南極にある巨大な湖がほんの数日のうちに排水、2000億ガロンの水が消えました

GIZMODO

2021年7月6日の記事を編集して再掲載しています。

南極の東岸にあるアメリー棚氷は、南極で3番目に大きい棚氷です。2019年の冬、アメリー棚氷の巨大な湖から、みるみるうちに2000億ガロン(約7500億リットル)もの水が抜け、湖が消えてしまいました。科学者たちがこの消失に気付いたのは翌年の夏、同地域の衛星画像を見てのこと。最新の論文には、その発見がまとめられています。

3日以内に湖そのものが海へ流出

衛星画像から今回の大規模な湖水流出に気付いたタスマニア大学Australian Antarctic Program Partnershipの科学者Roland Warner氏はプレスリリースの中で「浮かんでいる棚氷に一時的に大きな割れ目ができて、3日以内に湖そのものが海へ流出してしまったと考えています」とコメント。「この湖にはシドニー・ハーバーよりも多量の水がたまっていて、その真下の海へはナイアガラの滝のように流れ落ちたと思われるので、壮観な光景だったでしょう」と続けています。

湖水流出の原因は融解水が原因

Warner氏と共著者らが先日、Geophysical Research Lettersに発表した論文によれば、突然の湖水流出は棚氷にある融解水によって引き起こされた可能性があるとのこと。 彼らは、氷に覆われた深い湖の下にたくわえられていた融解水が棚氷を圧迫したために割れ目ができて湖水が海へと流れ出る、水圧破砕という現象があったと理論立てています。湖の水が抜けてしまった後、棚氷には11平方kmの巨大な窪地が残されましたが、昨年の夏には瞬く間に融解水で再びいっぱいになっていました。融解水は、南極の至るところにある小さな棚氷の崩壊と湖水の排水を招いています。しかしアメリー棚氷は厚さ1,400mほどで、これは冬の真っただ中に起きたこと。そういうわけで、今回はかなり異例なんです(似たような表面湖の排水は、数千マイル離れた北極地方にあるグリーンランドの氷床でも最近の冬は見られます)。

融解水の増加は南極の未来をおびやかすかも

この湖の消失は、気候変動だけのせいにするには少し複雑な事象です。けれども、南極における表面融解(温暖化とともに増えると予想されている)が棚氷の安定性に与える影響についての有益なケーススタディにはなります。南極の棚氷は、特に西南極においては氷下から解かしてくる温かい海水の脅威にも直面しています。南極での氷の消失は海面上昇の一因となるため、世界中の海岸線に影響を及ぼします。研究の共著者でコロンビア大学のラモント・ドハティ地球観測研究所の研究員Jonathan Kingslake氏は「この突然の出来事はどうやら、覆っている氷のフタの下に蓄積し貯蔵されていた数十年分の融解水の末路だったようだ」と、語っていました。「とはいえ、氷に覆われた深い湖へと流れて分厚い棚氷の水圧破砕を引き起こす融解水がますます増えている点も、南極の未来を評価するうえで考慮すべき」と締めくくっています。

Source: Australian Antarctic Program Partnership, American Geophysical Union,

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