ゲーム内広告 はゲーマーたちに受け入れられているか?:「若い視聴者に対して価値交換を作り出すことが広告主にとっての本当の課題」

DIGIDAY

ゲーム内広告は波に乗って成長している。プレミアム・ゲームに関連して広告を出す機会は不足しており、一部の広告主はそれに難色を示しているものの、コムスコア(Comscore)の新しいデータによれば、今まで以上に多くのゲーマーがゲームとともに表示される広告を消費する準備ができていることが示されている。

これまでマーケターは「平均的なゲーマーはブランドが広告の形で関与することに反発するのでは」という懸念から、ゲーム業界への参入を躊躇してきた。しかしこれは誤解である。今日のゲーミングの視聴者はメディアに精通しており、ゲーム内でのリアルブランドの存在がますます快適になっている。無料プレイのゲームが一般的になるにつれ、ゲーマーは広告への注目と無料のゲームコンテンツという価値交換をますます受け入れている。

メディア測定および分析会社のコムスコアの2023年ゲーミング市場レポートでは、ゲーム内広告およびライブストリームされたゲーミング・コンテンツに隣接する広告に対する態度について、調査が行われた。データは、2022年11月に18歳から65歳の米国のゲーマー4000人以上を対象にしたもの。レポートの内容について、主要なポイントを以下でいくつか紹介する。

モバイルゲーマーは広告を受け入れやすい

モバイルゲーマーは、PCやコンソールのゲーマーに比べて広告に対して受け入れやすい傾向があると、本調査で分かった。これは単純にモバイルゲーマーがより頻繁に広告にさらされているからだ。モバイルゲームは、ほかのハードウェア・プラットフォームのゲームよりも、無料でプレイできることが多く、その分収益化されている。実際、2023年には広告がないモバイルゲームを見ると驚くゲーマーが多いだろう。

また、モバイルゲーミング広告はほかのプラットフォームの広告よりもユーザーにとって見返りがある可能性が高く、ゲーマーには好まれる(その詳細は以下で述べる)。

それでも、本調査が示したデータはモバイルに限らずすべてのプラットフォームの広告主にとって励みになるものだ。多数のゲーマーは、広告に対して肯定的または中立的な意見を持っており、その数字は具体的にはコンソールゲーマーで69%、PCゲーマーで65%、モバイルゲーマーで74%となる。そして、専門家のなかにはPCとコンソールゲーマーが広告の存在に慣れるにつれて、これらの数値がさらに広告に有利になると確信している人もいる。

「モバイルゲームの広告は必ずしも新しいものではなく、かなり確立されているものだと思う。人々はモバイルゲームの広告を見慣れている」と、パブリシス(Publicis)のゲーミング戦略・イノベーション担当シニアバイスプレジデントであるサマンサ・リム氏は語った。「だからこそ、ほかのデバイスにも広告が登場することで、その受け入れ度が徐々に高まることを期待している」。

若い世代はTVCMより短い広告までしか受け入れられない

本調査ではライブストリーム・コンテンツ中、1時間あたり6〜10分ぶんの広告が多くのゲーマーが受け入れられる最大限だとわかった。これは、従来のテレビの1時間あたりの平均15分のコマーシャルよりも少ない。

世代別に分解すると、若いゲーマーほどこのことを強く感じていることが明らかになった。Z世代のゲーマーの43%が、この分量がライブストリーム・コンテンツで適切な広告の量だと考えている。これは、ミレニアル世代の39%や、X世代の37%よりも多い。

Z世代がライブストリーム・コンテンツ内の広告を比較的嫌いなのは、リニアテレビという広告だらけのチャンネルをますます敬遠するようになった彼らのメディア消費の結果である。「YouTubeで育った世代であり、YouTubeにはスキップ可能な広告がある。テレビ番組やそのほかで広告が多すぎる必要はないと考えている」とリム氏は語った。「だから、若い視聴者に対して価値交換を作り出すことが広告主にとっての本当の課題となるだろう」。

リワード広告をもっと見たいゲーマーたち

しかし、ゲーム内での報酬がもらえる広告(リワード広告)となると、ゲーマーがブランドへの関与に慎重であるという従来の考え方は全く通用しない。この分野では逆にゲーマーは報酬に非常に熱心で、リワード広告を利用するためにわざわざゲームにログインする。正確には、コムスコアの報告書によれば、55%のゲーマーが1日にリワード広告をもっと見たいと考えている。

たとえば、スクーティ(Scuti)がゲーム内広告と引き換えに現実世界とゲーム内の報酬に使えるポイントを提供する製品を導入したところ、顧客が広告を視聴するためだけにログインし、ゲーム自体は全くプレイしないことが判明した。「ユーザーたちはスクーティを起動して報酬を得ているが、プレイするつもりはない」と同社のCEOであるニコラス・ロンガノ氏は言った。「ポイントを得るためにゲームに戻ってくるだけだ」。

スクーティのリワード広告オファーに対する関与は、非エンデミック(ゲーム分野以外の)ブランドからの注目を集めている。同社は最近、NBAラボ(NBA Labs)と提携し、ゲーム内マーケットプレイスでNBAブランドのバーチャル・コレクター商品を販売することを発表した。「スクーティを通じて製品を購入することが、実際にゲームプレイ体験を助ける」とロンガノ氏は述べている。

現実のブランドがゲーム内に存在することを求める

本調査では、ゲーマーの55%がプロダクトプレイスメントがゲーム体験をよりリアルにすると考えていることが分かった。現実のブランドの存在は、ロブロックス(Roblox)のような大規模マルチプレイヤーゲームやデス・ストランディング(Death Stranding)のような物語性のあるゲームで当たり前になっている。

仮想世界のなかで実在のブランドを見る方が、ゲーム「フォールアウト(Fallout)」のなかで登場したコカコーラを模した「ヌカ・コーラ(Nuka-Cola)」のような架空ブランドよりも好ましいとゲーマーが考えるのは理にかなっている。ヌカ・コーラは確かにフォールアウトのファンにとって愛される文化的象徴であるが、それは同時にベセスダ(Bethesda)のゲーム開発者が逃したチャンスでもある。

もしフォールアウトが今日リリースされるなら、ゲーム内の多くの自動販売機は単なるプロットのためのポイントではなく、広告在庫として見られるかもしれない。そして、ゲーマーは世紀末の荒廃した世界でコカ・コーラを飲んでいるかもしれない。コムスコアのようなデータがさらに出てくるにつれ、ゲームの世界に自然に溶け込む実在のブランドが増えることが予想される。

[原文:In graphic detail: Gamers are warming up to in-game ads

Alexander Lee(翻訳:塚本 紺、編集:島田涼平)

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