「非常事態なのに、状況を傍観している人が多い」: サードパーティCookie の廃止延期について、あるアドテク企業幹部の告白

DIGIDAY

Googleは今年7月、ChromeブラウザでのサードパーティCookieの廃止を再び延期したが、予定の先送りはこれが最後にはならないと考える人たちもいる。

Appleのように、プライバシーに関する大規模な変更で業界の形を変え始めている企業がある一方で、Googleの規模と影響の大きさから、アドテク業界は今も曖昧な状態に置かれたままだ。

匿名を条件に本音を語ってもらうDIGIDAYの「告白」シリーズ。今回はアドテク企業の上級幹部に、今の曖昧な状態、この状態がクライアントとの関係に及ぼす影響、そして業界の変化に向けて望んでいることについて話を聞いた。

なお、読みやすさを考慮して、若干の編集を加えてある。

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――Googleは今年7月にサードパーティCookieの廃止を再び延期したが、その影響は広がっているのか?

興味深いことに、大規模データベンダーのなかからは、DSP(デマンドサイドプラットフォーム)の新規顧客の獲得を控えているという話が聞こえてくる。彼らはまるで、(自分たちの)世界が崩壊するのをただ待っているかのようだ。

なかには非常に大きな企業もあるが、「今後の事態を見越して、自社のデータマーケットプレイスに新たな顧客を取り込むのを見合わせている」といった、なんとも素っ気ないメールを送ってくる。このエコシステムには、お手上げ状態の人たちがいるらしい。

――その理由は?

多くの人が次に何が起こるかわからないと感じており、率直にいえば、恐れをなしているのだと思う。なかには、未来志向になるべく、ユニファイドID(UID)のような取り組みに励んでいる企業もあるが、お手上げ状態で死を待つばかりというのが一般的な感覚だ。また、様子見を決め込んでいる企業もある。

彼らは、見た目を変えた何の解決策にもならない怪しげなものを売りつけるだけで、変化を起こす気はまったくなさそうだ。

――再延期がクライアントとの会話に及ぼしている影響は?

アドテクはおそらく、銀行と同じくらい顧客への共感が最も低い業界だろう。数百万ドルのお金が顧客とベンダーのあいだで動いているにもかかわらず、彼らが互いに話をすることは本当にない。さまざまなプレイヤーがどのように事業を運営しているのか、互いにわかっていないのが当たり前なのだ。

アドテクベンダーの多くは、再延期に対する適切な解決策を持っていないため、ブラックボックスを売っているに過ぎない。そして、そこには多くの誇大宣伝がある。つまり、義務を果たしていないベンダーが大勢いるわけで、これは良い状況とは言えない。

エージェンシー側には、状況を理解しようとする素晴らしい会社がたくさんある。とはいえ、彼らの多くは明確な答えを求めておらず、突っ込んだ質問をすることはないようだ。知識不足や自己保身から、まるで「そういうことは聞いていない」といわんばかりに、回答を額面どおりに受け取ろうとしたがる。X人にリーチすることが目的であれば、アドテクの誰かから「X人のオーディエンスを獲得している」といわれても、その獲得方法について掘り下げた質問をしたり、厳しい質問を投げかけたりすることはない。なぜなら、その日の終わりに、クライアントに対して「我々はX人のオーディエンスを獲得するためにこのような取り組みを行った」と話すことができるからだ。

――Googleがこのような曖昧な状態を続けていることに、人々はうんざりしている?

もちろんだ。誰もが待ちくたびれていると思う。状況がわかるまで計画は立てられない。だが正直なところ、Googleへの関心はそれほど高くない。たいていの人は、GoogleよりもAppleにいら立ちを感じている。Googleは、このようなギャップを埋め、あらゆる人にとってうまくいくように、誠実な取り組みを数多く行っているように見える。

Appleに対する一般的な見方は、金儲けのためにプライバシー重視の姿勢を打ち出しているというものだ。Appleが自社のプライバシー戦略で誠実な取り組みをしているという業界の声は聞いたことがないと思う。Appleが行っているのは外部からのアクセスを減らすことであり、彼らは自社デバイス(へのアクセス)から利益を得ようとしている。

――将来的にコントロールが効かなくなれば、対処が難しくなるのは間違いなさそうだが。

そのとおり。「新規顧客の獲得を控えている」というようなベンダーは、手をこまねいているだけだ。なかには、UIDのような革新的な取り組みをしているところもある。だが現状は、一定方向への流れが急な川の真ん中で立ちすくんでいるような感じだ。しばらくは、この岩にしがみつくしかないだろう。そこは以前のような場所ではない。かつていた場所には決して戻れないのだ。

そのような場所に案内できるなどという人は、おそらく嘘をついているか違法なことをしている。睡魔に負けて岩から手を離してしまうのは時間の問題だ。私としては、対症療法ではなく、システムの根本的な作り直しが増えることを望んでいる。非常事態であるにもかかわらず、待ちの姿勢でいたり、状況を傍観したり、パーティーに興じたりしている人が多い。

――業界の変化をよりスムーズに進めるために、人々に望むことは何だろうか?

悲観的な話ばかりではない。興味深いことに取り組んでいる人々がおり、少しずつ改善に乗り出している。問題は時間だけだ。「ほら、プライバシーを軽視するほうがいいに決まっている!」というような人はいないし、消費者が望んでいるようなことでは決してない。

そうした状況は、誰にとっても満足できないものだ。私が望んでいるのは、業界が思い込みから脱し、パブリッシャー、アドテク企業、広告主のそれぞれにとって役立ち、期待値を平準化するものを、新たな常識として有意義に受け入れてほしいということだ。以前ほど良い成果は得られないだろうが、どうなるかはこれからわかるだろう。私は、これからも良いもの、素晴らしいものができると思っている。

あらゆるプレイヤーが発言し、最終消費者のプライバシーがこれまで以上に尊重されるようになれば、業界はより良い場所に変化すると私は期待している。

[原文:‘A lot of waiting, watching and partying while Rome burns’: Confessions of an ad tech exec on the third-party cookie delay

Kristina Monllos(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:黒田千聖)

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