「 CTV / OTT は、マーケティングに大変革を起こす」:Adjust 佐々直紀氏

DIGIDAY

日本国内でも、CTV(コネクテッドTV)とOTT(オーバー・ザ・トップ)の存在感が徐々に高まりつつある。

CTVとは、インターネットに接続することができるテレビ端末の総称。OTTは、日本ならば、Netflix、Hulu、Amazon Prime Video、TVer、YouTube、ABEMA、Disney+など、インターネットを通じてストリーミング配信される音声/動画などのメディアコンテンツを指す。

「コロナ禍の影響もあり、CTV広告費は急増し、この市場は驚異的なスピードで拡大した」と、モバイルマーケティング分析プラットフォームのAdjust(アジャスト)で日本ゼネラルマネージャーを務める佐々直紀氏は語る。「広告インベントリも今後加速度的に増えていくことは間違いない」。

国内シェア約7割と、No.1のモバイルマーケティング分析プラットフォームとして存在感を示す Adjust は、こうした潮流にいち早く対応し、国内CTV/OTT市場の活性化を牽引しようとしている。佐々氏に、日本におけるCTV/OTTの可能性、そしてAdjustが見据えるデジタルマーケティングの今後について訊いた。

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――CTV/OTT広告市場は、国内外において、大きく普及しつつあります。具体的に、どのくらい広がりを見せていますか?

米国のデータとなりますが、2019年時点で77億ドル(約9000億円)の広告市場が形成されており、このまま順調に成長すると、2025年には259億ドル(約3兆円)規模に到達すると予想されています。また、2024年までに、同国内では1億1300万世帯に普及するというレポートもあります。

日本では、SMN/デジタルインファクトの調査によると、2019年の広告市場規模は63億円でした。2020年は102億円、2021年は175億円、2024年には558億円となると予測されています。世帯普及数で見ると、2021年に2513万世帯に普及しており、2025年には3161万世帯まで拡大するという予測も。順調に成長していますが、正直なところ、米国に比べればまだまだ市場が小さいのは事実です。

日本におけるOTTサービス数は非常に多いですが、広告インベントリという観点で見れば、OTTサービス上で広告を出しているサービスと、出していないサービスがあります。また、広告フォーマットも海外と比べると種類が少ない。そういった点からも、まだまだ日本では広告インベントリが限られている状況にあります。

しかし、この市場の拡大スピードから見れば、広告インベントリは今後加速度的に増えていくことは間違いなく、そこを我々が牽引していきたいと思っています。

――なるほど。では、日本におけるCTV/OTTのキャンペーンで利用できる広告フォーマットには、どのようなものがありますか?

基本的には「事前に表示される広告」「途中で挿入される広告」「視聴後に表示される広告」の3種類です。現時点でのバリエーションは、ここに「広告をスキップできる/できない」の選択肢があるくらいです。

海外では、「視聴を一時停止したときに広告が出る」「メニュー画面に広告枠がある」「広告枠内の複数の広告から見たいコンテンツを選択できる」など、多様なフォーマットがあります。今後徐々に日本にも導入されてくるでしょう。

――欧米と比べて、まだまだ発展途上なんですね。では、キャンペーン事例で興味深いものがあれば教えてください

日本では、アプリストアのロゴを表示してストアに誘導する広告が多く、まだCTVの利点を最大限に活用した形での広告活用ができていない印象があります。

海外だともっとストレートに、アプリのダウンロードを促す広告が目立ちます。非常に話題になったものにバーガーキングのCTV広告があげられるでしょう。これは、広告画面に表示されたQRコードをスキャンしてアプリをダウンロードした人に、ハンバーガーのクーポンをプレゼントするというキャンペーンです。

また、メルセデス・ベンツのCTV広告では、メニュー画面上の広告枠を活用しています。複数の広告を提示し、ユーザー自身に興味のある広告を選んで視聴してもらうというものです。自主的に選んだ広告を見たユーザーは、ほかの広告も続けて見る傾向があります。今後の発展が楽しみなフォーマットです。

――とても興味深い。そうした事例を踏まえて、CTV/OTTの日本での可能性をどう捉えていますか?

CTVの最大の特徴は、デジタルならではの詳細な計測が可能であること。それによって、これまできちんと計測ができなかったがゆえに停滞していた領域が、あらためて注目領域になると思っています。ひとつはリニアテレビの広告、もうひとつはアプリ広告です。

リニアテレビ広告、いわゆる従来のテレビCMは、大スクリーンと音声でユーザーに強い印象を残します。インパクトのあるマーケティングを展開できるという点では、ほぼCTV広告と同じユーザー体験を提供することができると言えるでしょう。しかし、明確な効果測定を出すのが難しいために、ブランド認知以外の使い方ができず、近年は広告予算も削減の一途でした。しかし、しっかり計測ができるCTV広告の成果をベースにすれば、リニアテレビ広告も成果を類推することができ、これまで以上に戦略的な活用が可能になります。

また、CTV広告の詳細な計測結果は、特にアプリ業界で大きな可能性をもたらすと見ています。Adjustグローバルの調査によると、67%のユーザーがスマホ片手にCTVを視聴していることがわかりました。つまり、デュアルスクリーニングでCTVを視聴しているのです。

