OpenAIのサム・アルトマンの仮想通貨「Worldcoin」サービス開始

利用には、眼球のスキャンが必須。

OpenAIのCEOであるサム・アルトマンの新暗号通貨「Worldcoin」が今日からサービス開始しました。新しいグローバルデジタル通貨になっていくのでしょうか?

7月24日、Worldcoinは分散型身分証明システム「World ID」と暗号通貨トークン「WLD」の展開を開始したことを発表。Worldcoinが利用可能なのは現在35の都市日本も含まれます。WLDトークンの初期価格は1.70ドルでしたが、その後は2.00ドルほどで動いています。

Worldcoinの始め方

利用するにはまず、アプリをダウンロード。自分の街に設置されている生体認証装置の「Orb」デバイスへ行き、AIと人間を区別するために、眼球の虹彩スキャンをすると「人間だけが受け取れる」WLDのトークンが無料でもらえます。

2019年に発足して以来、すでに30カ国での200万人以上のボランティアのWorld IDをOrbで登録確認済みだそうです。しかし、登録した発展途上国の人たちからは、自分たちの眼をスキャンした代わりにもらえるはずの通貨を受け取っていないと苦情が出ているようです。

アルトマン氏は、Worldcoinの個人認証に眼球スキャンをすることについて、インドの生体国民識別番号制度「アーダール」のようなもので、人間かボットかを区別するためだと話しています。また、世界中の人々に無料で配布されるユニバーサルベーシックインカムの実現を目指しているとのこと。

共同創設者で物理学者のあるアレックス・ブラニア「Worldcoinは世界規模で調整を始めているけれど、その道のりは困難で、結果がどうなるかは不明です。でも、将来のテクノロジーの繁栄のために新しい方法を見つけるためには、私たちがいる現代の最重要な課題だと考えています」とコメントしています。

ベータ版の段階で、1週間に4万人以上のWorld IDを登録したとのこと。現在、Worldcoinは眼球スキャンのOrbを世界中で1,500台に増やすことを目標としていて、そうなると登録数が5倍に伸びるそうです。

アメリカではサービスなし

Worldcoinはこれまで有名なテック界の投資家から数億ドルの資金を調達に成功しているので、これからどんどん拡大を狙っているはずです。AI界でトップを走り、人間の仕事をAIに任せるシステムを作ってきたOpenAIが、AIによって仕事を奪われてしまった人たちに安定した経済基盤を与えるために、無料で配布する暗号通貨だというのも興味深いところです。

世界を平和にしそうなWordcoinですが、人間であるだけでもらえる無料配布の暗号通貨が認められなかった大国があります。皮肉なことにアルトマン氏の出身国であるアメリカです。そう、Worldcoinはアメリカでは証券取引委員会がWorldcoinの不確実性と運営のリスクを示したため、サービスがないんです。

一方でアルトマン氏は、過去6か月間、AI規制に対して態度を和らげるようにいろんな方法でアメリカの法律に関わる人たちに働きかけてきました。でも暗号通貨の規制にはあまり戦う姿勢を見せておらず、アメリカではサービスなしです、とあっさりしています。

Financial Timesのインタビューでアルトマン氏は、「この通貨について考え始めたとき、結局は『アメリカ以外の世界のコイン』になるとは思っていなかったが、そうなってしまいましたね。世界の人口の95%はアメリカ以外です。プロジェクトの成功を決めるのはアメリカではありませんし」と答えています。

一方、もう一人の共同創設者であり、Worldcoinのアプリなどを開発するTools for HumanityのCEOであるブラニア氏は、Worldcoinを暗号通貨業界と結びつけたくないと考えているようで「暗号通貨はおそらく数年のうちに消えることになるでしょうし、暗号通貨は本質的には特定の製品を作るために使用するテクノロジーなのです」とBloomberg Newsのインタビューでコメントしています。

厳しい道でスタートしたWorldcoin

Worldcoinはサービス開始までいろいろ苦難がありました。BuzzFeed Newsがおこなった調査では、世界中のOrbで眼球スキャンをしたのに支払われなかったという苦情が数百件も寄せられているとのこと。また、Orbは一台約5,000ドルくらいするそうなのですが、Orbを操作する係の人たちからも、嫌がらせ、逮捕、支払いの延滞などの苦情が上がっているようです。

さらには、Worlcoinが収集している生体認証データは既にブラックマーケットへ流通しているようです。中国では、カンボジアやケニアで登録されたWorld IDを1つ約30ドルで購入するバイヤーが見つかっているとのこと。またハッカーも、複数のOrbにパスワードを盗むマルウェアをインストールする方法を見つけています。自分の目の生体データが流出するって、映画の世界だと思っていたら、もう現実に起こっているんですね…。

タイトルとURLをコピーしました