内なる祈りがとどくとき  ~ベローチェのコーヒーゼリーのゼリー部分がプリンになる

デイリーポータルZ

20年来のカフェ・ベローチェファンである。

先日、無意識にベローチェに対する祈りを内に秘めていたことに気づかされた。

それは「コーヒーゼリーのゼリー部分がプリンになったらいいのに」である。

望みに気づかないまま、祈りが希望を追い越し、なんと実現していた。

ベローチェで「ほろにがプリン」を食べてきました。

ベローチェのコーヒーゼリーの独自性

当たり前のものを当たり前に出す、奇をてらわないのがベローチェのメニューに対する基本姿勢だと思う。

そんななかでかつてからコーヒーゼリーだけは「ベローチェのコーヒーゼリー」としか言えない風貌をしており独特のきらめきをみせていた。

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私の好物といってもいいです

特徴的な足のついた平たいグラス。ゼリーが流し固められた状態で、カウンターの冷蔵ケースでスタンバイしている。

オーダーすると、その場でソフトクリームを上にのせて提供してくれる仕組みだ。

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そう、こんな具合にね!

上の写真、コーヒーカップと見比べていただければわかるとおり、どーんと迫力がある。

カップやコーンに盛られるよりもソフトクリームが大きく感じられてうれしい。

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ゼリーは苦みがしっかりして甘くない。かためでブリンとした堀りごこち。ソフトクリームが甘さを担当するから、全体的にはさっぱりしている

コーヒーゼリーというのは、好きだという態度を意識的にとらないとなかなか食べる機会のないものだと思う。

ベローチェのコーヒーゼリーのおかげで、私の人生は「コーヒーゼリーをわりと食べる」側に寄った。

解放されるゼリー

さて、ベローチェではこれまでに何度も、コーヒーゼリーのゼリーの部分を別のぷるぷる系スイーツにした期間限定メニューを発売してきた。

たとえばこんな感じ。

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2018年秋のフェアではパンナコッタになった
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あまりの白さに「いいのか」とやや怯えたおぼえがある

さらに昨年、2022年の夏はなんと青いラムネのゼリーやマンゴーゼリーにもなっている。

あのコーヒーゼリーのゼリー部分が解放され自由であることに、ファンとしては大きな興奮をおぼえたものだ。

内にともる「プリンだったらな」の灯

しかし、私の興味関心のベースはコーヒーゼリーである。限定とはいえ他のメニューにはゆらがない心の強さがあった。

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一択の気持ちや強しコーヒーゼリー

そんななか、先日なんとなくベローチェのグランドメニューをネットで見ていると(私には「なんとなくベローチェのグランドメニューをネットで見る」時間がふつうにあります)、スクロールの指がびくと止まったのだ。

スイーツの欄に「ほろにがプリン Espresso Pudding」とある。

あのコーヒーゼリーのゼリーの部分がプリンになったメニューのようだ。

見て、あっ! と思った。

自らの中に祈りがあったことに気づかされたのだ。

灯った火の小ささがゆえに自覚しきれていなかった私の願い、それは「ベローチェのコーヒーゼリーのゼリーの部分が、プリンだったらなあ」であった。

振りかえればパンナコッタも、ラムネゼリーも、マンゴーゼリーも、望まない祈りが他人事として叶うような印象だった。

プリンは違う、これこそがいま気づかされた私の、私自身の祈りだ!

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そうとわかって駆け付けるベローチェ。雨であった
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地下の店、待ち構えるソフトクリーム
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カスタードプリンではない、エスプレッソプリンとは

どうやらこの「ほろにがプリン」は2021年に限定メニューとして登場、限定期間を延長するほどの人気だったようだ。

コロナ禍で外出を控えていたあいだにこんなことが起こっていたとは。うっかりしていた。今回はその好評を受けての再販売だという。

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気づかぬ祈りが届いた。マーケティングの話をしてるんじゃない、霊性を感じているのだわたしは

「ほろにがプリン Espresso Pudding」とあるとおり、プリン部分はいわゆる普通のカスタードプリンではないようだ。

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じゃあ、Espresso Puddingってなんだ

食べてみる。ゼリーのぶるぶる感も、カスタードプリンのたまご感も、どっちも感じられず、ちょっと不思議な食感だ。

とろっとしてゆるい口当たりに、クリーミーなコーヒー味が続く。

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あまくてちょっと苦い。プリン……というよりもどちらかというとパンナコッタに近い雰囲気か

カラメル部分は無く、エスプレッソの苦みが、あらかじめカラメルを内包しているように感じさせてくれる。

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奥行きの無い1色だから、見た目よりも味のほうがおいしいと思った

コーヒーゼリーに比べるとプリン部分も甘いため、パフェ要素というか、スイーツらしい華やかさがある。

ああ……おいしいな……。

祈りの先の景色は凪いでいる。おだやかな中に確かな充実があった。

心を落ちつけ、サンドイッチの棚にまだちゃんと苺ジャムサンドとピーナッツサンド(各150円)があるのを確かめて店を出た。

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