッターという地位も維持できる」と、SaaSおよびオンラインビジビリティ分野を牽引する企業、セムラッシュ(Semrush)のブランドマーケティング部門VP、オルガ・アンドリエンコ氏は評する。
信頼のおける形で消費者と繋がる
Chromeは、登場から15年たった現在もなお、世界で最も人気の高いブラウザだ。だが――ロフトン氏が言うように――Googleはそれでもなお、「より多くの人を、このパーティに招き入れたい」と考えている。
「そのためには、最新カルチャーに関連する瞬間および場に顔を出し、新たな、信頼の置ける形で消費者と繋がる必要がある。そうすることで、我々は世界中の人々と、特に次世代との間に、より固い絆を築いていける」と、ロフトン氏は話す。
Julian Cannon(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)