リニアテレビでも、テレビで見た情報を手元のスマホで検索して、調べたり、商品を購入したり、アプリをダウンロードするのはよくあることですが、その行動をきちんと計測できないという弱みがありました。しかし、CTV広告ならば、その効果をしっかり見ることができる。この効果はアプリ業界では特に大きいはずです。

また、リニアテレビの広告は国内向けに限定されますが、CTV広告の場合、OTTサービスの選択によって、従来よりももっと手軽に海外へ出稿していくことも可能になります。

――Adjustが2021年10月に発表した「コネクテッドTV広告計測」では、CTV広告の計測機能がさらに強化されました

そうです。この「コネクテッドTV広告計測」では、従来の計測ではミッシングポイントが発生することが多かったCTV広告経由のアプリインストールに関して、クロスデバイスでの計測が可能になりました。

具体的には、CTVで広告を見て、手元のスマホでアプリをインストールした場合に、このインストールが計測できるようになっています。デバイスをまたいで計測できるのは画期的なこと。これによってアプリキャンペーンのインストール促進で、CTV広告がどのくらい効果を生み出しているのかがしっかり見えるようになりました。

念のため補足しておくと、この計測機能ではCTVとスマホの所有者を特定しているわけではありません。CTV広告が流れたデバイスと、スマホのデバイスの使用環境から、個人を特定することなく、同一環境であることを推測してマッチングしています。

また、「コネクテッドTV広告計測」は、従来からあった「Adjustマルチタッチ」というソリューションを併用することで、さらに深い効果分析が可能になります。

ユーザーは、いろいろな広告を目にしつつも、最終的に、最後に背中を押す広告を見て、行動を起こすことが多い。Googleの広告を見て、Twitterの広告を見て、そしてFacebookの広告をクリックして、そこでアプリを最終的にインストールしたという流れなら、我々は最後にクリックしたFacebook広告がインストールに直接的に貢献したと判断します。「Adjustマルチタッチ」は、それに加えて、そのラストクリック以前に、どのような広告に触れていたのか、ユーザーのジャーニーを知ることができる機能です。

「コネクテッドTV広告計測」のリリースによって、「Adjustマルチタッチ」で辿れるジャーニーのなかに、CTV広告も含まれるようになりました。たとえば、スマホでFacebook広告を見る前に、CTV広告にも接触していたら、CTV広告がFacebook広告へアシストしていたのかもしれない。そうした評価もできるようになっています。

――「コネクテッドTV広告計測」は、細かな貢献度も測れるのですか?

はい。OTTごと、クリエイティブごとに、貢献度を測定することもできます。同じOTTにクリエイティブA、クリエイティブBを出稿した場合、広告を見てアプリをインストールしたユーザーのLTVやアプリ内行動を、AとBで比較することができます。

ユーザーが利用前にアプリやサービスをきちんと理解していればいるほど、その後の利用率やLTVは増加するという相関関係があります。マーケティング活動では、そういう基点ごとのパーセンテージを少しずつ上げることで、最終的なゴールが大きく変わってくる。だからこそ、細かな数値分析ができることで、将来的な施策も予測しやすくなるし、具体的に取り組みやすくなるはずです。我々の「コネクテッドTV広告計測」が、企業とマーケットのグロースに貢献できれば、非常に嬉しいと思います。

佐々直紀/Adjust 日本ゼネラルマネージャー。1974年生まれ。2000年4月からデジタルマーケティングに携わり、オンラインモールのキュリオシティ、Yahoo!ショッピング、ショッピングサーチビカム、リターゲティング・DMPのVizuryにてAE、AM、マーケティング業務を経験。2016年1月からTUNEの日本法人の立ち上げメンバーとして、本格的にアプリ計測分野に参入、2016年11月よりAdjustに参画。数々のスタートアップの立ち上げから軌道に乗せた経験を生かし、日本ゼネラルマネージャーとしてAdjustの日本オフィスを統括している。

――Adjustの「コネクテッドTV広告計測」は、日本のデジタルマーケティングにおいて、どのような価値を発揮できるでしょうか?

昨今の個人情報保護強化の流れから、マーケティングデータが取得しにくく、ターゲティング精度を維持するのが難しい状況になってきています。その流れのなかで、マス広告への出稿を再検討する動きもあります。それを下支えしているのがCTV/OTTの隆盛であり、計測技術の進化です。

2022年2月、AdjustはABEMAとの連携を発表いたしました。日本でもっともポピュラーなOTTサービスのひとつ、ABEMAの広告がアプリインストールやリエンゲージメントにどれだけ貢献したかを計測することができます。さらに連携パートナーを増やし、日本のマーケターへの選択肢の幅を広げ、業界全体を活性化させたいと思っています。

そして、CTV広告でキャンペーン成果が明確に測れるのであれば、ユーザー体験がほぼ同じリニアテレビCMの成果も類推することができるのではないか。そのようにマーケターが考えるのは当然です。我々の「コネクテッドTV広告計測」を活用したCTV広告経由で、改めてマスマーケティングであるリニアテレビCMに注目が集まるという流れも、きっと出てくると思っています。

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Written by DIGIDAY Brand STUDIO(内藤貴志)
Photo by 渡部幸和

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