ほうれん草やチンゲンサイなどの葉物野菜に豊富に含まれている硝酸塩という化学物質に、筋肉に作用して筋力をブーストする作用があるという研究結果が報告されました。
15N‐labeled dietary nitrate supplementation increases human skeletal muscle nitrate concentration and improves muscle torque production – Kadach – 2023 – Acta Physiologica – Wiley Online Library
https://doi.org/10.1111/apha.13924
Supercharge Your Workouts: Active Molecule of Beetroot Juice Significantly Increases Muscle Force During Exercise
https://scitechdaily.com/supercharge-your-workouts-active-molecule-of-beetroot-juice-significantly-increases-muscle-force-during-exercise/
硝酸塩は葉物野菜に多く含まれている栄養素であり、1個の窒素原子と3個の酸素原子で構成されています。以前から、食事から摂取した硝酸塩が筋力をブーストする可能性があることは示唆されていましたが、実際にどのようなメカニズムで硝酸塩が作用するのかはわからない点が多く残っていました。
そこでイギリスのエクセター大学とアメリカ国立衛生研究所の研究チームは、10人の健康な被験者を募集して、摂取した硝酸塩が唾液や血液、尿、筋肉にどのように分布するのかを調べる実験を行いました。
実験では集めた被験者に対して、安定同位体(トレーサー)で目印を付けた硝酸塩入りのドリンクか、偽薬として同量の塩化カリウムを含んだドリンクを飲ませ、摂取前から摂取の3時間後にかけて唾液・血液・尿・筋肉のサンプルを定期的に採取しました。また、硝酸塩を摂取してから1時間後、被験者は5分間エクササイズマシンを使用して、太ももにある大腿(だいたい)四頭筋を最大強度で60回収縮させるトレーニングを行ったとのこと。研究チームはこの筋肉トレーニングのパフォーマンスについても詳細なデータを収集しています。
サンプルを分析した結果、経口摂取した硝酸塩は1時間以内に唾液・血液・尿・筋肉で増加した一方、トレーニング後は筋肉に含まれる硝酸塩が有意に減少していたことがわかりました。また、硝酸塩を摂取したグループでは偽薬を摂取したグループと比較して、筋力が7%増加していることも報告されています。つまり、体内の硝酸塩が豊富な場合、筋肉で硝酸塩を消費することで筋力を向上している可能性が示されたというわけです。
論文の共著者でありエクセター大学の応用生理学教授であるAndy Jones氏は、「この最新の研究では、食事に含まれる硝酸塩が人間の筋肉パフォーマンスを向上させるメカニズムについて、これまでで最も優れた証拠を得ることができました」と述べています。
国立衛生研究所の科学者であるBarbora Piknova博士は、硝酸塩が筋力を向上させる理由について、血流量を増やす働きを持つ一酸化窒素の発生源として作用するからではないかと主張。「これらの研究結果は、運動分野だけでなく、一酸化窒素欠乏症に関連する神経筋疾患や代謝性疾患を標的とする分野など、他の医療分野にも大きな意味を持つ可能性があります」とコメントしました。
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