Meta Quest 3Sレビュー:約5万円でVRに必要なことがほぼすべて揃う

XRデビューしたい方への最適解かも。

10月15日に発売したMetaメタ)によるXRヘッドセット「Meta Quest 3S」。去年登場したQuest 3の廉価版モデルという位置のこのヘッドセットは、4万8400円という値段と優れた性能で非常にお買い得なもののようです。

そんなMeta Quest 3Sを米Gizmodo編集部がレビューをしています。はてさて、米Gizmodoはお買い得と感じたのでしょうか。


Meta Quest 3S

これは何?:Meta Quest 3でできることほぼすべてができるVR/MRヘッドセット。しかも約3万円安い。スペック面ではレンズと視野角は劣ります。

販売価格:128GBモデルは4万8400円 、256GBモデルは6万4900円。

好きなところ:優れたハンドトラッキングと安定したパススルー機能、Steamからもスムーズにゲームを遊べる、5万円弱でこれほどのヘッドセットは買えない。

好きじゃないところ:箱から出してすぐ使えるわけではない、フレネルレンズは細部がぼやける、IPD(瞳孔間距離)調整が3段階と制限がある。

Meta Quest 3Sは、Quest 2にQuest 3のパススルー機能やアップグレードされたソフトウェアが追加されたものといえるでしょう。さらに手頃な価格で手に入れやすくなっています。

Quest 3Sの性能と価格こそ正に「エントリークラスのVR」として最適といえます。

最高の画質でVRを楽しめるというわけではありませんが、ゲームをプレイするにはまあこれがあれば事足りるといえるでしょう。特に高性能のPCがあればほかに必要ありません。

上位機種に位置する8万1400円のQuest 3を十分に使い込んで、VRという領域自体にまだ限界があることを知りました。たとえばメタバース関連はまだ未成熟な市場と言えますし、YouTube動画や動画配信サイトの映画を観るために何時間もゴーグルを装着し続けるのは苦痛を感じたりもします。さらにいえばパススルー機能も便利ですが、現状用途は限定されるはずです。

こうした事柄は、たとえそれがQuest 3であっても、あるいはさらに高価なApple Vision Proだとしても当てはまることでしょう。それならば、十分に活用できて一番安いものでVRを試してみてはいかがだろうか、と思うのです。

Meta Quest 3Sに約5万円を支払う価値はあるのか

meta-quest-3s-review-003-02
Photo: Adriano Contreras / Gizmodo US

Meta Quest 3Sは、最高にお買い得なVRヘッドセットといえます。

上位機種のQuest 3と比べて、ハンドトラッキングは同等の性能で、パススルー機能の画質は劣るもののゲームをしている最中に気になるほどではありません。

さらに、Quest 3Sには2025年4月30日までの購入特典としてVRゲーム『バットマン:アーカム・シャドウ』とゲームサブスプリクションであるMeta Quest+の3カ月無料トライアルが付いてきます。Meta Quest+はゲームカタログから毎月2本の無料タイトルが楽しめるというもので、そのゲームタイトルが気に入るかはその人次第ではありますが、少なくともゲームを試せるというのはいいことです。

そしてSteam Linkアプリを介してより多くのVRゲームタイトルも遊べます。さらに、より高い性能のPCを持っていれば、スペックを求められる『Half-Life: Alyx』などのゲームにも没頭できるわけです。

[embedded content]
Video: Meta Quest / YouTube

Xbox Games Pass Ultimateのサブスクリプションをお持ちの場合は、非VRゲームを大きめの仮想モニターで遊ぶことも可能です。さらにHDMIリンク機能を使えば、Windows PCやMacBookを同様に大画面で表示できます。

Quest 3Sを検討している方には、 4万8400円で128GBモデルを買うか、6万4900円で256GBモデルを買うか、という問題があります。たとえば大作アクションRPGの『Asgard’s Wrath 2』のようなタイトルでは約33GBの容量が必要になります。これは現在入手できるゲームで最大の容量でしょう。

