FIFA ワールドカップ でWeb3のテストに取り組むマーケターたち:「まずは試し、この機会を十二分に活かそう」

DIGIDAY

今回のFIFAワールドカップ期間中、100万人超のサッカーファンがカタールを訪れると予想されるなか、ブランドとテック企業勢は中東の遙か彼方、メタバースの多様な場において、見事ゴールを決めたいと考えている。

11月第三週から約1カ月にわたって開催される今大会は、前回、2018年のロシア大会時にはさほど出回っていなかった言葉、「Web3」が世界で広く使われるようになって以来、初めてのワールドカップでもある。リニアTVや従来型ソーシャルメディアが衰退しつつあるなか、スポンサー勢は公式と非公式の別を問わず、NFTやバーチャル世界、ARツールをはじめとする最新技術を介して、この世界的熱狂を利用したいと考えている。

コラボレーションの種類は、トーナメント参加チームの顔ぶれと同じく、多種多様だ。たとえば、アディダス(Adidas)が今大会用に制作した広告には、NFTのボアードエイプヨットクラブ(Bored Ape Yacht Club:BAYC)のキャラクターが、リオネル・メッシ氏とカリム・ベンゼマ氏という、サッカー界を代表するスター選手と共に登場している。一方、VISAや暗号資産取引所クリプト・ドットコム(Crypto.com)、スイスの時計メーカーであるウブロ(Hublot)といったブランドは、FIFAワールドカップカタール2022用マーケティング戦略の一環として、新たなプラットフォームで実験を行ない、サッカーファンがデジタルアートを作成したり、バーチャルスタジアムを探索したりできる仕掛けを試していく。

ワールドカップはテクノロジーのテストの場

サッカーワールドカップは実際、ほかのスポーツよりも、新テクノロジーの試用に相応しい場といえるかもしれない。カンター(Kantar)が世界の主要31市場で2万9500人のファンに行なったアンケート調査によれば、サッカーファンは世界の平均値に比べて、奇抜な経験を求め、インターネット上で友人を作り、最新技術を購入する傾向が高いという。彼らはまた、一般に収入が高く、年齢層が若干低く、新しい物好きを自認し、ストリーミングTVや動画を利用する傾向も高い、という結果が出ている。

この1カ月にわたる世界的イベントの中、こうした多様な異種融合は、多くのブランドが依然としてサッカーの試合自体よりも目立つべく、新技術の活用に積極的であることを示す証でもある。ガートナー(Gartner)のマーケティングアナリスト、クリス・ロス氏は「複数の要因とTwitter(主要イベントにおいて、広告およびオーガニックコンテンツ用にしばしば利用されていた)をはじめとするソーシャルプラットフォームの激変が重なったことで、マーケター勢が通常のチャネル以外を試したいとの思いをなおいっそう強くしたのでは」と指摘する。

「Twitterの一件で、ほかのチャネルをいくつか試したいという欲求が、マーケターのなかに芽生えている可能性は高い」とロス氏は話す。「まずは試し、この機会を十二分に活かそう、という狙いだろうが、失敗のリスクに対する保険はかけ、両賭けもすると思われる」。

従来とは異なるマーケティングの機会

一時的な動画や広告で人々へのリーチを試みる代わりに、バーチャルでも現実世界でもファンが交流できる、新たな手段の創出を望むテックプラットフォームもある。地球に似せたバーチャルワールドプラットフォーム、Upland(アップランド)は、FIFAと提携してNFTコレクションを創り、世界中でのデジタルおよび生の観戦パーティを組織し、独占ハイライト動画を配信する。UplandとFIFAはさらに、カタールのルサイル・スタジアムのレプリカも制作しており、そこにブランドを冠した複数のビレッジ、ショールーム、ショップを配していく。

Uplandの共同創業者/共同CEOダーク・ルース氏によれば、Uplandがめざすのは、従来のソーシャルメディアフィードのような、動画やテキストのたんなるスクロールに留まらず、サッカーファンに思わず「話したくなるコンテンツ」を提供することだという。そこには、試合はもちろん、彼らが購入できるデジタルアイテム、そしてバーチャル世界のさまざまな部分の探索も含まれる。「話題にしたいコンテンツを人々が求めている場で提供することこそ、ソーシャルネットワークの未来だ」と、ルース氏は話す。

