ChatGPTの登場以来、AIを利用したマーケティングが業界中で最新の話題となっている。無数の広告エージェンシー、アドテクベンダー、プラットフォームがこの数カ月、AI武装レースでしのぎを削り、メディアバイの最適化(オプティマイゼーション)、クリエイティブなキャッチコピーの作成、分析予測にAIを活用しようと躍起だ。
この急成長中の分野における先駆的存在のひとつが、GoogleのAIプロダクトであるP-MAX(パフォーマンス最大化)である。Googleがこれを全世界に公式リリースしたのは2021年11月のことであり、その目的は1回のキャンペーンで、YouTube、ディスプレイ、検索、Discover、Gmail、マップのすべての広告枠を買えるようにすることにあった。以来、Googleはキャンペーンの施策判断ができるよう、A/Bテストをはじめ、新たな機能を増やしている。
ただし、同プログラムが提供すると思われるそうした最適化をすべて考慮してもなお、これはGoogleの全広告プログラム中、随一のブラックボックスであり、主導権を広告主ではなく、Googleが握れるようにしていると、アドエクスチェンジャー(AdExchanger)はいう。
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GoogleのAI武装レースにおける適性、広告主への売り込み、P-MAXの今後の展開について、DIGIDAYが同社の北中米およびグローバルパートナー部門のトップであるショーン・ダウナー氏に話を聞いた。
読みやすさを考慮し、発言には多少編集を加えてある。
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――GoogleのP-MAXが広告主に提供するものとは、具体的に何か?
目に見えて明らかなとおり、多くのリテーラーがいまやマーケットプレイスで新時代のテクノロジーを介して、なおいっそう効率的に仕事をし、顧客とのよりよい関係性を築く術を見つけている。しかも、彼らは消費者の動きに呼応してそれをしている。顧客行動に対応しており、それをより効率的にするためにAIツールを活用しているのだ。
P-MAXは、1回のキャンペーンで広告主がGoogleの全広告インベントリにアクセスできるようにした。前月や前年の支出先に基づき、あらかじめ計画したサイロでのみ展開させるものではない。消費者がいまその瞬間どこにいるのかを重視し、そこを軸にして最大のインパクトを残させることができる。
――AI武装レースが激化するいま、それを広告主にどう売り込んでいる?
顧客が何を望んでいるかを知ることから始めるのが我々の常であり、まずは耳を傾ける。いま現在、リテール業界が望んでいるものは何と言っても成長、そして効率だ。そこで我々は、これらのプラットフォームがそれにどう役に立つかを具体的に伝える。我々は、複数のソリューションをひとつにまとめたいと思っている。
AIにはいくつかのことができると伝えている。御社のために分析ができる、予測を立てられる、そして別の諸々から何かを創造すること、つまりジェネレーティブ(生成的)なことができる、と。たとえば、分析と予測にフォーカスすれば、我々は彼らの疑問の解消に大いに寄与できる。
――P-MAXの売りのひとつは自らの最適化であり、それゆえ、買い手に最適化の選択肢がないブラックボックス的な存在でもある。広告主にもっと主導権を与える計画はあるか?
広告主が何を望んでいるのか、我々のツールをどう活用できるのかを知るべく、我々は常にフィードバックに耳を傾けている。いまは、広告主の要望や疑問を精査している段階だ。まだマーケットプレイスに参入したばかりであり、広告主にはアクティビティを推進するのに、P-MAXと彼ら独自のツールの、どちらでも好きな方を活用してもらっている。
どちらが彼らにとって最適なパフォーマンスを推進できるのか、比較してもらっているところだ。今後については、我々がさらに深く踏み込んでいくなかで、より大きな顧客およびリテーラーの声に耳を傾けていくのは間違いなく、その反応に基づいて適応していくことは十分に考えられる。
――P-MAXの「ブラックボックス性」に対する広告主の懸念、加えてGoogleの対応は?
広告主には結果を示し、どこでパフォーマンスが推進されたのか、P-MAXがどう機能するのか、ある程度見えるように努めている。確かに、彼らには条件をあらかじめ設定させてはいない。彼らは前もってフォーマットを選んではいないが、ある程度の安心感は得られるよう、何が機能して、何が機能していないのかがわかるバックエンドの情報は伝えている。
さらに一歩踏み込めば、御社の目標に適ったのか、この結果に満足しているか、という話になる。ただし、その類の話し合いになるときはたいてい、顧客はそうしたツールの利用に非常に満足してくれている。
――広告主が主導権をもっと握れるように努めているか?
P-MAXはコンバージョンに基づいた結果と適正化にフォーカスしている。広告主がキャンペーンに制限/条件をあらかじめ付け過ぎてしまうと、その目標への到達が阻害されかねない。実際、顧客とはよくそういう議論になるが、我々は彼らのフィードバックに常に耳を傾けている。そして、それを聞いたうえで、同じ類の結果が得られるよう、理に適うかたちで、我々が主導権を握るようにしている。
ただ、議論と言ってもきわめて柔軟なものであり、我々の望みはあくまで顧客の成功だ。彼らが利用するテクノロジーが何であれ、それに対して安心や満足感を得られるように努めている。そうした透明性も、我々はきわめて重要視している。
――広告主が握れる主導権のかたちとは、具体的に何か?
いまは多くのフィードバックを精査しているところだ。まだ、P-MAXの運用開始(A/Bテスト)段階でしかない。すでに多くのリテーラーが関わってくれおり、参加を考え始めている広告主はほかにもたくさんいる。まずは彼らと何サイクルか試し、次の段階を始めるのはそれからになると思う。変更を加えるのがいつなのかを口にするのは、時期尚早だ。いずれにせよ、いま現在、マーケットプレイスにあるツールが基本になると思う。今年いっぱいは、フィードバックを収集することになるのではないだろうか。
――AIが進化するなか、御社はどのような計画を立てているか?
広告ツールの未来を考えれば、そこには必ずAIの存在があり、AIにはビジネスの成長に寄与できる巨大な可能性があるのは、間違いない。さらに多くのテクノロジーにアクセスできるようになるなか、我々はその成長を後押しするキャンペーンやツールにクリエイティブな価値を付与できる術を引き続き探していく。
弊社のプロダクトについては、適正化をさらに進めるため、クリエイティブの役に立つため、あるいはメッセージングの役に立つためのさらなる利用法を考えていきたい。大局的に機能すると広告主が思うものがあれば、我々としてはそれをツールに取り入れていく。もちろん、革新の鼓動は高らかに鳴り響いており、我々は常にそれに合わせて動いている。今後、機能すると思えるものがあれば、それは必ずローンチしていくだろう。
[原文:Why Google says its AI-powered Performance Max isn’t another black box solution]
Kimeko McCoy(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)