Advertising Week Asia 2023が6月6日〜6月8日の3日間、東京ミッドタウンで開催される。3年ぶりのリアル開催が復活した昨年に続き、今年もリアルとオンラインのハイブリッド開催となる。
今回からAWAは、国内最大級のマーケティングカンファレンスであるad:tech tokyoのメンバーも加えた新体制にて開催される。アジアおよび国内最大級の2つのイベントが協働することにより、AWAのさらなる進化と深化が期待されるところだ。
DIGIDAY[日本版]では、新たなフェーズを迎えたAWAがこれから向き合うべきマーケティング領域のトレンドや取り組むべき課題、AWAを含めたマーケティングカンファレンスのあるべき姿について、日本のカウンシルメンバーであるアクセンチュアの黒川順一郎氏、Wunderman Thompson Tokyoの新沢崇幸氏、アフラック生命保険株式会社の澤村環氏、株式会社インフォバーンの田中準也氏の4名からコメントをもらった。
Advertisement
※DIGIDAY[日本版]は、「Advertising Week Asia 2023」のメディアパートナーです。
◆ ◆ ◆
顧客とブランドの未来に向けた関係の模索を
アクセンチュア株式会社 執行役員 アクセンチュアソング本部統括本部長 黒川 順一郎氏
現在、業種・業界を問わず多くの日本企業が変革に挑んでおり、新事業・新サービスを世に出したいという機運の高まりを感じている。経営層は自社と顧客の関係性をより強固に、より長期的関係性へと発展させたいという想いを強くしているようだ。
これまで企業の多くは「顧客=消費者」と考え、購買の瞬間や購買に対する認知のみに注目したワンショットの関係性に目が行きがちだった。しかし、これからは顧客を生活者と捉えて、「そのブランドが生活者の価値観や人生にどう寄り添うか、いかに未来に向けた関係性を構築するか」が重要になるだろう。
人は多面的で複雑な存在だ。ときにはその矛盾にも寄り添いながら、長期的な関係を築くために、顧客に接する機能を起点としてビジネスを変革するべきだ。その実現のためには、データに基づいたクリエイティブなアプローチとデジタルを使用した実装が必要で、また状況に応じて柔軟に運用を進めていくことが必要だと考えている。
マーケティング部門に対する変革も求められるだろう。CMOやマーケターには今後、企業内や業界内での慣例を打ち破り、革新的な新事業を立ち上げ、収益化へ導くという重要な役割が期待される。
デジタルの世界だからこそ、「体験」の価値を実感してほしい
Wunderman Thompson Tokyo チーフクリエイティブオフィサー 新沢 崇幸氏(JAAA選出カウンシルメンバー)
この数年で人類が成し遂げたデジタル化の進歩には改めて驚かされる。人と会うときに場所を指定して移動する必要はなくなり、紙の書類の使用は「古さ」「環境への無配慮」と同義となった。デジタルな世界でのビジネスは国を越えてオープンになり、市場も競合も世界中にある。そこに対応できるビジネスだけが生き残れるのであり、それが我々が置かれている世界だ。
Advertising Week Asiaは、世界中の優れたマーケティングの知見が集まる場所だ。とくに我々と文化の近いアジアから得られる優れた知見は、ほかのセミナーではなかなか得られないものといえる。
フラット化した世界で勝敗を分けるのは「優劣」ではなく「違い」だ。成功しているYouTuberは人間として優れているわけではなく、人と違うことをやっているから成功している。人も企業も、固有性にこそ人は惹かれるのだ。
あらゆるブランドの、それぞれ異なる取り組みを体感するには、会場に足を運ぶのが一番だろう。オフラインイベントの最大の価値は、同時に違う体験をして、感覚的に比較できること。情報を網羅的に獲得するには、自身の足を使ってその身で体感するのが一番の近道だと考えている。
不確実な時代にこそ、「学び」と「気づき」に基づく人材育成が必要
アフラック生命保険株式会社 顧問 澤村 環氏(JAA選出カウンシルメンバー)
超VUCAの時代と言われるいま、変化が激しく不透明だからこそ、その変化に適応し未来に向けて新たな価値を創出する人財の育成が、企業にとっても重要なアジェンダとなっている。
マーケティングを軸にキャリアを進めてきた私自身も、狭義のマーケティングから脱却し、顧客視点で事業活動全体を再設計する改革を担える人財、チームの育成が急務と感じている。私の所属するアフラックにおいても、変化の激しい時代に柔軟かつスピーディにお客様へ価値を提供していくための取り組みとして「Agile@Aflac」を2019年に掲げた。
これはマーケティング部門だけでなく、営業、ITや契約サービス部門から若手社員を集め部門横断型のチームにし、エンパワーメントすることでカスタマージャーニー上のペインポイントの迅速な解消と、未来価値創造をリードする人財の育成につなげているものだ。
不確実な世界を前にして、DXを活用しながら課題発見、課題設定、課題解決のためのスキルを磨くためには、リスキリングによる学びと並行し、実務のなかでその学びをアウトプットしていくことが重要といえる。
今年のAdvertising Week Asiaが、参加するマーケターにとって企業や業界の枠を超えて、社会課題と向き合い、日本の未来価値を創造する人財の育成に向けて多くの気付きを得る場となることを期待したい。
Advertising Week Asiaを五感で感じ、確固たる「個」を引き出す
株式会社インフォバーン 代表取締役社長 田中 準也氏
ある一定の知識や知見を習得する目的のためには、オンラインウェビナーなどは手段として最適なものと言える。だた、どうだろう。視聴者とのインタラクションが少ないものだと、動画アーカイブがあれば「後で観ればいいか」となりそうな気もする。それだけ、マーケター、クリエイターはとても忙しいものだ。
一方でオフラインのイベントは、コロナ禍をへてオーディエンスの腰が少々重くなっているものの、そこにはオンラインでは叶わない圧倒的な情報量がある。五感で感じるものすべてに「学び」があるからだ。
学習とは「学ぶ」と「習う」からなる熟語だ。「慣らう」が語源と言われる「習う」は指導者が必要で、具体的な技能を身につけることを目的としているが、「真似ぶ」が語源と言われる「学ぶ」は能動的で、抽象的なものや経験から得ていくものだ。ここ数年の社会の変化に対して、アドバタイザーも従来のビジネスパートナーとのスキームだけでは足りなくなり、パートナー各社も従来のビジネスモデルが維持できなくなってきているといえる。
これからは、所属する会社のメソッドやフレームワークのみならず、AIも含めさまざまな打ち手を俯瞰でとらえて、プロダクトやサービス、コミュニケーションを創造していくニュータイプのマーケターやクリエーターが、アドバタイザーにもパートナーにも必要だ。
そこには「個」の強さを引き出す知性と教養が求められることだろう。Advertising Week Asiaというイベントは、マーケター、クリエーター諸氏が垣根を超えて語り合う場を提供してくれる。知性を磨き、教養を身につけ、混沌とした時代をワクワクするような世の中に変える自分を見つけにいこう。