生成型AIへの懸念の声が増加 ほか【中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」2023/3/30~4/5】

INTERNET Watch

1. 生成型AIへの懸念の声が増加

 予想されていたことではあるが、ChatGPTなど生成型AIに対する懸念の指摘が増えてきた。

 CNNが報じたところでは、「米IT業界の有力者が人工知能(AI)の研究機関に対し、強力なAIシステムの訓練を少なくとも半年間停止するよう訴えている」ようだ(CNN)。その理由は「社会や人類への深刻なリスク」だということだ。ただ、有力者の1人としてイーロン・マスク氏の名前があるのは少々意外である。本当の意図が別にありそうにも感じる。

 一方、イタリアではChatGPTを一時的に禁止をしたと報じられている(CNET Japan)。理由は「データ収集がユーザーのプライバシーを侵害している恐れがある」ということだ。より具体的には「データ収集についてユーザーに適切な情報提供がなされていないこと、大規模なデータ収集を正当化する法的根拠がないこと、および年齢確認がされていないこと」を挙げている。この命令を受けて4月1日、OpenAIはイタリアのIPアドレスからのChatGPTへのアクセスをブロックしたようだ。

 さらに、「同様の動きはドイツや他のEU諸国でも検討」されているともいわれている(Gigazine)。

 そして、「カナダのプライバシーコミッショナー事務所(OPC)は現地時間4月4日、OpenAIの調査を開始した」という記事もある(ZDnet Japan)。「OpenAIに対する調査は、個人情報が同意なしに収集、使用、および開示されているという苦情を受けて開始された」としている。

 このように、それぞれの懸念理由はまちまちではあるが、共通しているのは生成型AIのインパクトが大きかったということに他ならない。

 こうした動きもあってか、OpenAIも対応をしている。朝日新聞では「オープンAIは声明で、イタリア当局の要求を受け、同国でのチャットGPTの提供を停止したと説明。『我々は人々のプライバシー保護に注力しており、(欧州連合の)一般データ保護規則(GDPR)やその他のプライバシー法を順守していると信じている』と述べた」とする記事を掲載している(朝日新聞デジタル)。

 さらに、OpenAIのサム・アルトマンCEOは「5月か6月に、同社製品のユーザーと開発者、およびAIに関心のある人々と話し合うための世界ツアーを行う」とツイートで発表している(ITmedia)。訪問予定地には東京も含まれることから今後のスケジュールには注目だ。

ニュースソース

  • マスク氏らIT業界有力者、AI開発競争の停止訴え 現状は「制御不能」[CNN
  • 「ChatGPT」、イタリアで一時的に禁止–データ収集に懸念[CNET Japan
  • ChatGPTへのアクセスをブロックしたイタリアに続きドイツなどEU諸国でもブロックを検討中[Gigazine
  • カナダ当局が「ChatGPT」開発元の調査を開始–個人情報の扱いを懸念[ZDnet Japan
  • ChatGPT、個人情報の扱い「減らす」 イタリアの禁止受け[朝日新聞デジタル
  • OpenAIのアルトマンCEO、東京を含む世界17都市で「ChatGPTやAIについて話し合う」行脚へ[ITmedia

2. 読書感想文コンクールではAIを意識して応募規定を改定

 小中高校生の読書感想文コンクールを主催する全国学校図書館協議会が来年度から応募要項を改定すると報じられている(NHK)。「AIの悪用の懸念が払拭できない」ことがその理由のようだ。「盗作や不適切な引用があった場合に審査の対象外となり、事実上の失格となることがある」とする規定を追記する。

 たしかに、「〇〇の読書感想文を〇〇文字で書いて」というだけで、それなりの感想文が出力される。もちろん、長編でもあらすじをまとめさせることができる。コンクールだけでなく、学校の課題でも同じことだ。今後、学生にとっての読書するということはどういう意味を持つことになるのか。“タイパ”を優先するということになってしまうのだろうか。

ニュースソース

  • 読書感想文コンクール AI悪用への懸念から応募要項を改定へ[NHK

3. URLの重要性を再認識する

 情報処理推進機構(IPA)が行ったサイトリニューアルで記事のURLが全面的に変更された(INTERNET Watch)。リダイレクトも設定されなかったようだ。その結果、各所から利用されていたリンクが機能しなくなり、利用者からは批判が高まった。IPAではリダイレクトを順次設定するとしている。

 あくまでも想像だが、仮にURLが変わっても、必要な情報は検索でたどり着くことができるので、URLが変更されても影響は少ないと考えたのではないか。しかし、資料性の高い情報に対しては他のウェブサイトからリンクされている可能性が高く、参照が一気にできなくなったということだろう。

 今回はリニューアルに伴った事象だが、他にもページが取り下げられたり、組織が消滅することで情報そのものがなくなったりするケースもある。リンクによってその情報ソースと一体になって意味をなす情報も多いなか、情報の関連付けの維持はウェブというシステムの課題の1つだ。

ニュースソース

  • IPAがサイトリニューアルでリダイレクトなくURLを全面変更、技術解説記事も多数消滅か[INTERNET Watch

4. フレッツ光で大規模な回線障害が発生

 NTT東日本とNTT西日本は、4月3日7時10分ごろから、フレッツ光、ひかり電話、固定電話に障害が発生したと発表した(INTERNET Watch)。その後、10時8分に復旧した。NTT東日本では35万9000件、NTT西日本では8万7000件に影響があったものとみられる。なお、「ログ解析によると、攻撃の可能性は限りなく低い」としている(PC Watch)。

 松本剛明総務大臣は今回の通信障害について「重大な事故に当たる可能性が高い」との認識を示した(ケータイWatch)。

 通信への依存が高まるにつれ、障害による影響の範囲も大きく、甚大になる。携帯電話の障害だけでなく、固定通信網でも何らかの代替手段の備えが必要になるなのだろうか。

ニュースソース

  • NTT東西で通信障害、「フレッツ光」や「ひかり電話」などにも影響(復旧情報あり)[INTERNET Watch
  • 45万件弱に影響したフレッツ光の障害。特定パケットに起因、攻撃の可能性はほぼなし[PC Watch
  • 松本総務相、NTT東西の障害に「重大事故の可能性高い」[ケータイWatch

5. 国立映画アーカイブが動画配信サイトをオープン

 国立映画アーカイブは明治から昭和初期にかけての文化・記録映画を集めた動画配信サイトをオープンした(INTERNET Watch)。収録されているのは「1904年から1905年にかけて撮影された日露戦争の記録映画、もっとも新しいのは寒天の製造工程や用途を一部カラーで収録した1937年の動画で、明治から昭和初期にかけての貴重な映像ばかり」である。

 動画に限らず、図書、文書、画像、音声など、過去の資料をデジタル化し、容易に検索でき、アクセスできるようにしておく仕組みづくりは今後ももっと増えていってほしいと思う。歴史的な記録が破棄されたり、消失したり、散逸したりするのは避けるべきだ。

ニュースソース

  • 明治から昭和初期にかけての文化・記録映画87本を集めた動画配信サイトが無料公開中[INTERNET Watch

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