生き残るために化けてやる。動物たちの超絶擬態テクニック

気配を殺すこと。それは生き延びるための手段。

獲物も捕食者も、自分をいかにカモフラージュできるかが生死を分けます。食うか食われるかで代を重ねるうち編み出された超絶技巧の擬態テクニックを7つ選んでみました。

色覚の弱さを逆手にとる

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画像左)赤と緑の色盲だとこう見える/右)青・緑・赤の三色見える人にはこう
Graphic: Journal of the Royal Society, Fennell et al. 2019

虎の毛は目にもあやなオレンジ色。

よくあんな色で獲物に悟られないよな、と思いきや。獲物の圧倒的大多数は色を識別する能力が高くないので、左の写真みたいに見えてるんですってよ?(ソース:2019年の研究論文

有蹄動物(シカ、イノシシなど)の多くは緑と赤の区別がつかないので、虎のオレンジ色も森の緑に溶け込んでしまうというわけ。

どのみち哺乳類の毛は色のバリエーションが少なくて、せいぜいが茶、黒、赤、黄とその中間色です。 人間の目には派手派手に見えても、獲物の目にはこ~んなに地味に見えてたんですね!

忍者ヒラメ

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クリムトの絵みたい。砂、サンゴ、岩。いかようにも姿を変えられる
Image: Wikimedia Commons

続いて、孔雀ヒラメ(Bothus mancus)。背を覆う青の斑点が孔雀みたいですよね。生息地のインド太平洋のサンゴ礁の色彩に合わせて進化した種です。

ほかのヒラメのなかには、斑点を変えられるヒラメも結構いて、2017年の論文によれば、ヒラメはほぼすべての背景に合わせて斑点の「色と輝度」はもとより、「サイズ」まで調整できるんだそう。大きな岩はムリだけど。

こんだけ平べったいと、いざというときには、こうやって海底にドロンできますしね。

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Video: Timz Low / YouTube

木や葉っぱになる

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Image: Shutterstock

木や枝、葉になり切ってしまった種もいます。総じて「ファズマトデア」。日本語で「ナナフシ」。

体長60cm以上ある世界最大の昆虫もナナフシだったりするので、やっぱり木になりきるのは効果絶大なんでしょね。だって上の写真の生物にしても、擬態の頂点ムラサキシャチホコにしても、葉っぱにしか見えないもん。どんなに巨大でも素通りしちゃうよね。

カウンターシェイディング

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画像ヤギ科のアイベックス。3頭いるよ(撮影地・ウェストバンク)
Photo: Wikimedia Commons

上が黒くて下が白い。そういう種、いっぱいいますよね。

あれは上から見ると暗い深海や陸に溶け込んで見えて、下から見上げると明るい空に溶け込んで見えるカモフラージュ技で、一般に「カウンターシェイディング」と呼ばれるもの。数ある擬態のなかでもメジャーなもので、古くは恐竜の時代からあった技です。

上の写真は岸壁をぴょんぴょん飛び跳ねて渡るアイベックスなんですが、岩の日陰と日なたに完璧にマージしちゃってますよ?

岩になったタコ

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Image: Shutterstock

タコちゃんが使うのは、皮膚の奥の方にある色素胞。これで周囲の色を読み込んで、自在に自分の色・形・サイズを変えます。ゴツゴツしたサンゴ礁はもちろん、砂の海底の質感まで模倣できるんだから最強です。万策尽きたら、移動・呼吸・排泄用の穴から墨ビューン。

タツノオトシゴは擬態も神秘的

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わかめ?いえいえ、タツノオトシゴです(シェッド水族館・シカゴ)
Photo: Wikimedia Commons

タツノオトシゴはオスが出産する珍しい種。魚類のなかでこれだけ掴まえやすい尾を持ってるのも、同族のパイプホース、シードラゴンぐらいです。

で、その弱点をカバーするかのように擬態力は異様に発達しました。サンゴ、藻草、なんでもOK。水族館でも気づけないレベルです。

海の生霊

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ある意味、カモフラージュの最終進化形
Screenshot: Nature Picture Library / YouTube

最後のエントリーは、透明すぎるエビとして有名なフクロウミノミ(Cystisoma)ちゃん。生息地が水深90~300mで、まだ光が入るので、透明になる進化の道を選びました(もっと深海なら、普通は暗い色に進化するのだけど)。

最近の調査では、殻の表面にバクテリア状の構造が見つかって、これが光の反射を抑えていることもわかってます。色があるのは赤い卵巣部だけ。殻も透明なら内臓もほとんど見えません。

溶け込めないなら消えてやる。気配を殺して行き着くところまで行き着いた感がありますね。

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