メタの Advantage+ は「ペイド広告の究極の理想型」となるか?

DIGIDAY

AppleがATTとiOS 14を導入し、アプリ開発業者と広告主がアクセスできるユーザーデータを制限してから、2年強が過ぎた。この制限は依然、メタ(Meta)のパフォーマンス力、ターゲティング力、効果測定力に依存するソーシャルメディア広告主にとってはとりわけ、苦悩の種となっている。

さらに業界にはメタへの挑戦者もいる。たとえばTikTokとピンタレスト(Pinterest)はメタの損を自らの得に変えられるポジションだ。ただ、広告収益が最近減少しているとはいえ、メタはいまもデジタル界におけるトップの座を保持しており、広告主の93%は依然同プラットフォームに投資していることが、DIGIDAYの調査で判明した。2023年も半ばを迎えた現在、真の意味で実行可能な代替ソリューションも、有力な競合プラットフォームも、いまだ現れていない。

その地位を強化するべく、メタは売上のてこ入れと成長の促進を狙う広告主の目を引き付ける、Advantage+ ショッピングキャンペーンも導入した。これはおそらく、同社広告ビジネスからのパフォーマンスマーケティング費流出を防ぐための、メタによるひとつの手だてと思われる。

新たなブラックボックスなのか

2022年8月、メタはAdvantage+ショッピングキャンペーンを全世界で導入した。その目的は人工知能(AI)を広告創造および自動化に、つまりターゲティング、ビディング、プレースメント、クリエイティブなどに利用することにある。ただし、Advantage+もまた、新プロダクトに付き物の課題と無縁ではない。

Advantage+は導入以来、新たなブラックボックス的存在と見なされており、メタが提供する数字を広告主は信じるしかなく、後者にはそれを検証する術がないと、アドエクスチェンジャー(AdExchanger)は指摘する。そういう意味では、GoogleのAIプロダクトP-MAX(パフォーマンス最大化キャンペーン)に近いとも言える。

ただし、Googleはブラックボックスとのレッテルに異議を唱えている。メタも同様の姿勢を取っており、同社はその新自動機能の仕組みについて何も隠しておらず、広告主はどの広告ツールを使うのか、自ら選ぶことができると、広報は話す。

「メタはAdvantage+を人々に試させてはいるが、これで人々を同プラットフォームに留めておけるのか、そして新たな人々にメタを再考してもらえるのかについては、いまだ不透明だ」と、テイク・サム・リスク(Take Some Risk)の創業者でストラテジー部門のトップ、デュエイン・ブラウン氏はDIGIDAYへのeメールで指摘する。「大半の広告主はたんに、何でも良いから効果のあるものを見つけて、その潜在力を最大に発揮する波に乗りたいだけだ」。

Advantage+の利点

一部の広告主にとって、Advantage+はまさにその「波」だ。メタのせいで生じた悩みの種を多少軽減し、広告主が予算を効率的に調整するための一助になっている。少なくとも、パフォーマンスマーケティング企業ティヌイティ(Tinuiti)にとってはそうだと、同社ペイドソーシャル部門シニアディレククターのナターシャ・ブルメンクロン・ミアーズ氏は話す。実際、Advantage+はブラックボックスだと揶揄されているが、それでもなお、同社はメタへの総支出を前年よりもわずかに増やす予定だという(広告費の具体額は開示されなかった)。

「以前のような詳細レベルで広告キャンペーンの構築および適正化ができるのなら、それは我々にとって非常にありがたい話ではあるが、その一方で、個人のプライバシーが非常に重要であることも、我々は認識している」とミアーズ氏はeメールで認める。「メタのAdvantage+のようなソリューションは、ユーザーのプライバシー保護を確実なものにすると同時に、さまざまなクリエイティブを本格的に、幅広いフォーマットで迅速に試し、学ぶことを可能にしてくれる」。

クリエイティブ&メディアエージェンシー、マッキニー(McKinney)の場合は一方、Advantage+は導入以来、ソーシャルストラテジーに関するアップデートを何度か行なってはいるものの、その有効性に疑問を感じていると、同社アクティベーション&アナリティクス部門アソシエートメディアディレクター、バリー・サルス氏はeメールで指摘する(それらのアップデートがクライアントの広告支出に与えた影響に関する具体的な数字は、開示されなかった)。

