モール 依存からの脱却を図る小売業者たち:「オールドファッションなイメージだ」

DIGIDAY

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各ブランドは、モールでの評判を払拭しようとする姿勢を強めている。

ファッション企業のエクスプレス(Express)は、モール外の新規顧客を開拓するため、昨年末までに自社のコンセプトストア「エディット(Edit)」の面積を現在の2倍の11店舗にすることを計画していた。ボディケアおよびフレグランス企業のバス&ボディーワークス(Bath & Body Works)は、2月の決算説明会で、モール内にある50店舗を閉店し、モール外の場所に90店舗を開設する計画を公表した。百貨店のメイシーズ(Macy’s)は、業績が堅調に持続すれば近日中にモール外の店舗の開設を加速すると、CEOを務めるジェフ・ジェネット氏は先週投資家やアナリストに語った。

モールと一部ブランドとの関係は、かつては双方に等しく恩恵のあるものだったが、現在では完全に冷え切ってしまった。モールに出店する店舗の面積を縮小してモール外の店舗を開設するブランドがいれば、コンセプトストアに乗り出しているブランドもいる。モールを離れたいくつかのブランドの中は、顧客の関心が再び高まっているとすでに楽観視している。しかし、モールをベースとする事業からの脱却は、何年にもわたる投資であり、投資回収には時間が必要だ。

10年後には150店舗にまで減少

米国のモールへの訪問客数はかつてのように安定してはいないと、グローバルコンサルティング企業のアリックスパートナーズ(AlixPartners)で小売プラクティスのディレクターを務めるピート・マッデン氏は語る。その結果、これらのブランドの多くは買い物客にとってより便利な場所に移転しつつあると、同氏は述べている。

「小売業者は今後を見据え、消費者の観点から対応している。消費者は遠くまでドライブしたくないと考えており、ある種の移行が進んでいる」と、同氏は述べる。

位置情報データ分析のプレイサーエーアイ(Placer.ai)によると、1月の訪問客数は、3年前のパンデミック以前の時期と比べ、屋内モールで11.6%、オープンエアーのライフスタイルセンターで8%、アウトレットモールで8.4%減少した。小売アドバイザー企業のサイトワークス(SiteWorks)のプレジデントを務めるニック・エゲラニアン氏は、米国のモールの数は現在の700店舗から、10年後には150店舗に減少すると予測していると、ウォールストリートジャーナル(The Wall Street Journal)に語った。

現在、モールブランドと呼ばれることには負のイメージがつきまとっているようだ。モールでもっとも認知度の高い店舗の中には、業績が芳しくないものもあるからだ。「モールにあることによって、どちらかというとオールドファッションなイメージが与えられる」と、インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)で小売およびeコマースのシニアアナリストを務めるスカイ・キャナバス氏は語る。「彼らが、古いビジネスモデルや古い形式の小売に捉われていることを暗示している」。

有力ブランドにもモール離脱の動き

そのため、この3年間で、主要なモールブランドが米国のモールからの離脱を画策しはじめた。ギャップ(Gap Inc)は2020年に、2023年までに約350店舗を閉鎖し、自社店舗の80%をストリップセンターや、シティセンター、アウトレットに置く計画を公表した。同様に、ランジェリー会社のヴィクトリアズ・シークレット(Victoria’s Secret)は2021年、モール外の店舗のテストを開始した。

ヴィクトリアズ・シークレットのCEOを務めるマーティン・ウォーターズ氏は、同社の12月の決算発表において、同社のイニシアチブのひとつは「モールへの依存を減らし、モール以外の場所に注力すること」だと話した。そして、これまで「これらのモール外店舗の業績には非常に満足している」と語った。

インサイダーインテリジェンスのキャナバス氏は、ブランドが店舗を使用して、より戦略的に新規顧客を獲得しようと試みていると語る。「人々がそれほどモールを訪れないなら、モールに店舗を置くのは意味がない。消費者はそもそも自分たちが行きたくない場所でブランドを探すとは限らないからだ」と、同氏は述べている。

