「笑い」は生存競争に必要だったという説が登場、周囲に安全を知らせる役割があると専門家は指摘

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これまでの研究により65種類の動物が笑うことが知られており、ラットでさえくすぐられると笑い声を上げることが確かめられています。一見すると厳しい自然界で生き抜く上では必要ないように思える「笑い」が発達した背景には、笑い声が生存競争の中で重要な役割を果たしてきたからだと専門家が提唱しました。

Why do we laugh? New study considers possible evolutionary reasons behind this very human behaviour
https://theconversation.com/why-do-we-laugh-new-study-considers-possible-evolutionary-reasons-behind-this-very-human-behaviour-190193

長年赤ちゃんの泣き声や笑い声の意味について研究してきたイタリア・シエナ大学の小児科学教授のカルロ・ベリーニ氏は、そもそも人間はなぜ笑うのかを解明すべく、過去10年間に発表された笑いに関する文献100件以上に目を通しました。その結果、笑いは人類が生き残りをかけた自然淘汰(とうた)の中で獲得してきたものであり、社会が高度に発展する前から培われてきた重要な行動であることが分かってきたとのこと。


笑いが起きるメカニズムについてのメジャーな学説の中には、単一の状況の中に相反する事柄が存在していることが笑いを誘うという「不調和説(Incongruity theory)」があります。しかし、例えば「都会に突然虎が出現した」というような場合も相反する事柄に該当するものの、もし実際に街角で虎に出くわしたら面白さより恐怖が先に来るように、不調和だけでは笑いを説明することはできません。

この足りないものについてベリーニ氏は、「笑うためには、その出来事が無害である必要がある」と指摘しています。つまり、「都会に出現した虎がゴムボールのようにぽよんぽよんと跳ねはじめた」という具合に、笑いには大前提として自分の身の安全が不可欠だということになります。

このことからベリーニ氏は、悲鳴に危険を知らせる警報の役割があるように、笑いにも状況が安全であることを周囲に知らせる役割があるのではないかと分析。笑いに至るプロセスには奇妙な出来事を見つける「困惑とパニック」、その困惑や心配が解消される「解決」、安全を確認した観測者が笑い声を上げることで周囲の仲間に危険ではないことを知らせる「安心」の3つの段階が必要であると説明しました。

また、笑いが人から人へとしばしば伝染することや、笑いには人を社交的にして団結を促すこと、恐怖や心配事を解消する効果があることも、ベリーニ氏の考えを裏付ける根拠としてあげられています。


笑いには、周囲に闘争・逃走反応の必要がないことを知らせる以外にも、さまざまな効果があります。

笑いを制御する脳の領域では感情や恐怖、不安なども制御されているため、笑いの解放はストレスや緊張を緩和させ安心感をもたらします。また、ピエロの装いをした療法士が病院の患者を訪れる「Clown Care」が海外で実施されていたり、日本でも笑い療法士が活躍していることからも分かるとおり、ユーモアには血圧を安定させたり免疫力を安定させたりするという肉体的な効果があるほか、不安感やうつの症状を緩和するのに役立つメンタル面での効果も期待できます。

このように、さまざまなメリットがある笑いについてベリーニ氏は、「人は笑うことで気分が上向きになって幸福感を感じられます。これは、進化の観点から見ると笑いが危険を察知し自己防衛するという重要な機能につながっているからだと思います。ですから、今でも人は危険な目に遭ってからぷっつりと緊張の糸が切れると、思わず笑ってしまうことがあるのです」と述べました。

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