とはいえ、一度にたくさんのゲームを遊ぶといった場合でない限り、特に初心者であれば128GBで十分だと思います。現在はQuest 3が518GBモデルで8万1400円に値下げされているので、最初から容量が必要だとわかっているのでしたらいっそのことこちらを検討するのもオススメです。

1つ注意事項があるとすれば、現時点ではMeta QuestでXR体験をしていると、次第にプレイするゲームややることがなくなってくる可能性があるということです。たとえばMetaが魅力的な新機能を追加したり、あるいはサードパーティ製の興味を惹かれるVRゲームタイトルが今以上に登場したり、そういったことがなければQuestは一旦棚に戻されることになるかもしれません。

それでも「一度VRやMRを試す」という目的のためでも約5万円を支払う価値はあると思います。そしてその目的は、より高性能なヘッドセットを求めなくても果たされるのです。むしろ現在購入できるヘッドセットのなかではQuest 3Sが最も適しているといってもいいでしょう。

デザインと使いやすさ

meta-quest-3s-review-001
Photo: Adriano Contreras / Gizmodo US

デザインでいえば、Quest 3とQuest 3Sは外側のカメラとセンサーの配置を除けばだいたい似ています。

Quest 3Sでは、Quest 3に搭載されていた空間を把握するための深度センサーはありません。3Sにはそれを補うために赤外線イルミネーターが搭載されています。UploadVRが検証した結果では、これにより低照度環境下でのトラッキング精度は3Sのほうが優れているとのこと。技術面の話として興味深いですが、いずれにせよ暗いところでQuestを使用すべきではないでしょう。

これらのQuest 3とQuest 3Sの違いについて、要点としてはハンドトラッキング精度にはさほど違いを感じなかった、ということです。

一方でQuest 3とQuest 3Sの間で興味深い違いもあります。

たとえば3Sには専用のアクションボタンがあり、3.5mmのイヤホンジャックはありません。デフォルトの接顔部や3点式のヘッドストラップはほぼ同じです。これらの装着感は多少締め付けられる感覚もあります。が、かなり軽量なこともあり、最大2時間半駆動のバッテリーがもつ間に不快感を感じるほどではありません。

Quest 3ではIPD(瞳孔間距離)をスライダーで調整できますが、Quest 3Sでは調整は3段階で切り替える設計となっています。これはQuest 3のほうがよりユーザー一人ひとりに最適な設定ができることを意味していますが、個人的には3Sで最適な位置を見つけられました。

Quest 3Sの特徴として、上位のQuest 3のすべてのアクセサリーとの互換性がある点も挙げられます。またQuest 3Sには、同梱としてメガネを掛けている人向けの眼鏡スペーサーが付属しています。ちなみにレビュー機にはEliteストラップや携帯用ケースはありませんでしたが、3S用の通気性のある接顔部は付属していました。

レビュー中に何度か外出してみたときはバックパックで持ち運びましたが、その際に外側のカメラやセンサー、あるいはプラスチック部分に破損などは見当たりませんでした。とはいえ、実際に購入して持ち運ぶ場合は、なにかしらのケースを用意しておくほうがいいでしょう。

コントローラーはQuest 3と同じTouch Plusコントローラーです。TruTouch可変ハプティクスも全く同じで、軽くて快適で機能も十分です。個人的にはコントローラー自体がもう少し重いほうが好みです。が、PlayStation VR2のリングデザインのコントローラーにあったようなかさばる感じがなく、手にフィットしたのはよかったですね。

パフォーマンスとプレイアビリティ

meta-quest-3s-review-002
Photo: Adriano Contreras / Gizmodo US

Meta Quest 3と3Sの違いとして重要な点にレンズ視野角があります。

Quest 3のパンケーキレンズに対して、3Sはフレネルレンズとなっています。Quest 3は片目当たりの解像度が2,064×2,208であり25ppd(視野1度あたりのピクセル表示)です。Metaによればこれは4K解像度に相当する画質になるとのこと。