一方、Z世代にフォーカスするスポーツコミュニティプラットフォーム、Stadium Live(スタジアム・ライブ)は、NFTやメタバースを創造する代わりに、試合中にファンが生チャットできるセカンドスクリーン的な場をめざしている。最近まで、同アプリ(15万人の月間アクティブユーザーが付いている)はほかのスポーツにフォーカスしていた。しかしこのほど、同社はサッカーフランス代表でも活躍したブレーズ・マテュイディ氏から資金提供を受け、マテュイディ氏、ヨアン・キャバイェ氏(元サッカーフランス代表)、ミラレム・ピャニッチ氏(サッカーボスニア・ヘルツェゴビナ代表)と提携。動画を制作し、アバターを作り、彼らフランス人およびボスニア人選手をベースにしたピクセル化トレードマークアイテムを無料提供していく。

「ブランド勢は各々のファンベースが以前ほど、いわゆる従来型のマーケティングになびいてくれないことに、気づきはじめている」と、Stadium Liveのマーケティングマネージャー、マシュー・ビロドー氏は指摘する。「今大会は、フォートナイト(Fortnite)が人気を博して以来、初めてのワールドカップになる。そうしたブランドの多くは、スポーツファンが音楽ファンになれることに、スポーツファンがアートのファンに、ファッションのファンに、そしてとくにゲーミングのファンになれることに、気づきはじめている――スポーツとゲーミングというこの両バーティカルは実際、連携度が極めて高い」。

AR業界は新たな顧客体験を提供

ゲーミング企業勢もまた、ワールドカップに参加する方法を編み出している。たとえば、ロブロックス(Roblox)はこのほど、FIFAと複数年にわたるパートナー契約を交わした。ナイキ(Nike)はカーサッカーゲーム「ロケット・リーグ(Rocket League)」と提携しており、アクティビジョン(Activision)はブラジルのネイマール氏、フランスのポール・ポグバ氏、アルゼンチンのリオネル・メッシ氏と手を組み、人気FPSゲーム「コール・オブ・デューティ(Call of Duty)」内に、彼らスター選手に似せたプレーヤーを登場させていく。

ARも同じく、今大会で存在感を発揮するだろう。11月第三水曜、スナップ(Snap Inc.)は、Snapchatユーザーがワールドカップ中に利用できる一連のAR機能を発表した。多くの代表チームに対応する新たなグローバルARレンズに加え、同社は今回、新たな「ライブガーメントトランスファー(仮想試着)」技術をアディダスとの共同で初導入する。ユーザーがそれぞれの体型に基づき、代表チームのユニフォームをバーチャルに試着できる、という技術だ。今大会のパートナーはほかに、ユーザーに選手やチーム、試合のデータをオンタイムで把握させるほか、さまざまな視覚および聴覚ARレンズを利用可能にするピーコック(Peacock)や、シボレー(Chevrolet)、サムスン(Samsung)などがある(Snapchatはさらに、中東のユーザーだけに向けた、新たなインタラクティブARサッカーゲームも開発した)。

加えて、スナップにとっては、ARを三大フォーカスの一つにするという大幅な再編を9月に発表して以来、今ワールドカップは主要イベントで自身を売り込める最初の機会でもある。

「ワールドカップとオリンピックは世界的二大イベントだ」と、スナップの米バーティカル部門トップ、クレイトン・ピーターズ氏は話す。さらに、「したがって、我々としては、全グローバルコミュニティをそれら新プロダクトに誘い入れ、フィードバックを手にし、それらがどう機能するのか、即時に理解させてもらえる。1つや2つの主要市場、という話ではない。32カ国のチームがしのぎを削り、それを数十億個の目が注視する、真にグローバルな場でそれができる、ということだ」と続けた。

[原文:Marketers bring Web3 to the FIFA World Cup with augmented reality, NFTs and virtual worlds

Marty Swant(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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