2021年12月14日の記事を編集して再掲載しています。
過酷、だけど美しい。
火星の平均温度はマイナス55度。大気のほとんどは二酸化炭素ですし、大気そのものが薄いために宇宙から降り注ぐ放射線から身を守る術はありません。人類にとって、火星環境はまちがいなく過酷。それでも火星から届いた画像や映像を見ると、やっぱりロマンを感じます。
今この瞬間にも人類は地球外で活動している
トップ画像は2012年から活躍しているNASAの火星探査機・キュリオシティから送られてきた最新の画像なんですが、実は合成着色されているそうです。NASAのプレスリリースによれば、火星の壮大な景観に心を動かされたキュリオシティミッションチームによる「芸術的解釈」の賜物だそうで、
異なる時間に撮られたモノクロ写真2枚を合成し、対照的な照明条件によって地形のディテールをより際立たせています
とのこと。
実際火星に降り立ったら、実眼で捉らえる光景は上の画像とは異なる可能性が高いそうです。それにつけてもこの鮮明さ、この豊かな質感…!今この瞬間にも人類が地球以外の太陽系惑星で活動していることをあらためて気付かせてくれます。
火星の高峰から彼方を望む
こちらの画像はゲール・クレーター中央に位置するシャープ山から撮影されました。シャープ山の標高は約5500メートル。富士山よりもずっと高いんですね。キュリオシティは過去にも何度かシャープ山を登って撮影しているんですが、高度が上がるにつれてその眺めはますます素晴らしくなるばかりです。
地平線のかなたにはゲール・クレーターを取り囲むリムが写っています。2000メートル級の山々が円環状に連なったリムは、その昔火星に堕ちた隕石のインパクトを物語っており、キュリオシティの位置からは30〜40kmほど離れているそうです。
他にも、中央右手のなだらかな砂丘に風によって作られた波紋が確認できます。手前右にせり上がって見える凸凹の地形は、最近急逝したキュリオシティチームメンバーの名を冠して「ラファエロ・ナバロ山」と呼ばれているそうです。
モノクロで撮影、色は再現
今回の合成画像はちょっと珍しいんだとか。
というのも、キュリオシティにはカメラが2台ついていて、よく目にする鮮明なカラー画像はマストの先端に取り付けられたMastCamで撮られたもの。それとは別にモノクロのナビゲーションカメラが搭載されており、稼働時には必ず360度のパノラマ写真を撮るのが習わしとなっています。主に安全確認のために撮られるので、地球へのデータ転送がスムーズにいくよう圧縮フォーマットで撮影されています。
でも今回キュリオシティがシャープ山に登った際にナビゲーションカメラが見せてくれたこの壮大な眺めは、ミッションチームの心をわしづかみに。そこで、特別に同じ場所から午前と午後に1枚ずつ写真を撮るよう指示を出したのだそうです。
時間差で写真を撮らせたのは、光の対照を際立たせたかったため。そこにブルー(朝)、オレンジ(午後)、グリーン(ふたつの合成)などの色が加えられ、「一日を通しての光の変化」を再現したそうです。
パーサヴィアランスのきらびやかなデビューとともに、ちょっと人気が下火になりつつあったキュリオシティ。でも、火星に降り立って9年が経った今でも、まだまだ現役です。