「 ディオール にとって重要なのは、発明して、美容のパイオニアになること」:LVMHの研究責任者が語る

DIGIDAY

3月下旬にモナコで開催された第21回エステティック・アンド・アンチエイジング・メディスン世界会議において、ディオール ビューティーは国際リバースエイジング科学諮問委員会を設立したことを発表し、脚光を浴びた。この委員会は600人の研究者と18人の専門家で構成されている。

リバースエイジングの研究は大流行しており、医療企業や美容ブランドはアンチエイジングよりも新しくて高度なコンセプトを利用する方法を模索している。

ディオール、リバースエイジング委員会を設立

3月下旬にモナコで開催された第21回エステティック・アンド・アンチエイジング・メディスン世界会議(Aesthetic and Anti-Aging Medicine World Congress)において、ディオール ビューティー(Dior Beauty)は国際リバースエイジング科学諮問委員会(International Reverse Aging Scientific Advisory Board)を設立したことを発表し、脚光を浴びた。この委員会は600人の研究者と18人の専門家で構成されており、ブラウン大学脳神経システム研究所の生物学者、ニコラ・ネレッティ博士と、スタンフォード大学の1000イミュノームス・プロジェクト(Immunomes Project)のディレクターであるデイヴィッド・ファーマン博士の名もある。ディオール自体のリサーチも、幹細胞、炎症、細胞間コミュニケーションに関する加齢医学の知識ベースに追加される。目的は、ゲノム不安定性、エピジェネティクスの変化、幹細胞疲弊、慢性炎症など加齢の12の兆候をさらに理解することだ。LMVHのR&D担当副社長、ブルーノ・バヴーゼ氏によると、ディオールは加齢の兆候を逆行させるために(リサーチで得た)知識をその後スキンケア製品のイノベーションに組み込むという。同氏は、ディオール、ジバンシィ(Givenchy)、フレッシュ(Fresh)、ベネフィットコスメティクス(Benefit Cosmetics)などのLVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(以下LVMH)のすべてのビューティブランドを統括している。

バヴーゼ氏は次のように述べている。「第一の目標は、生物学的な観点から(加齢をめぐる)さまざまな経路を理解することだ。時が経てば、加齢を加速するメカニズムを解明することができるだろう。第二の目標は、化粧品(製品)で起こせる可能性のある作用と、生物学的年齢を(逆転させる)方法を特定することだ」。

バヴーゼ氏は、ディオールがリバースエイジングを追求する理由や、諮問委員会から得られるもの、「集合知アプローチ」が意味することなどを含め、リバースエイジングの概念についてGlossyに詳しく語った。このインタビューは読みやすさのために若干編集して要約してある。

「リバースエイジング」が意味することは?

「リバースエイジングについて語るとき、我々が基本的に知っているのは実年齢は生物学的年齢とは異なるという点だ。40歳や50歳というのは確かに実年齢ではあるが、生物学的年齢と細胞の年齢はそれとは異なっているかもしれない。適切な健康習慣によって生物学的年齢を逆転できるのは医学分野ではわかっている。我々が理解していないのは、そのような加齢プロセスの仕組みとそれらが互いにどのように関連しているかということだ。(我々の研究の)最初の段階は、根底にあるメカニズムとその生物学的な複雑性、そして加齢が人によって異なる理由をさらに理解することである。

リバースエイジングは加齢の12の特徴から始まる。歴史的にアンチエイジング分野の人々はおそらく幹細胞やポリマーなどひとつのアプローチに取り組んできた。だが、(リバースエイジングやアンチエイジングのための)最善のアプローチは総合的なものだと我々は考えている。しかし、これは複雑かもしれない。生物学的発見とビッグデータが進歩したおかげで、我々は複雑な情報を(処理)できるようになっている」。

委員会の目的は何か、委員会は何を行うのか?

「リバースエイジングの分野は、異なる生物学的メカニズムが影響していると考えている。また、さまざまな分野の人々が協力し合い、情報を交換し、トピック間の架け橋を築く必要があるとも考えている。もちろん社内でリバースエイジングに取り組んでいるが、その(研究を)加速したい。つまり、科学的見地からの発見と多くのデータや経験からの洞察がもっと必要なのだ。委員会は我々のリサーチに助言をしてくれる。委員会は年に数回集まることになっている。だが、年間を通じて特定のトピックについて4人程度で継続的なやり取りを行うこともあるかもしれない。私が「集合知アプローチ」と呼んでいるものを構築するためだ。(ディオールは)皮膚(リサーチ)に取り組んでおり、(委員会では)人体の専門家たちが集う。全員が皮膚の専門家というわけではないが、研究者らはさまざまな(科学的)トピックに関する研究を皮膚に落とし込むための支援をしてくれる」。

その研究にディオール ビューティーが最適なLVMHブランドである理由は?

「ディオールは常に科学にフォーカスしてきた。1980年代にリポソームを発売したスキンケア業界初のブランドだ。当時これは一大事で、大きな影響を及ぼした。ディオールと聞くと、確かにファッションやメイクを思い浮かべるだろう。だが、ディオールは常に女性をもっと幸せにする方法を考え、その発想を取り込んできた。(社歴の)早い段階において、肌の変化に作用するスキンケア製品をローンチし始めた。ディオールにとって重要なのは、ファッション業界でそうしてきたように、美容業界でも創造してパイオニアになるということだ」。

リバースエイジングへの注力を推進したものは?

「歴史的にアンチエイジングに注力していたことが継続されている。また、医学によっても導かれている。『母細胞』と考えられている幹細胞のように、医学と治療法に多くの進歩があり…同じ科学を化粧品に適用しようと尽力している。もちろん、まったく同じことはできない。だが、約10〜15年前に皮膚のマイクロバイオームに取り組み始めたときには(消化器学に)注力した研究からインスピレーションを得た。我々が行っているリバースエイジングはこれとよく似たアプローチだ」。

[原文:LVMH’s head of research: ‘What matters for Dior is to invent and be a pioneer in beauty’

EMMA SANDLER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)


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