サブのワイヤレスイヤホンとして最高の選択肢。ソニー「LinkBuds」

GIZMODO

2022年2月16日の記事を編集して再掲載しています。

つけっぱなしで周りの音を聞きたいとき専用、という考え方。

Sonyが今までにないタイプのワイヤレスイヤホン「LinkBuds」を発表しました。ワイヤレスイヤホンはもう持ってるからいいよって思われるかもしれませんが、形からして他とは全然違います。米国での発売に先がけてしばらく使ってみた米GizmodoのAndrew Liszewski記者によると、既存のワイヤレスイヤホンと直接競合する位置づけじゃないってことなんですが、じゃあ何なのか? 以下、Liszewski記者です。


Sonyには、良い意味で変なプロダクトを実験してきた歴史があります。スベる実験もあれば、ほんとに便利でクレバーで革新的な製品になることもあります。新たに発売されたSony LinkBudsは、間違いなく後者です。今までのイヤホンを完全に置き換えるものではありませんが、実際手に入れると、結局こっちを一番多く使ってた…ってことになるかもしれません。

AppleのAirPodsによってワイヤレスイヤホンが(そこそこ)手頃なメインストリーム製品に変革されてから5年が経つ今、メーカーが何か新しい要素を打ち出さない限り、買い替えは起こりません。でもほとんどの場合、その「新しい要素」とは音質の改善とかバッテリーライフの延長、ノイキャン性能向上…といったこまごましたアップデートでした。でもLinkBudsは、そういう細かい改善は一切してません

Sonyが考えたのは、ユーザーがいつどんな風にワイヤレスイヤホンを使ってるか、仕事か、地下鉄か、街中か…ってことです。その結果、周りの音をはるかに聞き取りやすくしつつ、電話したり音楽やポッドキャストを聞いたりもしやすい新たなデザインを編み出しました。ニッチな製品みたいに聞こえるかもしれませんが、出来栄えが素晴らしくて、思いのほか使ってしまっていることに自分でも驚いています。

Sony LinkBuds

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これは何?:装着中に周りの音を聞きやすい、オープンスタイルなワイヤレスイヤホン

価格:180ドル(約2万1000円)

好きなところ:驚きの高音質、軽くて快適、「ワイドエリアタップ」機能が素晴らしい。

好きじゃないところ:価格がちょい高め、1日着けられるからにはバッテリーライフがもう少し欲しい。

周りの音を聞くための新アプローチ

今まで、イヤホンを着けてるときに周りの音を聞きやすくするにはふたつのアプローチがありました。ひとつは外音取り込みモード、これはイヤホンに内蔵のマイクで周りの音を拾ってその音を聞かせる、いわば補聴器のようなもの。もうひとつは骨伝導イヤホン、これは骨を通じて振動で音を伝える仕組みなので、耳をふさぐものがなく、外部の音もそのまま入ってきます。

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Image: Andrew Liszewski – Gizmodo US

SonyがLinkBudsで実現したのは、第3のソリューションです。耳に突っ込むスピーカードライバーの代わりに、直径12mmのリング型ドライバーを作り出したんです。

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Image: Andrew Liszewski – Gizmodo US

たいていのイヤホンは、外の音が耳に入らないよう工夫するものですが、LinkBudsは音が入りやすい作りになってます。なのでイヤホンを外さなくても、周りと会話し、後ろから来る自転車のベルを聞き、その間音楽やポッドキャストを聞けるんです。ただしこれは、再生する音が大きすぎない前提です。LinkBudsには穴が空いてますが、外耳道の入り口で音を出してるので、音量を上げれば周りの音は聞こえなくなっちゃいます。

小さなイヤホン、大きな音

穴が空いてること以外では、LinkBudsではその小ささも目立ちます。今まで自分が試した中で、間違いなく一番小さくて軽いです。

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AirPodsとの比較。(Image: Andrew Liszewski – Gizmodo US)

着けやすいワイヤレスイヤホンは?と聞かれるとき、Appleの第3世代AirPodsを勧めることがよくあります。耳の穴に深く入りすぎず、外側のくぼみにしっかりとどまるからです。ただAirPodsの場合耳に安定させにくい人もいるので、そういう人が快適さ重視でワイヤレスイヤホンを探す場合、LinkBudsは良い候補になります。

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固定のためのシリコンリングが5サイズ付属。(Image: Andrew Liszewski – Gizmodo US)

LinkBudsを耳に固定するのは、上の画像にあるように、ドーム型の部分に付けるシリコンのリングです。リングには弾力のある突起が付いていて、耳のくぼみの中に収まることでしっかりホールドされます。このリングは5サイズ付属してくるので、ホールドするけど長時間着けても痛くならない、ちょうどいいサイズを選べます。

