美容注射治療 への関心が高まるにつれ、高額サービスへの支払いソリューションが急速に進展中

DIGIDAY

特に若い世代を中心に、美容注射による施術が増えているが、業界は引き続き最大の課題に直面している。それはすなわち「費用」だ。

現実に目を向けてみよう。美容医療サービスは値段が高い。例を挙げると、美容医療を提供するウォールストリートダーマトロジー(Wall Street Dermatology)のウェブサイトには、ボトックス治療は1カ所および1回の施術セッションにつき500ドル(約6万8000円)から600ドル(約8万1500円)の費用がかかると記載されている。仮に施術計画で、2カ所を合計3回のセッションで治療する必要があるとなれば、施術コース全体で3000ドル(約40万8000円)から3600ドル(約48万8000円)かかることになる。一方、フィラー(注入治療)については、同クリニックでは最低予算は1100ドル(約14万9000円)からとなっている。頬の輪郭を整えるような場合、1000ドル(約13万6000円)から4000ドル(約54万円)かかることもある。こうした目玉が飛び出るような価格に対処するため、4月24日、ペイシェントファイ(PatientFi)は、そのような美容医療を患者が金銭的に利用できるようにすることを目的とした、美容医療提供者向けの新しいサブスクリプションサービス、プライヴィ(Privi)をローンチした。

若い患者に向けた新たな医療費支払い手段

ペイシェントファイは、「自己負担」の医療費に対する患者の支払いソリューションだ。医療機関と提携し、ペイシェントファイは保険適用外の処置や治療に対する支払いのための資金調達手段を患者に提供している。一方でプライヴィは、金融商品にくらべて、より柔軟で基本的な違いがあるサブスクリプション商品だと宣伝されている。これは要するに、美容医療提供者に対して、患者に合わせたメンバーシップを提供するための既成概念にとらわれないソリューションを与えるものだ。個々の美容医療の施術者は、独自の月額のメンバーシップを導入していることが多く、患者はサービスの割引価格や、多くの場合は月会費無料などの特典が受けられる。美容医療提供者の例としては、メディカルスパのアルケミー43(Alchemy43)、ニューヨークのスキンスプレンディド(SkinSplendid)、ニュージャージーのベアエステティック(Bare Aesthetic)などがある。また、メディカルスパのエバーボディ(Ever/Body)のようなそのほか多くの提供者は、アファーム(Affirm)などのBNPL(Buy Now Pay Later、後払い決済)のパートナーに依存している。

メンバーシップの消化可能な毎月の支払い、BNPLサービス、そして今回のプライヴィは、若い患者にとって特に魅力的な選択肢となるかもしれない。ボトックスなどの神経調節剤がシワの予防薬として位置づけられ、「予防」の話題が盛んになるなかで、若いうちから始めることが重要なメッセージとなっている。また、ボトックスを製造するアラガン(Allergan)といったメーカーは、まさにこの市場の獲得を目指してきた。2019年、アラガンは20代や30代の顧客を主なターゲットとした「自分のルックを持つ(Own Your Look)」というボトックスキャンペーンを発表している。

美容サービス向けのサブスクリプション商品

ペイシェントファイの共同創業者でCEOのトッド・ワッツ氏は、同社の顧客は通常、脂肪吸引や豊胸手術といった「高額の」施術にこのプラットフォームを利用していると述べた。これらの施術は数千ドル以上の費用がかかり、支払いが数年に及ぶこともある。ワッツ氏によると、ペイシェントファイの顧客の大半は、美容整形にこのプラットフォームを利用している。プライヴィのような形の独立した決済商品の根拠は、よりダイナミックな治療計画があり、安価とはいっても費用のかかる美容サービス向けのサブスクリプション商品を作ることだった。信用調査が必要で金利がかかるペイシェントファイとは異なり、プライヴィは患者の承認率が100%で、患者は利用するために金利や追加料金を支払う必要はない。その代わり、美容医療提供者はプライヴィソフトウェアにアクセスするために、一律399ドル(約5万4300円)の月額料金を支払う。ただし、患者の支払いが遅れた場合は、患者の居住州によって15ドル(約2040円)から30ドル(約4080円)の追加料金が発生する。患者は、美容医療提供者がオファーしているプライヴィに登録するか、あるいはプライヴィを通じて提供者を探す。その後、美容医療提供者とともに治療計画を立て、初期費用全額を支払うのではなく、最初の月額のサブスクリプションを支払うことからスタートする。月々の費用は治療計画によって異なる。