「メタにはもともと、ライフタイムバジェットやあらゆるプレースメントの選択に際して利用できる同様の機能があった。したがって、このアップデートは実際、我々のこれまでのキャンペーン構築および適正化の手法を大きく変えたわけではない」と氏は話す。ただ、これはメタの独占状態に対する批判ではなく、メタには依然、クライアントキャンペーンにおいて他のプラットフォームを上回る力があると、氏は言い添える。事実、同社では予算をほぼ必ず、少なくとも2つのソーシャルメディアプラットフォームに振り分けているが、「くり返しになるが、その大半は高い効果とスケーラビリティが得られるメタに行っている」。

メディア支出の多様化というトレンド

ATTとiOS 14の導入以降、メタ一択ではない、メディア支出の多様化が業界内で大きな話題となっている。

「Facebookは我々に非常に大きな教訓をくれた。我々の多くはFacebookに過依存する道を進んでいた」と、メディアエージェンシー、マイ・コード(My Code)のリサーチ&インサイツ部門でジェネラルマネージャーを務めるアーロン・ブラクストン氏は話す。「ディストリビューションの多様性、プラットフォームの多様性、コンテンツタイプの多様性。それらすべてがリスク緩和に繋がる。ひとつの巨大プラットフォームだけが広告支出の大部分を独り占めし、我々広告エージェンシーが市場に対応できるようにすべてを取り仕切る状態、というリスクのことだ」。

一部の広告主はスナップ(Snap)やTikTok、ピンタレストといった有望プラットフォームに癒しを求め、パフォーマンスマーケティングにおけるメタの損がそうした他のプラットフォームの得になって欲しい、と期待している。たとえばTikTokの場合、その未来が現在、政治界で議論の的となってはいるが、同社のショートフォーム動画アプリは幅広い広告主を引き付けており、米国での存在感を確固たるものにしている(TikTokのピッチデックはこちらを参照)。ただし、パフォーマンスマーケティングの観点から見れば、同アプリは概してメタには歯が立たないと、広告主らは話す。

とはいえ、広告エージェンシー、コードスリー(Code3)のクライアントによる広告費は2022年半ば以来、2021年およびそれ以前と比べると、TikTokとスナップにより多く割かれていると、コードスリーのメディア部門VPイヴォンヌ・ウィリアムズ氏は話す。

実際、スナップは先頃、広告オファリングの質を高めており、「リーチを拡大し、iOS 14や雑然とするマーケットプレイスといった諸々によってもたらされるソーシャル全体におけるシグナルおよびパフォーマンスのロスを最小化することで、我々は自らをFacebook/インスタグラムを補完できる実行可能なオプション」にすると、ウィリアムズ氏は断言する。

ソーシャルの渋滞はさらに進む

一方、多様化を図る一手段として、ピンタレストへの支出を増額している広告主らもいる。22スクエアド(22Squared)は、メタ以外のプラットフォームへのデジタル支出が平均で26%増えたと、同社デジタルインベストメント部門ディレクター、マディ・アプシー氏は話す。ただし、「メタが重要なパートナー」であることに変わりはないと、氏は言い添える。

ビーリアル(BeReal)Lemon8(レモンエイト)BlueSky(ブルースカイ)といったソーシャルメディア界の新興アプリにメタと競合できる新たな広告ソリューションとして期待を寄せる広告主らもいる。

だが、それら新アプリはユーザーの人気こそ得ているが、各々の広告オファリングの形態はいまだ見えておらず、多くのプラットフォームが広告を介するマネタイズを再考するなか、具体的な形にさえならない可能性もある。

これら諸々が示しているのは、メタが依然として最強の広告エコシステムである事実だと、メカニズム(Mekanism)のパートナーでチーフソーシャルオフィサーのブレンダン・ゲイエン氏は話す。「メタの圧倒的優位性はパフォーマンスマーケティング力にある。そこでは、常にメタが最強だ。そしてその結果、メタへの巨大な過依存と代替プラットフォームに対する巨大な需要が存在している」。

メタの復活を待つか、次のプラットフォーム出現を待つか

つまり、ソーシャルメディアグリッドロックの様相を呈するいま、すべてはメタ依存を自覚する広告主次第、ということになる。次なる巨大ペイドプラットフォームの出現を待つのか、それともメタが独力で立ち直り、自らをソーシャルメディア界の中心的存在にした広告オファリングを再び提供できる日を待つのか。

ただ、これは新たな機会の時でもあると、ブラウン氏は上記のeメールで指摘する。「こんなにも多くの選択肢があるいまは、ペイド広告を動かすのに過去最高の好機だ。ペイド広告の究極の理想型の出現をただ待っているだけでは、不景気の中、競合他社からマーケットシェアは奪えない」。

[原文:Can Meta remain the ‘holy grail of paid advertising’ with challenges, challengers and Advantage+?

Kimeko McCoy(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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