空腹のマウスが食べることよりも交尾を優先することがあるという研究結果が報告される

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一般的な動物は食事や繁殖といった本能的な行動に従うと考えられていますが、ケルン大学病院のタチアナ・コロトコワ氏らの研究チームは、空腹状態にあるマウスに対して、食欲の制御を行う「レプチン」と呼ばれるホルモンを生成する脳の受容体を持つニューロンを刺激すると、マウスは空腹状態にもかかわらず異性のマウスとの交尾を優先することを明らかにしました。

Complementary lateral hypothalamic populations resist hunger pressure to balance nutritional and social needs: Cell Metabolism
https://doi.org/10.1016/j.cmet.2023.02.008


Eat, Drink or Mate? Here’s How Mice Decide
https://longevity.technology/lifestyle/eat-drink-or-mate-heres-how-mice-decide/


Mice Choose Sex Over Food, Even When Hungry | Technology Networks
https://www.technologynetworks.com/proteomics/news/mice-choose-sex-over-food-even-when-hungry-370522

研究チームはマウスにおける本能的な行動の階層を解明するために、食欲や喉の渇きに関連する「摂食センター」と呼ばれる脳の視床下部内のニューロンの研究を行いました。

研究チームは、マウスの本能的な行動が空腹レベルによってどのように影響を受けるか調べるため、エサに無制限にアクセスできるマウスとほぼ24時間摂食を制限されて適度に空腹なマウス、5日間摂食を制限された慢性的に空腹なマウスの行動を比較しました。その際、光を用いて標的となるニューロンを制御する「オプトジェネティクス」と呼ばれる手法を使って、レプチンの受容体を持つニューロンを刺激して活性化させると、ほぼ24時間摂食を制限されたマウスは、空腹状態にあるにもかかわらず、エサを食べることよりも異性との交尾を優先する傾向が見られました。

一方で5日間にわたってエサの摂取が制限され、慢性的な空腹状態にあるマウスは、レプチンの受容体を持つニューロンをオプトジェネティクスで刺激しても、仲間とのコミュニケーションや交尾よりも食べることを優先する傾向がありました。


研究チームは当初、レプチンが空腹感を抑えたり、代謝のシグナルに反応したりするのに不可欠だと考えており、マウスにおけるコミュニケーションや交尾の促進の役割を果たすとは考えていませんでした。しかし、動物の体が満腹になると、ニューロンでレプチンが生成されることから、食欲が抑制され、食物だけでなく他の興味に目を向けることができます。そのため、レプチンを生成するニューロンを刺激して活性化させると、マウスは交尾などを行ったとされています。

一方で、喉の渇きに関連する「ニューロテンシン」を生成するニューロンを刺激したところ、どの状態のマウスも水を飲むことを優先して、コミュニケーションや交尾を優先するマウスは確認できませんでした。

コロトコワ氏は「私たちはこれまで、1つのニューロンが特定の1つの機能を有していると考えていましたが、実際には、1つのニューロンが複数の異なる機能を持っていることが判明しました」と報告し、「同じニューロンや細胞で複数の機能を持って行動を調整する方が、生物学的に非常に効率的で、理にかなっています」と述べています。


ニュースメディアのLongevity.Technologyは「今回の研究の結果をマウスとは異なる、人間の行動に一概に当てはめることは困難ですが、過食症などの摂食障害を持つ人々を救う手がかりとなる可能性があります」と述べています。

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