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Image: Andrew Liszewski – Gizmodo US

自分に合ったサイズのシリコンリングを付ければ、LinkBudsは軽くて安定感もあり、快適なフィットで、運動中に飛び跳ねても大丈夫です。1日中着けておくためのワイヤレスイヤホンとしてはすごく大事ですね。ドーム型の部分には、1回の充電で5.5時間分のバッテリーが入ってます。充電ケース分も入れれば17.5時間のバッテリーライフです。

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Image: Andrew Liszewski – Gizmodo US

ただ、5.5時間は第3世代AirPodsよりも少ないです。LinkBudsはケースに10分入れれば90分相当の急速充電ができますが、もうちょっとサイズが大きく、重くてもいいから、バッテリーが大きいほうが良かったかなと感じます。

LinkBudsの位置づけは従来のワイヤレスイヤホンの代替ではなく、特定の使い方、たとえばつねに人から話しかけられるオフィス用のセカンダリのイヤホン、とされてます。音質に関しては、僕が音楽を味わうために使うイヤホンの音には全然及びませんが、それでもすごく良い音で驚いてます

LinkBudsの音はくっきりとクリアで、うるさいくらい音量を上げても歪みはありません。高音と低音のバランスも、デフォルトの設定でちゃんと取れてます。音のプロファイルは、Sony Headphonesアプリを使ってプリセットかマニュアルEQでカスタマイズできます。この点AirPodsより優位だと思いますが、LinkBudsにまったく欠けてるのは、あの低音のドンッとくる感じです。低音はたしかにあってちゃんと聞こえるんですが、感じられないんです。そこが多分、LinkBudsが払った最大の犠牲なのかなと思います。

タップ操作の新しい形

他のSony製イヤホンにもある機能ですが、LinkBudsには1日中装着するのに役立つ仕組みが備わっています。たとえば「スピーク・トゥ・チャット」。これはユーザーが話し始めると音楽再生が自動で一時停止して、話し終わって一定時間経つと再生を再開するものです。すごくうまくできてて、他のすべてのイヤホンでもぜひ使いたいです。

あと個人的に気に入ってる機能は「ワイドエリアタップ」なるものです。タップ操作できるイヤホンって、本体を触ることで耳から外れてしまうリスクもありますよね。僕はこういうタップ機能、今までいろんなイヤホンで試してはきましたが、個人的には使わないで、リモコンにするのはもっぱらスマートウォッチでした。

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耳の前をトントンっで操作。(Image: Andrew Liszewski – Gizmodo US)

でもLinkBudsのワイドエリアタップで、それが変わりました。LinkBuds本体を直接タップするんじゃなくて、耳の周りのどこかをタップすれば、LinkBudsがそれを検知するんです。ショートカットはSony Headphonesアプリで設定できますが、左耳の前でのダブルタップは音量アップ、トリプルタップは音量ダウン、右耳周辺タップは再生コントロール、といった具合です。タップの検知精度は、耳の前でも上でも下でも高く、かるーくポン、くらいでも検知されます。とにかくちゃんと使える機能で、本体のデザインよりもこの機能の方がウリにできるかもしれません。

買い替えるというより、買い足すかどうか

というわけでそろそろ、LinkBudsに買い替えるべきかどうかを普通なら書くところです。でもLinkBudsに関しては、ソニー自身が買い替え需要に向けた売り方をしてません。

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Shokzの骨伝導ワイヤレスイヤホンみたいに、AirPodsや他のイヤホンと一緒に持って使い分ける、という位置づけです。音は驚くほど良いですが、他のイヤホンに比べるとそこまででもなく、アクティブノイキャンもありません。LinkBudsにできるのは、誰かに話しかけられるたびにイヤホンを外さなきゃいけないことにうんざりしてる人をラクにしてあげること、または、よくある外音取り込みモードみたいな人工的な音じゃなく、周りの音を聞けるようにすることです。

LinkBudsはウリにしてることをしっかり実現しているし、ワイドエリアタップみたいな機能は他の製品にも搭載されてほしいです。ただ一番引っかかるのは、店頭予想価格2万3000円前後という価格。これが1万円台前半くらいになれば、セカンダリのワイヤレスイヤホンとしてオススメしやすくなります。とはいえ、僕は今在宅仕事ですが、もしオフィスで働くことになったら、今まで気に入ってたイヤホンよりもLinkBudsをよく使うようになると思います。なのでSonyは、そういう人にはLinkBudsがメインで、既存のイヤホンこそがセカンダリになるよ、という見せ方をしたほうがいいのかもしれません。

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