設立から1年のラグジュアリーブランドアクセラレーター、ドリームアセンブリーベースキャンプ(Dream Assembly Base Camp)は、ドレスX(DressX)のような魅力的なビジュアルを持つデジタルファッションスタートアップへの注力を超えて活動しつつある。現在、このプログラムを主導する経営陣は、進化しているファッション・テクノロジー環境を促進するためのシームレスなインフラストラクチャーを支援できるバックエンドのイノベーターを求めている。ファーフェッチ(Farfetch)が所有するこのアクセラレーターは、ベンチャーキャピタルファンドのアウトライアーベンチャーズ(Outlier Ventures)と提携して、スタートアップ企業に幹部研修を提供し、投資家やメンターとのつながりを推進している。
この動きは、デジタルファッションとWeb3へのアプローチの方法が変化する中で起こっている。FTXの暴落とWeb3の衰退以来、現在、Web3分野の速度が低下している。RSTLSS(レストレス)や9dccといったWeb3ブランドの多くは、現在、新規プロジェクトのリリースよりも「構築」に注力しているところだ。
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ラグジュアリー分野かどうかにかわらず構築中の企業にアプローチ
将来に備えて、ファーフェッチやラグジュアリー分野の他企業は、ブロックチェーン取引、新しい認証方法、持続可能性を重視したブロックチェーンのユースケース、Web3コミュニティの成長を可能にする新しいシステムに既存のインフラを接続する方法を模索している。
現在のドリームアセンブリーの参加企業は3カ月にわたるアクセラレータープログラムの最後の数週間を終えつつある。今回のプログラムは、企業をスカウトするためにこれまでよりもカスタマイズされたアプローチをとったにもかかわらず、応募数は昨年を上回った。
アウトライアーベンチャーズのドリームアセンブリープログラムディレクターであり、VC投資家でもあるブレイク・レゼンスキー氏によると、ドリームアセンブリーアクセラレータは、興味深いユースケースがあり、ラグジュアリーを考慮していない企業にアプローチしたという。「我々は(構築中の)企業を求め、アクセラレーターが(企業に)どう当てはまるのかを伝えることに時間を費やした。データエコノミー向けに何かを構築していたり、Web3に向けてDiscord(ディスコード)を刷新しているときに、(企業は)自社をラグジュアリー分野のプロジェクトだとは考えないかもしれないが、ラグジュアリー分野には計り知れない機会がある」。
将来のコラボの鍵になるデータエコノミー
ブランドがラグジュアリー分野で多く経験を積むにつれて、スタートアップとの将来のコラボレーションの鍵となるいくつかの側面が明らかになっている。「その一例には、ラグジュアリー関連のデータエコノミーがあるだろう」とレゼンスキー氏は語る。「ブランドとクライアント間のデータ関係を最適化し、深化させるテクノロジーだ。レガシーのCRMシステムと連携したり、Web3用のCRMシステムを刷新したり、Web2とWeb3のデータストリームを統合して顧客に関する知識を強化するものかもしれない」。
グッチ(Gucci)やアディダス(Adidas)など多くのブランドはすでに2年以上Web3に関与しており、データの取得と管理の重要性はますます高まっている。メタバースデータプラットフォームのGEEIQ(ギーク)は、アクセラレーターの企業ではないが、グッチなどのブランドのデータニーズに直接対応して人気を集めている。
「一部の企業はWeb3ですでに確立しており、コミュニティを構築し、ドロップやエンゲージメントを行っている」と述べているのは、ファーフェッチの製品イノベーション担当シニアディレクターであり、同社のドリームアセンブリー担当リーダーでもあるキャロル・ヒルサム氏だ。「今、そのような企業は(Web3での運営を)進化させる方法、そして(Web3運営を)日々管理する方法を検討しているところだ。さらに幅広い機会と拡張可能なソリューションに対して企業は準備ができている」。
アクセラレーター内のスタートアップの例
現在、ドリームアセンブリーアクセラレーターには、Web3分野とその他の主要分野のスタートアップ7社が含まれている。デコマース(Decommerce)はプロトコールベースの企業で、ブランドが自社の没入型体験内でコミュニティをホストし、コミュニティに関与して、報酬を与えられるように支援する。ナンバーズプロトコール(Numbers Protocol)は、デジタルメディアの透明性のある追跡・認証・出所を提供するブロックチェーンソリューションであり、デジタルメディアエコシステム内での完全性を確保して信頼性を促進する。ラグジュアリーブランドにとってIPはとても重要な要素であり、AIの出現に伴いデジタルメディアの出所が非常に重要になっている。また、Web3コマース企業のスピン(SPIN)も含まれている。同社はAR・VRのプラグアンドプレイの3Dオンチェーンデジタルエクスペリエンスを提供し、それによりフィジタル製品の運用・コンテンツ・データ管理すべてを単一のプラットフォームで合理化している。
ドリームアセンブリーの注力要素と課題
ドリームアセンブリーは、コミュニティインフラストラクチャーとコンテンツエクスペリエンスを専門とする企業も探し求めた。レゼンスキー氏は次のように述べている。「デジタルコミュニティをどのように形成するか、コミュニティ間でどのようにやりとりするか、そのようなコミュニティに参加するとどのようなデジタルユーザーエクスペリエンスが得られるかということが重要だ。また、クリエイターエコノミーのための新しい共創モードとその共創に対するインセンティブを再調整して、コンテンツと配信の新しい方法を生み出す方法についても検討している」。
ドリームアセンブリーはさらにWeb3要素を通じてラグジュアリーにおける持続可能性を高めることを目指している。これには、ファッションアイテムのライフサイクルの延長、循環型ファッションシステム、二次販売、ラグジュアリーレンタルを支援できるブロックチェーンのもっと標準的なユースケースが含まれる。
ヒルサム氏によると、現在、ブランドらはWeb3プロジェクトに資金を供給するための異なる方法を模索しているという。「これまでのトレンドは、NFTの販売によって企業やそのWeb3プロジェクトに資金提供するというものだった。これは、将来、(Web3)エコシステム内において現実的なものではなくなるだろう。その代わりに、ブランドはトークナイゼーションの機会を検討したり、Web3形式の事業化を通じて価値を創造することを考えている」。
ドリームアセンブリーのリーダーらが直面した課題のひとつには、アクセラレーターに応募してくるスタートアップ企業の多くが製品ベースではなくサービスベースだったことがある。「我々は、ベンチャー規模の利益を生み出す可能性も秘めた、拡張性が十分にあるプロジェクトに投資する必要がある。つまり、テクノロジー製品が必要とされているのだ」とレゼンスキー氏は述べている。
ヒルサム氏は次のように語っている。「スタートアップに対して、我々は、Web3戦略は業界全体においてあまり一貫性がないというアドバイスをしている。ブランドもWeb3分野について非常によく理解している。ラグジュアリーブランドはいずれも独自の製品を提供しているし、ラグジュアリーは混雑した分野なので、スタートアップは製品の技術面や詳細についてさらに掘り下げる必要がある」。
[原文:Farfetch’s Dream Assembly accelerator is evolving]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)