ポンペイ噴火跡で発見された骨を分析。市民の死因は窒息死だった

2,000年前の人たちの最期の瞬間。

イタリア、ナポリの古代都市ポンペイ。約2,000年前に大噴火で消えてしまった街ですが、遺跡研究チームは、調査した6体の死亡した理由は「窒息死」だったと結論づけました。

研究チームは、蛍光X線分析を使用してポンペイの犠牲者の骨の元素組成と、犠牲者の死亡時の姿勢の石膏の調査しました。この研究は、PLoS ONE誌に掲載されています。

バレンシア大学の考古学者で論文の共著者であるGianni Gallello氏は、米Gizmodoの取材に答えてくれました。

「今回の発見で、ポンペイのさまざまな地域に存在する石膏を扱う際のプロトコルを決定できる可能性があります。

また、ヘルクラネウムのようなヴェスヴィオ火山周辺の遺跡でも、同じ調査をしたほうがいいですね」

噴火で一瞬にして埋もれてしまったポンペイ

ヴェスヴィオ山の噴火で、灰・ガス・溶岩が混ざった火砕流が発生し、ポンペイの街はあっという間に埋もれてしまいました。最初の噴火で建物内に避難していた人たちは、超高温の火砕流で運ばれる灰のもっと下のほうに埋もれました。

バレンシア大学の考古学者でありこの研究の主著者であるLlorenç Alapont氏は、リリースでこう述べています。

「犠牲者の骨が火砕波とマグマ流の高温の影響を受けたときには、すでに犠牲者は死亡していたと考えられます。おそらく有毒ガスの吸引による死亡でしょう」

その後、灰は冷却され硬化し、その下に埋まっていた犠牲者の遺体は腐敗して骨だけが残りました。

時をさかのぼること19世紀末、イタリアの考古学者Giuseppe Fiorelli氏は、腐敗してなくなった遺体のまわりの火山灰の空洞に石膏を流し込む技術を開発。この石膏流し込みにより、犠牲者の顔、歯、さらには衣服のしわまで詳細に表すことができたのです。

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Photo: Gianni Gallello

ヴェスヴィオ山の噴火で、多くのポンペイの住民と隣接するヘルクラネウムの住民が一瞬で亡くなってしまったのですが、その死因については長く議論されてきました。

2020年、研究チームはヘルクラネウムの犠牲者の1人の脳組織がガラスに変化していることを発見。おそらく噴火の熱によるものだったと主しています。

最新の調査での発見

しかし、最新の研究チームの発見で、多くの住民が火砕流によって引き起こされる窒息で死亡したという説のほうが濃厚だと考えられています。

研究チームはポンペイのポルタ・ノラ地区から、6つの石膏とテルメ・スバーバネから1つの石膏を分析。

ポルタ・ノラ地区の個体は、その当時街から逃れていた人たちで、火山噴出物の破片で覆われた地形を進んでいたとされています。研究チームが調査した個体の少なくとも1人は、枝を杖代わりに使っていたことがわかっています。

埋もれた骨から採取された元素データでは、流し込まれた石膏によって、一部の骨の元素プロファイルに影響があったことが示されていました。

重要な発見としては、チームが調査した遺体の石膏の多くは、極端な熱にさらされる際に人間が取る「ボクシングポーズ」になっていないことがわかりました。このポーズは、体が脱水し、熱にさらされた後に筋肉が収縮することで起こる人間の姿勢で、ボクサーの姿勢に似ていることからつけられた名前です。

チームによると、調査した石膏の遺体があった地域のガスと灰の混合物は極端に高くはなかったものの、数分以上は呼吸ができない状態だったようです。すでに窒息死した遺体に、火砕流で運ばれてきた灰の熱の影響があったと研究チームは述べています。

将来的には、今回使用した蛍光X線分析(pXRF)によって、ローマの遺跡を傷つけることなく調査できるようになる可能性があります。2,000年もの時を経て、新しい科学的アプローチで、ポンペイの人たちの最期の瞬間をさらに理解できそうです。

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