先に言ってあえてハードルあげますが、これ面白いです。難しいことはよくわからないけど、聞いているだけでワクワクしちゃう科学のお話です。
見ず知らずの宇宙人と待ち合わせするならどこ?
もし、宇宙人と待ち合わせするならどこにしますか? やっぱりわかりやすいスポットがいいですよね。地球に来るのは初めての宇宙人かもしれませんから。
スカイツリー? ブルジュ・ハリファ? 万里の長城、は長すぎて会えないかな? いっそ国際宇宙ステーションがわかりやすいかもしれません。
こうやって考えると「宇宙人と待ち合わせ」という突拍子もない前提であっても、誰にとってもわかりやすい場所を指定するのが待ち合わせの基本です。
知っている相手なら、お互いの行きつけのお店や思い出の場所などの共通点。初めて会う人なら、誰でも知っている目立つ場所や駅など。では、会う約束すらしていない、約束する術がない場合はどうでしょう。
いつどこで会うという約束すらしていないまだ見ぬ宇宙人と、もし、相手も会いたいと思ってくれている場合、最も落ち合える可能性が高いのはどこなのでしょう。
この問題に取り組んでいるのが、地球外知的生命体探査(SETI)の研究チーム。待ち合わせ場所として有力なのは…、超新星です!
研究チームが待ち合わせ有力場所を考察するのに活用したのは「シェリングポイント」という概念。
シェリングポイントとは
シェリングポイントとは、ノーベル賞受賞の経済学者トーマス・シェリングによる考え方。連絡手段がない場合にどうやって相手と落ち合うか。「こういう時ってだいたいこうするよね」という、人が相手に求める期待値をもって、自分と相手との期待値が合わさる焦点、それがシェリングポイントです。
スマホがなかったらどうする?
ここでちょっと1回、宇宙人のことは忘れましょう。もっとシンプルに、地球人の日常で考えてみましょう。
スマホがある現代社会では、連絡なんていつでもできます。なので、「とりま起きたら連絡して」とか「〇〇駅ね、ついたらメッセくれ」ってのが日常かもしれません。
が、もしスマホがなかったら。スマホ以前に連絡手段がゼロだとしたらどうしましょう。相手とどうやって落ち合うのか、ここがスタートです。
例を挙げるなら、遊園地。朝から遊びまくって写真撮りまくってSNSにポストしまくった夕方。一緒に来ていた友人と園内ではぐれてしまいました。あなたのスマホは電池切れ。周辺を探してもいない、最後に乗ったアトラクション周辺にもいない。あなたなら、次はどこにいきますか?
友人の性格や一般常識、自分ならどうするかを考えて、1番ありそうな場所に向かうでしょう。向かうのは、遊園地のエントランス。車で来場していたら車かな。
この場合、シェリングポイントはエントランスか車となります。
これがニューヨークの街ならグランドセントラル駅やタイムズスクエア、渋谷ならハチ公前が一般的なシェリングポイントとなるでしょう。
シェリングポイントで出会える保証はありません。あくまでも、会える可能性が高いかもという話。
この可能性を宇宙にまで広げたのが、SETI研究チームの超新星というアイディアです。
超新星は宇宙人と人類共通の目印になりそう
宇宙人に会いたい。地球外生命体を探し続ける我々地球人ですが、その裏には宇宙に住む生物は私たちだけではないはずという思いがあります。文明をもつ生物も私たちだけじゃないはず。そして、きっと相手も会いたくて会いたくて震えてて、こちらを探してくれているはず。
私たちも相手も会いたいのに会えない。だって、宇宙は広いから。そこで、シェリングポイントの登場です。
私たち地球人とまだ見ぬ宇宙人のシェリングポイントはどこになるのか。
珍しくて、広大な宇宙の遠くからでも見つけやすくて、注目されやすい目立つもの…。スーパーノヴァ、超新星です。
実は、これ新しい論ではなく1990年代にSETIの科学者Guillermo Lemarchan氏が提唱したもの。さらに、Lemarchan氏は超新星の中でもSN 1987Aが怪しいと提案。
1987年に発見されたSN 1987A。大マゼラン雲内にある超新星で、地球の16.4万光年先にあります。
SN 1987Aで待ち合わせ
Lemarchan氏の研究に触発されたSETIチームは、SETI、バークレーSETIリサーチセンター、ワシントン大学でタッグを組んで、地球とSN 1987Aの間で宇宙人からの光学ビーコン、または何らかのサイン(テクノシグネチャー)の検出を試みました。これにNASAのTESS宇宙望遠鏡のデータを活用。
そもそも待ち合わせの大前提となるのが、まず超新星の発生。そして、地球人と宇宙人の両者がこの超新星を発見していること。さらにお互いがお互いに文明と知力がある生命体であるという仮説のもとに、シェリングポイントという概念をもっていること。当然ながら、我々地球人側は前提クリアです。
空間と時を超えるコミュニケーション
地球とSN 1987Aの距離は、前述した通り16.4万光年。もし何かしらのシグナルをキャッチしても、それは何千年も前に送信されたものである可能性が高いことになります。
研究チームが解析したのは、GAIA初期データリリース3の位置情報1年分。そこから、TESS視覚内南部から32のメインターゲットを特定したというCabrales氏。このターゲットを観察し、テクノシグネチャー(人工的なシグナル)の可能性があるものを見分けることに挑戦。その結果、残念ながら1度目の観察ではめぼしい異常値は検出されませんでした。
が、まだまだ研究は始まったばかり。
SETIの科学者たちは研究論文でこう語っています。「これは、テクノシグネチャー的観点から、詳細の解析が必要だったり、もっと詳しく調べたいと思えるシグナルやデータ異常値を見つけ出す手助けになります」
プレスリリースにて、論文共同執筆者でありSETI科学者のBárbara Cabrales氏はこうコメント。「(TESSのデータを活用した)新たな調査によって、超新星を使ったテクノディグネチャーを探す画期的な機会がうまれます」
米Gizmodoが天文学教授Jason Wright氏に解説を依頼したところ、この試みについてこうコメントしてくれました。「私たちの意識をひくため、他の生き物はどのような同調計画を持つのかを検討するのは、リサーチすべき優先順位をつける上で非常に素晴らしいデモンストレーションですね」
SETIのこの研究に関する論文は、Astronomical Journalにて公開されています。