対してQuest 3Sでは、解像度は1.832×1.92020ppdです。ここで注目すべきは、3SはQuest 2と同じディスプレイでQuest 3と同じ筐体に移植されたようなものであるということです。

視野角については、Quest 3が水平110度であることに対してQuest 3Sは水平96度となっています。両方のヘッドセットを交互に使って比較するとデバイス間の視覚的な違いがわかります。たとえばテキストの表示が多少見づらかったり、視野の端の部分で歪みが見られます。

と、まあさすがに品質はQuest 3のほうがいいのは当たり前ですが、2つの最大の違いとして感じたのは、適切に見えるようになるまでにかかる時間でした。

Quest 3Sの場合、接顔部やストラップをある程度調整する必要があるわけです。また、動画視聴では普通のLCDディスプレイよりもぼやけて見えることもあるのですが、Quest 3ではこのあたりはよりきれいに見えます。

パススルー機能については、Quest 3のほうがやはりきれいに見えました。一点特徴をあげるとすれば、Metaのヘッドセットに共通することとして少し暖色系の色味が強いように感じましたね。

meta-quest-3s-review-003-05
Photo: Adriano Contreras / Gizmodo US

とはいえ、実際にVRゲームを遊び始めるとレンズの違いは関係ないと感じました。

Quest 3SはSoCに、Quest 3と同じQualcomm Snapdragon XR2 Gen2を搭載しています。5万円弱のヘッドセットとしては精細に見えますし、基本的にQuest 3を同じように感じます。

また、Questでのゲーム体験はピクセル数自体よりも優れたアートスタイルによる部分大きいと感じます。

たとえば先述の『Asgard’s Wrath 2』は、独特のキャラクターデザインと素晴らしい忠実度をうまく活用した魅力的なアクションRPGです。こちらはMeta Quest+のトライアルで遊べます。

さらに、10月のMeta Quest+の無料ゲームである『Down the Rabbit Hole』はVR空間内でユニークな操作ができるクリエイティブな謎解きパズルゲームです。

ほかにもSteam Link経由でゲームを遊んだりもしました。そのときにQuest 3と比べてわずかに狭くなった視野角も特に気になりませんでした

購入特典である『バットマン:アーカム・シャドウ』はプレイできていないので評価できませんが、短いデモ版を試した際にはQuest 3Sで視覚的な欠陥など感じませんでした。

ゲームについていえば、Quest 3で動作するものは基本的にQuest 3Sで同様に遊べます。つまり、基本的にゲームを楽しむためなら安価なQuest 3Sを選んでも問題はないといえます。

VRヘッドセットで映画や動画を観たいという方はQuest 3を検討したほうがいいと思います。ただし、VRでの映画体験はどれを選んだとしてもまだ完璧ではありません。

Meta Quest 3Sのレビュー総括

meta-quest-3s-review-004
Photo: Adriano Contreras / Gizmodo US

Sony(ソニー)がPS VR2とPCを接続するアダプターを発表したとき、いろいろな人に「PC VRゲームをやってみたいけど、そのためにPS VR2を購入する価値があるだろうか」と聞かれました。

このPCアダプターによりPS VR2の売上は急増しましたが、多くのユーザーがソフトウェア互換性などの問題にぶつかりました。とはいえ、この件によって「VRゲームを楽しみたくて、かつ安価な方法を探している」という人が潜在的に結構いるという証明にもなりました。

そんな安価な方法であるMeta Quest 3Sがより多くの人をVRに惹きつけるかどうかはわかりません。それでもMetaが、Quest 3の発売から1年の間で出した改良点を犠牲をほぼ抑えながら詰め込んだのは素晴らしいと思います。さらに約3万円安くできたこともですね。

改めて、Quest 3SがVR入門デバイスとして最適か、という問いに対しては、もちろんと答えられます。それだけでなく、最高の画質を望まない限りは、この価格で購入できる最高のヘッドセットかもしれません。

しかしながら、まだまだ発展中で不安定であるVRやMRなどのXR市場がこれからどのようになっていくかはわかりませんし、それはまた別の問題だとは思います。

タイトルとURLをコピーしました