イーロン・マスクがOpenAIを辞めた本当の理由

GIZMODO

イーロン・マスクが「OpenAI危ない! 開発半年中止すべき」と署名を搔き集めているのを見て、「あれ? 自分で立ち上げた研究所じゃないの?」と首をかしげている人も多いと思います。

マスク氏辞任の真相

確かに2015年にOpenAIが旗揚げした当初は、イーロン・マスクもLinkedIn共同創業者リード・ホフマン、PayPal共同創業者ピーター・ティールら投資家グループで計10億ドルの初期投資を約束した時期もあったし、研究所がRedditの掲示板の投稿をAIにフォードしていた辺りには共同会長でした。

しかし、Semaforが匿名の情報筋8名から得た情報によると、2018年にイーロンは「このままではGoogle(グーグル)に完全に負ける」と焦りだし、「おーし、ここは俺様が研究所を乗っ取って陣頭指揮を執ってやる!」と買収する気満々になったのだといいます。

ところが共同創業者のサム・アルトマンCEO、グレッグ・ブロックマンCTO両名を含めた経営陣がこれに強く反発。

確執が表面化してOpenAI取締役を2018年2月20日に辞めてしまったというのが事の真相らしいのですね。

いちおう建前上は「利益相反」が辞任の理由になっていますし、イーロンはテスラでAIを開発しているためOpenAIとは競合関係。

現にテスラ自動運転プログラムAI開発責任者にOpenAIからAndrej Karpathy氏を引き抜いた経緯もあるため、まったくのデタラメというわけでもないのですが、辞任のあいさつでそれを辞める理由として挙げるイーロンの説明に納得した人はOpenAIの部内には皆無だったといいます。

投資も打ち切り

2018年2月20日付けOpenAI公式ブログには「辞めてからも投資とアドバイスは続ける」と書かれていますし、米Gizmodoでもその発表を真に受けてあたかも蜜月が続いているかのように紹介し続けてきましたが、実は約束していた投資(イーロンだけで10億ドル)も10分の1の1億ドル払っただけで打ち切ってしまったみたいですよ。

AIをスパコンでトレーニングするには途方もないお金がかかります。

折しも同年秋にはGoogleが“Transformer”言語モデルなる化け物を発表。AIはエンドレスに学習するフェーズに入ります。

OpenAIの逆襲

「エンドレスにデータをフィードしなければレースに完全に遅れをとってしまう」―そう考えたOpenAIは翌2019年3月11日に非営利の母体とは別に営利法人を設立して資金調達力を上げます。Microsoft(マイクロソフト)から最初の10億ドルの投資が舞い込んだのはその半年後のことでした。

こうして水面下で息をとめてスパコンを共同開発してAIにデータをフィードしまくって昨年11月、ChatGPTで水上にザッブーンと姿を現し世界が熱狂。Googleとの形勢逆転というわけです。

これを見たイーロン・マスクは「激昂」(情報筋証言)し、TwitterのデータがOpenAIに読み込まれないよう12月3日のうちにブロック

2月に入ると「OpenAIとは名ばかりで全然オープンソースじゃない。Microsoftに牛耳られて利益至上主義になっている」と皮肉を言い、3月には「自分が1億ドル寄付した非営利団体が、時価総額300億ドルの営利法人になるなんてね」と批判し、「人類最強ツールのAIが企業に独占されていると知って驚くエルモ」の絵をツイートしたり対決色を強めています。

まあ、内情を知ってしまうと、資金援助を止めて、企業に泣きつかなきゃいけない状況をつくったのはイーロン・マスク自身だったというわけです。

OpenAI CEOの言い分

ずっと沈黙を守ってきたOpenAIのサム・アルトマンCEO側もこれは黙っていられないと思ったんでしょう。

30日にはカーラ・スウィッシャー記者のポッドキャストに出演し、

ツイートに書かれたことの大部分は事実無根。イーロンもそれはわかって言ってるんだと思う。

ジャーク(嫌な奴)だが、人類の未来を本気で気にしてストレスを感じているんだろう。

AGI(汎用人工知能)への思い入れも強い(これはOpenAIもかなり強いけど…)。

などなど、「ChatGPTとAI開発戦争」をテーマにしゃべりまくりました。

あんまり多くを語らないタイプのベンチャーキャピタリストであるだけに相当頭に来てるんだろうなあ…と感じます。

営利目的、営利目的と叩かれていますが、アルトマンCEO自身は1株も持たないなど、けじめはつけている様子。

GPT-4の言語モデルとトレーニング用データが非公開になって、そのことを批判する人たちもいますが、これについてOpenAI側は「競争激化」と「安全性確保」のための措置と釈明しています。

世界中がOpenAIの話題一色になるなか、イーロン・マスクはDeepMindの元AI研究員とChatGPTの対抗馬を開発する話を進めていると報じられています。

こうなると競合関係は明白。イーロン・マスクの双子を産んだNeuralinkのShivon Zilis事業部長もとうとうOpenAI取締役を辞めてしまいました(え? そっちも兼務していたの⁉ と今さらながらビックリですけどね)。

タイトルとURLをコピーしました