広告費 の縮小、経済不安。そんななかでのカンヌライオンズの役割は

DIGIDAY

今年2023年のカンヌでは、業界の不調がとくに顕著に感じられ、役員たちはロゼワインを注ぐのが追いつかないくらい接待や食事を続けていた。しかし、帰国後多くのレイオフが発生し、広告業界全体のエコシステムにおいて、巨大なテック企業からメディア、ブランドまで、ほぼすべての分野に影響が出ている。

カンヌライオンズが開催されていた1週間、役員たちの血走った目は輝いていた。2023年を乗り切るための取引につながることを期待し、アプローチできるだけアプローチしていたからだ。SnapchatのEMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)担当プレジデントであるローナン・ハリス氏は、6月第3週の記者会見で「2022年はあやふやなことが多かったが、2023年は明確だった」と述べた。

クロワゼット大通りは日中賑わい、夜はより雑然とした雰囲気に包まれ、さまざまなビーチコンサートの音楽で活気づいた。バーにはエグゼクティブが溢れ、常日頃Zoom会議から解放されたがっている彼らは楽しげに歩いていた。2022年以降、カンヌの賑わいが徐々に戻ってきており、2023年の活況によって「カンヌが復活した」と多くの人が感じていた。

残りのパイを奪い合うという事実

一方、メタ(Meta)やTwitterなどのプラットフォーム、Googleやクリテオ(Criteo)などのアドテク、BuzzFeedやダウ・ジョーンズ(Dow Jones)などのメディア、FaZe Clan(フェイズ・クラン)といったeスポーツチームも含めて、広告業界のあらゆる面でレイオフが発生している。

カンヌライオンズに初めて参加したインスタカート(Instacart)の最高事業責任者であるクリス・ロジャース氏は、「ここに来る必要があった」と述べ、「私はもう少し実用的に捉えている。このイベントに来れば、多くの業界関係者に一度に会えるからだ」と話した。

マーケティング費用を抑えないといけない現状では、カンヌでの競争はより熾烈なものとなる。もっと大規模で華やかなプレゼンスが必要となるのだ。ここで多くを投資すれば、さらに多くの利益を得られるのではないか、という考え方が広まっている。

電通の最新予測(2023年5月発表)によると、2023年の広告費は伸びそうだが、当初の予測よりは控えめで、そのほとんどは実際の支出ではなくインフレによるものだという。

Spotify、Yahoo、Amazonなどのイブニングセミナーが行われ、参加申し込みをしていないにもかかわらず、カンヌライオンズの参加者たちはどうやってセミナー会場へ入ろうかと話し続けていた。カンヌの第2会場と言われるガターバー(Gutter Bar)から人が溢れ出ていることや、脇道のバーの混雑ぶりは象徴的であり、イベントが閉幕した翌週の月曜日には、経費報告担当者が残業することになるが目に見えていた。

このアプローチが繰り広げられるあいだ、広告費が縮小し、そのパイの残りを奪い合うことになった事実を業界は受け入れているようだった。

経済環境の厳しさを受け入れる幹部たち

「あちこちでレイオフが起こっている。広告エージェンシーはより小規模化し、収益性を高めようとしている。それでも私たちはビジネス上の投資に関して、依然として緻密に計算する必要がある」とコードスリー(Code3)のチーフアクティベーションオフィサー、グレッグ・ウォルニー氏は語った。「状況が好転するまで、ただ座って待つわけにはいかない。賢明な投資を行なわなければならない」。

さらに、業界では高度にターゲット化された「For You」ページを通じて注目されているTikTokですら、「マーケターはどのようにより少ない予算でより多くの成果を上げるか、という課題に直面している」とグローバルビジネスソリューション担当プレジデントのブレイク・チャンドリー氏は述べる。

経営幹部たちは経済環境が厳しいことを認めつつも、明るい前向きな見通しを示すことにカンヌでの日々を過ごした(うなずいては微笑み、「すべて順調だ」「ビーガン用のタコスは食べるか?」「あの海は美しい」などのやりとりをしながら)。しかしながら、前向きな見通しは、悲観的な見通しほど多くはなかった。

カンヌライオンズが目指すもの

メディアブランドはバンドルサービスを推し進めており、ファーストパーティデータはある種の薬物のように目の前にぶら下げられている。一方で誰もが2023年の残りのスケジュールを立てようと奔走している。

フェスティバルの至るところで(その能力を宣伝する物理的な広告そのものに対しても)AIに関する疑問が立ち込めている。また、AIがスタッフの業務や業界のあり方などに、どのような影響を与えるのかについて注視されている。

「この場にいることの価値について、どのようにROIを計測するかを多くの人々と議論した」とインスタカートのCMOであるローラ・ジョーンズ氏は語る。「これは非常に素晴らしいことだ。なぜならビジネスの戦略的成長要素に大きくつながるからだ。そして、それはいつもカンヌが目指していることなのだ」。

[原文:Cannes Briefing: Despite economic worries, industry carries on as usual in Cannes — plus CMO video series

Kimeko McCoy and Sara Jerde(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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