【読めッッ】漫画『バキ外伝 ガイアとシコルスキー』が常軌を逸した面白さ! 漢と漢の四畳半同棲スピンオフに笑いが一向に止まらんッッ

ロケットニュース24

人気漫画のスピンオフ作品は難しい。近年だと『1日外出録ハンチョウ』(『カイジ』スピンオフ)という偉大な成功例もあるにはあるが、基本的には原作の魅力を大きく下回るのが常である。いや……常であると思っていた。そう、この漫画に出会うまでは。

2023年3月8日に第1巻が刊行された『バキ外伝 ガイアとシコルスキー ~ときどきノムラ 二人だけど三人暮らし~』は、『刃牙』シリーズのスピンオフ最新作にして、現時点での最高傑作であると強く断言しよう。久しぶりに漫画で声を出して笑ったぞ。必読ッッ!

・『刃牙』スピンオフ最新作

本作について簡単にご説明すると、主人公は自衛隊の最高戦力の一人 “超軍人” ガイアと、ロシアの最凶死刑囚シコルスキーの2名だ。原作第2部で完全敗北を喫したシコルスキーが、リベンジのためガイアの住むアパートを訪ねた結果、どういうワケか同棲生活が始まるというストーリーである。何でやねん。

この時点でだいぶ面白いが、私(あひるねこ)が最初に傑作を予感したのは第1話の後半。ガイアとのじゃんけんに負けたシコルスキーが食器を洗うシーンだった。水道の水がスプーンの凹面に当たって跳ね返った時の、シコルスキーの顔ッッ! 苦悶に歪んだ表情(かお)ッッ!!!!

この前後のシーンだけで、コミックス630円分(税抜)の元は十二分に取れると約束しよう。ギャグ漫画としての圧倒的なまでの実力が我々読者に開示された瞬間であるが、私が思うに、本作の注目ポイントは大きく分けて以下の3つだ。


・ポイント①:絵がマジで刃牙

とにかくこの作品は、作画のクオリティがハンパなく高い。要は原作の絵や雰囲気にやたらと忠実なのだ。特に白目になった時の表情なんて「これ、板垣(恵介)先生が書いてね?」と本気で思ってしまうレベルで、過去に類を見ないほど “板垣絵” が見事に再現されている。

絵柄は「最凶死刑囚編」というよりは第4部『刃牙道』~第5部『バキ道』の序盤あたりに近く、それがまた今の『刃牙』っぽくてリアルだ。第1話冒頭で描かれるガイアの横顔のコマ割り(微妙に異なる表情が連続して続く)に関しても、マジで『刃牙』を理解(わか)っているとしか言いようがない。

中でも特に『刃牙』っぽさを極めているなと思ったのが、濡れたシコルスキーのTシャツをガイアが肺活量だけで乾かすシーンである。この描写に関しては、普通に原作でもありそうというか、仮にあったとしても何の違和感もないのでぜひご覧いただきたい。笑うぞ。


・ポイント②:シコルスキーのポテンシャル

個人的に「最凶死刑囚編」の中でもっとも微妙な存在だったのが、実はシコルスキーだ。高さ100メートルの刑務所(ミサイル発射口)から指先の力だけで脱出したのはたしかにエグイけど、後半の体たらくぶりがなぁ……と常々思っていただけに、本作におけるギャグキャラとしての覚醒には私も驚きを隠せなかった。

特に第5話の冒頭。掃除機をかけるガイアに「邪魔」と言われたシコルスキーが、持ち前のピンチ力を活かして壁に退避するシーンなどは出色である。ただのゴキブリやないか。

その後、巻き取りボタンによってムチのようにしなった掃除機コードの襲撃を受け、思わずロシア語で「痛ッ」と叫ぶシコルスキー。こ、こいつ……! こんな面白い闘技者(ヤツ)だったのか……!!

とはいえ、指先の力だけで壁をよじ登ったり、天井の突起につかまったりするのはまあ原作通りっちゃ原作通りである。正直それだけではオモシロとして弱いのではないか? そう感じないこともなかった。だがしかしッッ。

そこに四畳半での同棲生活というトンデモ設定が加わった途端、笑いが一気に花開くのだ。これは予想外だった。壁を登るという行為を大ボケに昇華できるシコルスキーの隠れたポテンシャルを見出した時点で、この漫画はすでに勝利(か)っていると言っていいだろう。

・ポイント③:もう原作に戻れない

さて、ここまで読んだ皆さんならもう何となく察しているとは思うが、本作のシコルスキーはけっこういいヤツである。大家さんの長話に付き合ったり、母直伝のボルシチの味でドヤったり、ノムラをガイアの影武者と勘違いして解放を約束したりと、どうにも憎めないキャラなのだ。死刑囚なのに。

これは先述した『1日外出録ハンチョウ』にも言えることなのだが、優れたスピンオフ作品のキャラクターは、時に原作を超えてしまうことがある。

もはやカイジに負けて失脚する大槻班長の姿を我々読者が見たくないのと同じように、刃牙にボコられ、オリバにもボコられ、ジャックにまでボコられ、そして最後にガイアから敗北をプレゼントされるシコルスキーの哀れな姿は、できれば二度と見たくない。だって可哀想なんだもの。

そう、我々ファンにとって聖なる経典に等しい『刃牙』の原作にもう戻れないくらい、本作のシコルスキーは魅力的な漢(おとこ)になってしまっているのだ。あのシコルスキーが、だ。こんな漫画の登場を一体誰が予想できただろうか?

──以上。いろいろ書いてきたが、私が言いたいことは至ってシンプル。笑いたくば読め!!! 『刃牙』を愛する者ならば、紙・デジタルを問わず本作の一読は必然ッッ。一度読めばガイアはもちろん、シコルスキーという漢のことがかつてないほど好きになるだろう。必読である。

参考リンク:秋田書店(第1話無料公開中)
執筆:あひるねこ
Photo:RocketNews24.
ⓒ板垣恵介・林たかあき(秋田書店)2023

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