MLBチーム・ロイヤルズが AR プラットフォームと提携した狙い:試合中のエンゲージメント向上を狙う

DIGIDAY

スポーツチームが試合当日のエンゲージメントを高めようとするなかで、スタグウェル(Stagwell)は没入感とデータ機能をより備えたAR(拡張現実)プラットフォームを拡張している。

スタグウェル・マーケティング・クラウド(Stagwell Marketing Cloud)の一部であるARプラットフォーム「アラウンド(ARound)」を持つ同社は、3月30日に開幕した2023年の米国の野球シーズンに向けてカンザスシティ・ロイヤルズ(Kansas City Royals)と提携した。同チームの本拠地カウフマン・スタジアムでお目見えした「クラウン・ビジョンAR(Crown Vision AR)」と呼ばれるアプリは、そこにいた3万8000人の観戦者を潜在的なターゲットにしたものだ。

アプリでは、試合中にコンテストやロイヤルティプログラム、ロイヤルズのほかのブランドスポンサー関連など、インタラクティブな機能をユーザーに提供する。なお、両者の金銭面およびデータに関する契約内容は明らかにされておらず、アプリをダウンロードしたユーザー数についても言及されていない。

エンゲージメント時間の伸長に成功

カンザスシティ・ロイヤルズのブランドイノベーション担当バイスプレジデントであるトニー・スネゼン氏は声明で、この技術を「次世代の野球ファンを巻き込む機会と捉えている」と述べている。

スタグウェルのアラウンド・プラットフォームと提携するプロスポーツチームはこれで3つ目となる。2022年後半にNFLのロサンゼルス・ラムズ(Los Angeles Rams)、MLBのミネソタ・ツインズ(Minnesota Twins)と提携した後、エンゲージメント時間が伸びていることをスタグウェルが報告している。

スタグウェルによると、カンザスシティ・ロイヤルズ向けのサービスは開始されたばかりであり、まだデータはないという。また、ミネソタ・ツインズでは、試合中にファン1人あたり25分以上のエンゲージメント時間を記録し、メジャーリーグで平均18分とされるフィールドでのアクション時間を上回ったという。

アクション時間とは、リプレイ、リアクションショット、分析、そのほかの中断に費やされるダウンタイムを除いた、総プレイ時間を意味する。ラムズについてのデータは提供されておらず、スタグウェルはアプリをダウンロードした総ユーザー数についても明らかにしていない。

ライブイベント全般を視野に

プラットフォームがほかのリーグやスポーツに拡大するに伴い、クラウン・ビジョンARはアプリに没入体験およびインタラクティブな要素を追加していくという。

この機能は、ライブコンサートからほかのスポーツまで、スタグウェルが種類の異なったライブイベントにもAR体験を拡大するための手段となる。同社のクライアント向けAR開発部門であるアラウンドの創設者兼最高経営責任者(CEO)のジョシュ・ビーティー氏は、「このインテグレーションは将来のパートナーシップのために、AR体験をよりスケーラブルにする方法だ」と語る。

同氏は米DIGIDAYに次のように述べている。「新しいエンターテインメントだけでなく、新たなインテグレーションのための素晴らしい基盤を提供し始めている。我々が2023年にとくに力を入れているのは、スポーツのデータフィードに統合し、リアルタイムの情報を取得することだ。そのため、関連性が高く、自動化されており、簡単に拡張することができる」。

スポーツのエンゲージメント強化にARを使うことは、メタバースやWeb3の技術をテストするスタグウェルの戦略の一部となっている。

AR体験の不安点は?

ほかのエージェンシーは、メタバースキャンパス、リクルートスペース、コラボレーションスペースを立ち上げ、小売アプリやそのほかのクライアントのアクティベーションをテストしている。

フィッツコ(Fitzco)の戦略担当責任者であるデビッド・マタシア氏は、人々は対面での体験を再評価しつつあるが、補完的なAR体験を構築するには微妙なバランスが必要だと考えている。

「このような環境でのAR体験は、我々が切望しているもの(ライブ、対面、共有体験)から我々を孤立させたり、遠ざけてしまう可能性があるという不安点がある。そのため、ARをイベント全体のなかで付加的なものにし、その瞬間を限定することが必要になる」と同氏は話す。

熱心なファンの取り込みへ

現在、アラウンドのARコンテンツは若いオーディエンスや試合会場にいるカジュアルなファンの関心を集めているという。次の目標は熱心なスポーツファンを引き込むことであり、彼らは統計やリアルタイムのフィードを重視している。

選手の打撃に合わせて異なるエフェクトを表示したり、ホームランの後にほかのエフェクトを表示したり、リアルタイムに統合する機能も用意されているという。なお、ビーティー氏は、ユーザーベースの具体的な内訳は明らかにしなかった。

「今年は熱心なファンを取り込みたい(中略)そして、彼らのニーズと経験を基にキュレーションされたチャネルを作る方法を考えたい。そのすべてをコンサートやほかのライブイベントへとつなげていける」とビーティー氏は語った。

[原文:Stagwell’s AR platform signs Kansas City Royals to boost engagement for fans at games

Antoinette Siu(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:島田涼平)

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