新しい買い物客を引き入れ、従来の客を引き戻すのは、「エクスプレスエディット(Express Edit)」の店舗が設立された目的そのものだと、CEOのティム・バクスター氏は以前に米モダンリテールに語った。同氏は、エクスプレスエディットで買い物をする人の約半数は新規の顧客で、約20%は何年も同ブランドの商品を購入していない人々だ。「エクスプレスウェイ・フォワード戦略(ExpressWay Forward Strategy)の一環として、エクスプレスを、モールの店舗として知られてきた存在から、スタイリング・コミュニティ力を発揮するという目的を持ったブランドに変えていくことだ」と、同氏は述べる。

その結果は、まだ初期段階ではあるものの、モールの外部の店舗に投資してきたブランドにとって期待の持てるものだ。メイシーズのモール外チェーンであるマーケットバイメイシーズ(Market by Macy’s)の5店舗と、同社のブルーミーズ・コンセプトストア(Bloomie’s concept store)の1店舗は、第4四半期にほかの店舗よりも良い業績を収めた。マーケットバイメイシーズの第4四半期の既存店売上は8%増、ブルーミーズの既存店売上は12%増だった。これに対して、メイシーズの既存店売上は3.3%減、ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)は0.6%増、ブルーマーキュリー(Bluemercury)は7.2%増だった。

ビジネスモデルを洗練させる

しかしこの事実は、メイシーズやエクスプレスのような小売業者が直面する、より大きな課題を示している。すなわち、自社の事業をモールから離そうと熱心になっているが、そのためには時間と費用が必要で、売上が減少し続けているこれらの小売業者は、無限に時間と費用を費やすことはできない。たとえばエクスプレスは、第3四半期の決算で、既存店売上が前年同期比で8%減少したと報じた。

ブランドがモールへの依存を減らすことを計画していても、モール外での新しいコンセプトは、依然として、これらのブランドが運営している、モール内のものも含めた合計店舗数のごく一部にすぎない。マーケットバイメイシーズやブルーミーズは、メイシーズの722店舗のポートフォリオのうち、わずか10店舗だ。エクスプレスは10月の時点で、エディット11店舗の保有を計画しているが、これは同社がポートフォリオ全体で運営している合計566店舗のごく一部でしかない。

「モール外に移行しようとしている小売業者の多くは、適切な方法で移行を進めている。つまり、まず小規模な移行を行ってから、規模を拡大するということだ」と、アリックスパートナーズのマッデン氏は語る。「これらの小売業者は、何がうまく働いて、何が駄目かを見極め、まずはビジネスモデルを洗練させてから、はじめて大規模な展開を進める」。

「新しい拠点が高い業績をあげ続けるなら、2024年初頭には、モール外への出店を次第に加速させる」と、ジェネット氏は第4四半期の決算発表で語った。「当社は現在、モール内とモール外の店舗の適切な数と割合を評価している」。

モールの逆襲

モール運営の最大手のひとつであるサイモンプロパティグループ(Simon Property Group)は、第4四半期報告書によると、モールの稼働率が前年の93.4%から94.9%に上昇した。この結果は、モールがこのような経営環境下でも依然としてテナントを引きつけられることを示唆している。同社はアミリ(Amiri)、ジバンシィ(Givenchy)、アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)などのラグジュアリーブランドの2022年秋の店舗出店を予定している。

サイモンプロパティグループのCEOを務めるデビッド・サイモン氏は、第3四半期の決算発表で、「モールについての否定的な評価を終わりにする」ことを望むと述べた。しかし、同社が新たに複合用途デベロッパーであるジェームズタウン(Jamestown)の権利の50%を獲得したことは、ショッピングセンターがどのようなものであるべきかについて同社が再考している可能性を示唆する。ジェームズタウンは通常、複合用途に加えて商業用不動産の開発にも投資している。

BDOの小売・消費財業界グループのナショナル・プラクティス・リーダーを務めるナタリー・コトリャール氏は、モールのコンセプトが変化しつつあると語る。一部のモールは食料品店、エンターテイメント空間、オフィスが新たにアンカーテナントの座に着くと考えている。一方、従来型の閉鎖的なモールではなく、都会型プロムナードのように見えるライフサイクルセンターとして、自らをリブランディングしてきたモールもある。

コトリャール氏は次のように述べている。「ほぼコミュニティの一部になりつつあるモールもある。これによりモールのコンセプトは新たな次元に飛躍し、顧客の日常的な外出の一部となるだろう」。

[原文:Retailers like Express and Macy’s are trying to shed their reputations as mall brands, with mixed results]

Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)

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