ユニクロ 、「LifeWearマガジン」を通したブランドエンゲージメント:「900万ドルの広告を携帯電話で見るよりもインパクトがある」

DIGIDAY

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米国で存在感を増すユニクロ(Uniqlo)は、ブランドの認知度を高めるために、ライフスタイル誌に賭けている。

この雑誌は「LifeWear」と名前で年に2回発行されており、オンラインショップや全米の店舗で入手することができる。2023年春夏の最新号は、「The Art of Everyday Life」というテーマで、120ページで構成されている。主に英語と日本語で印刷され、発行部数は150万部であると、同社は米モダンリテールに語っている。

ユニクロは、LifeWearが商品カタログではないことを注意深く述べている。ユニクロのコミュニケーション責任者であるマイケル・ザクゼウスキー氏は、「この出版物を通して商品を販売しているわけではない」と、モダンリテールに語っている。その代わり、LifeWearマガジン(LifeWear Magazine)は、インタビューや特集、見開き写真などを掲載し、「ユニクロが創り出す哲学であるLifeWear、つまり単なる衣服ではなく、毎日着る人の生活をより快適にする衣服」に触れていると、同氏は説明している。2019年にスタートし、4人の専任スタッフがいるこの雑誌は、ユニクロが何を目指しているのかを顧客に知ってもらうために重要であると、ユニクロは述べている。ユニクロはまた、店内イベントやパートナーシップのインスピレーションとして、この雑誌を活用している。

ユニクロの哲学を体現するための雑誌

「焦点は毎号変わるが、お客様の生活を豊かにするものは何か、どんな話を聞きたいか、ブランドのどんな要素に触れほしいかなど、常に同じようなタッチポイントをおさえるようにしている」とザクゼウスキー氏は話す。たとえば最新号では、LAにあるユニクロのデニム工場についての記事、ガラス職人の山野アンダーソン陽子氏へのインタビュー、ユニクロがポップアップストアを開いたポーランド・ワルシャワの春キャベツを使ったピエロギのレシピが掲載されている。これらは全号無料だ。

この雑誌のデジタル版では、「サイトのトラフィックは、商品ページと同程度だ」とザクゼウスキー氏は述べている。「そしてそれは、素晴らしいことに、雑誌の改訂を通じて一貫して伸びている」。さらに、ユニクロは通常、雑誌に掲載された商品や見開きページについて、デジタルチャネルに投稿する。「人々がブランドを理解し、その後に商品に関するコミュニケーションを行うため、特集を組んだ商品の売上は好調だ」とザクゼウスキー氏は述べている。

ユニクロ・インターナショナルは、2023年第1四半期に前年同期比19.4%増の売上高を計上した。北米での知名度向上は同社にとって最優先事項であり、今後4年間で店舗数を3倍以上に増やしたいと、CEOの塚越大介氏はブルームバーグに語っている。ユニクロの親会社であるファーストリテイリングは、最終的に北米事業の年間売上高が23億ドル(約3100億円)に達することを望んでいるとブルームバーグは報じている。

美術館とのコラボレーションも

ユニクロは、店内イベントやアートワークで雑誌を宣伝している。ザクゼウスキー氏によると、ニューヨーク5番街店がもっとも規模が大きいが、雑誌は全米の複数の店舗で配布されているという。これらの店舗では通常、各スペースの形式に応じて何らかのディスプレイが設置されている。たとえば、雑誌の各ページを壁面に展示するところもある。顧客は見開きで雑誌を見て、必要に応じてハードコピーを手に取ることができる。5番街店では、最新号の表紙を壁面に大きく映し出し、数十冊の雑誌を並べた本棚もある。

また、LifeWearマガジンの最新号は、ボストン美術館(MFA)でも入手できる。ユニクロは2017年から同館と提携しており、ユニクロのグラフィックTシャツブランド「UT」が浮世絵をモチーフにしたTシャツコレクション「Ukiyo-e UT Graphic T-Shirt Collection」は、MFAが所蔵する木版画からインスピレーションを受けたものだ。本誌の新しい見開きページでは、3月26日から7月16日までMFAで開催されるユニクロ主催の展覧会「Hokusai: Inspiration and Influence」を紹介している。

ザクゼウスキー氏は、LifeWearマガジンの需要について、「非常にポジティブなフィードバックがある」という。「『これまでの全号を集めた』 と言って戻ってきてくださるお客様もいる」。

「900万ドルの広告を携帯電話で見るよりインパクトがある」

多くの新興企業が、何年にもわたってライフスタイル誌の実験を行ってきたが、マーケティングの優先順位が変わるにつれて、それを閉鎖したり、頓挫させたりしている。寝具ブランドのキャスパー(Casper)は2017年、「ウーリー(Woolly)」という季刊の印刷雑誌を立ち上げたが、ウェブサイトでは1号分しか販売されていない。2018年には、Airbnb(エアビーアンドビー)が、「Airbnbマガジン(Airbnb Magazine)」を発刊したが、同社のウェブサイトによると、その後「無期限で休止」している。

それでも、さまざまな規模の企業がマーケティングのために印刷物に移行しているのは、混雑した空間で目立つことができるからだと、マーケターハイヤー(MarketerHire)の共同設立者兼CEOのクリス・トイ氏が、米モダンリテールに語っている。「オフライン・マーケティングには、いまだにプレミアム感や威信がある。効果的な印刷物を送り出せば、900万ドルの広告を携帯電話で見るよりもはるかにインパクトがある。そこには、ブランドに対して異なる視点を持つ機会がある」。

「もし私があるブランドのクールで小さな雑誌を手に入れたら、それは大きなことだろう」とトイ氏は付け加えた。「私は……おそらく座って読書をするだろう。なぜなら、それは非常にまれなことだからだ。マーケティングの観点からすれば、それは常に素晴らしい機会だ……。『今月、あなたが手にする印刷された唯一のブランドライフスタイル誌にさせてほしい』――それはかなり良い立ち位置だ」。

[原文:How Uniqlo uses its lifestyle magazine to drive brand engagement]

Anna Hensel(翻訳・編集:戸田美子)
Image via Uniqlo/LifeWear Magazine

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