「プライヴィは、患者向け融資事業の自然な延長上にある。というのも、これらの医師たちにそのようなサブスクリプションサービスの資金を前もって提供しているからだ」とワッツ氏は言う。「ほとんどの美容医療提供者は独立しており、このようなサブスクリプション型のロイヤルティプログラムは持っていない。提供者の立場からすると、患者に治療を施しても、患者がフォローアップやタッチアップの予約をしてくれないというリスクを回避することができる。あるいは患者がより安価な提供者の広告を見て、次はそちらに行ってしまうというリスクも減る」。

治療の主要な障壁は費用

神経調節剤やフィラーなどの選択的なサービスにまつわる費用は、美容注射剤のカテゴリーでは以前から話題にされていた障壁だった。2020年、Glossyは価格設定モデルの変化について報じたが、美容医療提供者は価格を固定にすることで、美容医療を支配する単位制の価格設定を覆そうとしていた。一方、ボトックスの競合製品であるジュヴォー(Juveau)といった新しい製品は、市場シェアを吸い上げるために、より安価であることを売り込もうとしてきた。ジュヴォーは、ボトックスより20~25%安いと宣伝している。一方、ダキシファイ(Daxxify)は、通常3カ月のところ約6カ月と競合他社よりも長持ちするため、美容クリニックに行く回数が減り、最終的にコストが下がると宣伝している。

米国形成外科学会が2022年に会員である外科医1850人を対象に行った調査によると、回答者の76%が、パンデミック前の水準と比較して需要が増加していると回答している。美容に特化した診療所の4分の1近くが、ビジネスが2倍になったと報告し、6%が前年の2倍以上の症例数という劇的な増加を報告した。需要が増えただけでなく、消費意欲のある患者の数も増えている。回答者の59%は、患者が「やや多く」支出することを望んでいると指摘し、17%は、パンデミック前と比較して現在の処置に対する患者の支出が大幅に増加していると回答した。

手頃な価格を提供し、コンプライアンスの課題解決を期待

ペイシェントファイには3000以上の美容医療提供者を抱えるネットワークがあり、2017年の会社設立以来、5万人以上が利用している。ローンチ時に、美容医療提供者は既存のペイシェントファイSaaSライセンスにプライヴィを追加できるようになる。ペイシェントファイは、引き続き同社のネットワークに向けてプライヴィの宣伝に力を入れ、患者を引き寄せることができるように、美容医療提供者とともに会員制形式のプランを作成する予定だ。価格以外にも、ボトックスを含む神経調節剤注射のような特定のサービスに対するコンプライアンスが提供者にとって課題であるとワッツ氏は指摘し、ペイシェントファイが解決できることを期待していると述べた。特に神経調節剤は、3~4カ月ごとに行うことが推奨されている。だがほとんどの患者は、定期的な治療頻度を守っていない。

ボツリヌストキシン注射に対するミレニアル世代の関心についての2021年の調査記事によると、ボツリヌストキシン注射を受けたことがある回答者の約43%が定期的に注射を受け、39%が時々定期的に注射を受け、残りの17%は定期的に注射を受けていない。そして、定期的に注射を受けている患者全体では、33%が年に3回以上、50%が年に2回、17%が年に1回の割合となっている。

「患者が選択的治療を進んで受けない理由の第1位は費用だ」とワッツ氏は述べている。「そのため費用が、これらの製品の成長を妨げる主要な障壁となっている。メーカーはつねに臨床結果の向上と進歩に取り組んでいるが、製品をもっと手頃な価格にすることには誰も力を入れてこなかった」。

[原文:Growing interest in cosmetic injectables spurs new payment options for costly services]

EMMA SANDLER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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